今春、Flying Bから世界に向けソロデビューを果たしたラッパーのXin。さらには、藤田織也としてかねてからソロとしても活躍するシンガーのKENYA。2人の若き才能が交錯し、新たな個性が煌めくBleecker Chrom。

前回のインタビューでは、彼らのルーツから最新作「SEVEN THIRTY ONE」の話を伺ったが、今回は引き続きプロデューサーのVLOTとともに日本のシーン、そして今後について。拡大する日本のヒップホップシーンの中で、今後の主翼を担う彼らは果たして何を思うのか。さらには、彼らが目指す高みとは……。

――Xinさん、KENYAさんともにソロでも活動していますが、それはBleecker Chromにどんな影響を与えていますか?

Xin「棲み分けはあまりしてないですね。音楽をやることは共通しているのでどっちもフラットにやりたい。両方ともやりたいことだし、やりたいようにやるだけ。何よりBleecker Chromでしかできないこともあるし、ソロだからできることもあるので。ただ、どちらも好きなようにやらせてもらっている、その環境には感謝してます」

KENYA「僕にとってBleecker Chromは、ニューヨークに行ったからこそ生まれた姿で、逆にソロは幼い頃から目指している姿で、到達点が違う感じ。伝えたい音楽性やメッセージもそれぞれ違いますし。ソロはメジャー志向が強く、歌手として成り遂げたいこと……それこそR&Bを日本で広げたいとか、海外で挑戦してみたい気持ち、それにラップではないからメロディやリリックを大事にしたい。でも、Bleecker Chromはより実験的なことができると思っていて。例えば海外さながらの曲を作ったり、リリックもより過激なことが言えたり。自分にとってなくなくてはならないもので、ソロではできないことがBleecker Chromではできるというか、ソロでメジャーに行きたいからこそBleecker Chromが本当に大事だと思ってます」

――今後の日本のヒップホップシーンはどうなると思いますか?

KENYA「より大きくなっていくと思います」

Xin「それは僕も同じですね」

――その中で2人は何をしていきたいですか?

Xin「自分は英語ができるという強みがあるので、海外のアーティストとコラボしたり、積極的に世界を意識してやっていきたい。“言葉の壁”みたいなことをよく言われますけど、僕はそこを崩していきたいし、それができたらより面白いことになるかなって」

――2人とも海外志向が強い。日本と世界では何が違うと思いますか?

KENYA「市場規模はもちろん、ジャンルに対しての意識、捉え方も違いますよね。あとは、例えばアメリカは音楽が生活に馴染んでる。学校や道端でも流れていて、それもエリアによって違う。昔から各地で続いてきたものが進化し、そのエリアの人々の生き方やライフスタイルに合った音楽が生まれている。そうした部分は全然違うのかなって思います」

Xin「日本でもヒップホップが大きくなり、それは良いことだと思うし、もっともっと大きくなってほしいんですけど、世界と比べた時に、失われてしまった部分もあるのかなって。それは誰でもアーティストになれるから薄まってしまった部分でもあったり。そして、そういうところからヒップホップが壊れていくようであればすごく残念だと思うんですけど、逆にいえば誰にでもチャンスがあるっていうことでもあるので、僕はスゴく楽しみです」

KENYA「Xin君がそうなのかはわからないですけど、僕がBleecker Chromで大事にしているのは“基礎”。僕らはニューヨークにルーツがあって、そこで見たカニエやトラヴィスとかは流行をうまく捉えながらもみんな基礎も疎かにせず、しっかり持っている。そして音楽を芸術として昇華している。僕らの音楽も、例えばブーンバップの人からしたら薄っぺらい、ヒップホップじゃないと言われるかもしれないけど、僕らが見てきたヒップホップはこういう形で、こういう形があるからこそブーンバップだってキレイに見える。そして、ブーンバップがあるからこそ僕らの音楽性が美しく見えると思っていて。だから、今後もヒップホップには新しいトレンドが次々に生まれてくると思うんですけど、全てリスペクトし、取り入れつつも基礎を大事にしたい。まずはグッドミュージックであることを大切にしていきたいし、トレンドを理解しながらタイムレスな音楽を作っていきたいです」

――プロデューサーの視点から見て、Bleecker Chromの一番の魅力、個性はどこにあると思いますか?

VLOT「メロディかなと思います。Bleecker Chromも含め、僕がプロデュースする場合、毎回リリックを見ながら録っているわけじゃないんですよ。僕は音しか聴いてなくて、そういう意味ではやはりメロディは気になるし、具体的に言えるわけじゃないんだけど、彼らからはグッとくることが多いんですよね」

Xin「スタジオに入るとまずはビートを聴かせてもらうんですけど、僕はその時、最初に出てくるメロディを大事にしていて。多分、それが一番フレッシュで気持ちいいところを突いていると思うので。僕にとっては一発目でどれだけフィットするか重要で」

VLOT「その感覚はわかる気がする。もしもそこで迷ったり、いまいちだったら次にいくよね。あまりそこに囚われすぎないようにすること、最初のフィーリングをキャッチすることが大事だから」

Xin「そうですね。それはめちゃくちゃ大事にしてます」

――アルバムのリリースに続き、アニメ「新テニスの王子様 U-17 WORLD CUP」のオープニングテーマを手掛けることになったんですよね。

Xin「今回はYOSHIKI EZAKIとの共作だったんですけど、意外とサラッとできたかな。トラックは結構トラップで、ポップス寄りではあるけど、僕らがいつも作っているものと似ている感じでめちゃくちゃ良いです」

KENYA「今回、僕は作品はあまり見ずに、内容はフワッと知っているのでコンセプトだけ聞いて、まずは自分たちの生活の中でリンクするものを探しました。例えば、今回の舞台が“世界トーナメント”なんですけど、僕らもアメリカに行っていたし、オーディション=競争というのも幼い頃から経験していたことだし、上に上がっていく感覚や自分を信じて世界に向かうマインドは近いと思ったので、それを表現しました。(このアニメは)既存の熱狂的ファンの方が大勢いると思うので変に無駄な知識を入れず、自分たちとの接点で攻めてみたんですが、どんな反応があるのかとても楽しみです」

――最後に3人の今後の展望を教えてください。

VLOT4月にXinがAK-69さんの日本武道館ライヴに出させてもらったのを見て、近い将来Bleecker Chromとして成功を収め、武道館に立つところを見てみたいですよね。最近は多くのヒップホップアーティストが立っているし、不可能ではない、むしろ可能だと思っているので。プロデューサーとしては、僕が大きな影響を受けたアメリカのプロデューサーのように、誰かに影響を与える存在になりたいですね」

――アメリカはプロデューサーの立ち位置が日本とは全然違いますからね。もはや確立している。

VLOT「ブランド化してますよね。日本もそうなればと思ってます」

Xin「僕はBleecker Chromとして、VLOTさんが言われたように日本武道館とか、大きなステージに立ちたいですね。一度立ったことで、もう一度立ちたいと思ったし」

KENYA「日本武道館は夢というか、目標、プロセスでもありますね」

Xin「あとは、海外ツアーも組めたら。アメリカとかUK、カナダ、アジアも。いろいろなところに行きたい。それはBleecker Chromとしても、ソロとしても」

KENYA「僕はBleecker Chromは海外と近いところにあると思っていて、アジアもいいんですが、やