中学生にして約3年半にも及ぶNY武者修行を敢行。その経験を糧に2019年にEP「Born Again」をリリース。トレンドを意識しながらも独自のスキルとオリジナリティが輝くそのドラスティックな作品は一躍シーンの話題を攫うも、突如彼らはその活動を中止……そこから約2年の月日を経て、いよいよBleecker Chromがリブート。

XinとKENYA、それぞれソロとしても活動する彼らは活動再開するやいなや過去に多くの人気アーティストを輩出してきたブレイクの登竜門「Spotify RADAR:Early Noise2022」に選出。まさにその期待値は折り紙付きのBleecker Chromは今後どこに向かうのか……そして、その指針となるであろう待望のファーストアルバム「SEVEN THIRTY ONE」について、本作のメインプロデューサー:VLOTを交えインタビュー。まずは、驚くべき彼らのルーツから。

――音楽との出会いについて教えてください。

KENYA「僕は幼少期から親に邦楽を中心にいろいろな音楽を聴かせてもらっていて、それこそEXILEさんやm-floさんなどを聴いているうちに自然とアーティストになりたいなと思って。そもそも人前に出ることが好きだったんですよ。それで5歳の時にスクールに通い始めて」

――5歳でスクールは早いですね。

KENYA「今でこそそう思いますが、当時は自分の意志で始め、とにかく歌手になりたかったんですよね」

Xin「僕は小一の頃に友達の影響でダンスを始めて、レッスンでかかっていたのがニュージャックスウィングや90年代のヒップホップで。そこからヒップホップを聴き始め、小六ぐらいでエイサップ・ロッキーに出会って……」

――小六でエイサップ!?

Xin「ダンススクールの校長先生が“アイツはヤバいからチェックしておいた方がいい”って教えてくれたんですよ。あとは、その校長先生が洋服屋もやっていて、その影響でファッションにも興味を持ち始めて。その後、中学生になってLDHとavexのオーディションに合格し、ニューヨークに行って。最初はダンサーとして行ったんですけど、向こうでいろいろ影響を受けてラップを始めるようになったんです」

――それは誰かの影響が?

Xin「トラヴィス(スコット)やカニエ(ウェスト)、あとはチャンス・ザ・ラッパーとか」

――ニューヨークではそういったアーティストのライヴを見ていた?

Xin「生で見ましたね」

KENYA「当時、トラヴィスはまだリアーナの前座で、それこそアルバム『Rodeo』の頃。チャンス・ザ・ラッパーもミックステープ『Coloring Book』の時で、一番いい時期に見ることができました」

――スゴい経験してますね。ちなみに、今まで見たライヴで最もヤバかったのは?

Xin「リアーナですね。あとは、ジャスティン・ビーバーとか」

KENYA「確かにリアーナは痺れたね。バークレイズ・センターで見たんですけど、総合演出感がとにかくヤバくて。衣装もバンドもダンスも全てがスゴかった。あとはチャンス・ザ・ラッパー、クリス・ブラウン、トレイ・ソングス、オマリオン……そういった体験をさせてもらったことは本当に感謝しかないです」

――最近はどんなアーティストを聴いていますか?

KENYA「僕は特にカナダのR&Bに影響を受けていて、ザ・ウィークエンドや(ドレイクのレーベル)OVO Soundのマジッド・ジョーダン。あとは、パーティーネクストドア。アメリカだとブライソン・ティラーとかですね。最近はちょっとオルタナティブなR&Bをよく聴いていて、ジーン・ドーソンとか四つ打ちやエレクトロを加味しているようなサウンドも好きですし、ソウルファンクとかルーツ系もよく聴きます」

Xin「僕は基本的にヒップホップなんですけど、最近一番聴いているのはケイシー。今年はアルバムを2枚出すらしいんですけど、もうそのシングルがスゴいし、ケイシーはヤバいっす。歌モノもラップも高いクオリティでやっていて」

――趣味趣向は全然違うんですね。プロデューサーのVLOTさんは、そうした2人の個性をまとめている感じですか?

VLOT「僕は僕でまた好みが違うので、3人の個性をいかにプラスにしていくか考えてますけど、制作に関しては基本的に僕がビートを作って、ストックを2人にひたすら聴かせていくところからスタートしてます」

――Bleecker Chromとしては2019年にEP「Born Again」をリリースした後、約2年間のモラトリアムがありますが、その期間を経て何か変化はありました?

KENYA「まずは僕とXin君が成年になったことが大きいですし、日常生活でもコロナがあり、日本のシーンはヒップホップが急拡大したり、2年間でいろいろな変化があったと思います。当然僕らも成長しましたが、それ以上に市場が大きくなった気がする」

VLOT「この2年間で確実にヒップホップを聴く人が増えたし、アーティストもかなり増えたよね」

Xin「今は配信で誰でも曲を出せるようになった分、アーティストの数が増えたと思うし、それと同時にリスナーが増えたのかなって思いますね」

――特に最近は高校生がめちゃくちゃヒップホップを聴いている印象がありますが。

VLOT「ヒップホップというカテゴリの捉え方が変わったというか、大衆化してきたというか。ラッパーのリアルなストーリーから自分たちが経験したことのない世界が垣間見える、高校生はそういった部分にも惹かれるのかなと思います。ただ、純粋にシーンが拡大することはスゴく嬉しいです」

――そうした状況の中で3月にファーストアルバム「SEVEN THIRTY ONE」をリリースしましたが手応えは?

Xin「やれることはやりきったって感じですね。内容的にはかなり振り幅の広い作品になって、そこはとても納得してます。ただ、もっとやれると思うし、でもやって良かったとも思うし。純粋に今も毎日聴いていて、ずっと聴けるアルバムになったと思います」

KENYA「成長した実感はスゴくあります。『Born Again』の時はまだスキルもないし、メッセージやサウンドも自分たちの特色が手探り状態で。さらには締切に追われていて、たくさんのオプションの中からじっくり選ぶことができなかったんですよね。でも、そこでメロディや振り幅とかBleecker Chromの強みがわかって基盤ができた。そうしたことを経て、今回は本当に伝えたいメッセージが明確にできたし、結果的に僕らのよいポートフォリオになったかなと思います」

――その伝えたかったメッセージとは?

KENYA「1曲1曲で違うんですけど、今にフォーカスした思いだったり、後戻りできない自分たちの決意表明的なものだったり。『Born Again』の次の作品というよりは、これがスタートという意識で、それが提示できたかなと」

――リリックも多面的というか、いろいろな意味が込められ、考えさせられる部分が多々ありました。

KENYA「曲によってストレートに伝えるものもあれば、比喩的にしたり、作り手としては様々な部分でリスナーに委ねたい思いはありました。ただ、その中で確実にあるのが若い人たちにメッセージを送りたかったということ。あとは、自分たちの引き出しをもっと増やしたくて、前作の反応をふまえていろいろ考えました」

――プロデューサーとしては、2人にどう接していましたか?

VLOT「僕は基本的にリリックには口を出さず、あくまで音、全体像に関して意見していたんですけど、リリックは海外とも比肩しない、攻めたものになったと思いますし、2人のクオリティが出ていると思います。一方でサウンドの面では自分がDJをする時にかけたいものというか、ライヴ感のあるものを結構作りましたね」

Xin「最近またライヴをやらせてもらっているんですけど、以前とは違うなという感触はかなりあります」

KENYA「お客さんの反応も明らかに以前とは違っていて、一緒に歌ったり、盛り上がってくれたり。ただ、これはあくまできっかけで、詰められるところはより詰めていきたいし、この作品ができたからこそ気づけたことも多く、また次に行けるという自信が生まれました」

――今作で印象に残っている曲は?

Xin「“Flexing On Your B”は、僕がもともとソロで作っていて、それをKENYAに聴かせたら反応がめちゃくちゃ良くて。それは純粋に嬉しかったし、KENYAがラップを乗せたら、さらにライヴ映えするようになったし、スゴく印象に残ってますけど、個人的には“Four Seasons”が一番好きです」

――それはなぜ?

Xin「純粋にサウンド感が一番好きなので」

KENYA「“Four Seasons”は僕がソロで作っていた曲で、Xin君が普段作るサウンドとはちょっと違うので、それがもしかしたら良かったのかもしれないですね」

――お互い曲を褒め合う、スゴくいい関係性ですね。

KENYA「本当にそう思います(笑)。初めて会った時、僕はファッションやカルチャーが大好きなXin君にスゴく感銘を受けて、それからしばらくはずっと彼のマネをしていて。その後、僕も心からカルチャーが好きになって、今は自分のスタイルを見つけましたけど、全てのきっかけはXin君なんです」

Xin「それは僕も同じで、歌を頑張ろうと思ったきっかけはKENYAですね」

――2人はどんな関係と言えるでしょう?

KENYA「家族に近いですかね。そもそも僕らは自分で望んで能動的に出会ったわけじゃなく、あくまでプロジェクトで偶然一緒になった、ある意味運命的。そして、出会ってからは誰よりも多くの時間を過ごし、いろいろなものを一緒に見てきた中で、当然お互いの汚い部分も見てきたし、逆に人の愛を感じたのも同じタイミングだし、本当に家族に近いというか、何も言わなくてもお互い理解し合えるようになったというか。もはや存在としては空気に近いですね」

――VLOTさんから見て2人はどうですか?

VLOT「性格も全然違いますし、友達もそれぞれいて、普段ずっと一緒にいるわけではないんですけど、お互い深い部分で繋がっているし、信頼関係もあって。さらに昔に比べてよりお互い尊重するようになって、今はスゴく良い距離感だと思いますね」

続きは#2で……今後の日本のシーン、さらには彼らの未来について、要注目!

Bleecker Chrom(ブリーカー・クローム)

アルバム「SEVEN THIRTY ONE」(bpm tokyo)

https://lnk.to/BC_STOPR

8月11日(木・祝)には渋谷WWWにて待望のワンマンライヴ開催!チケットは発売中!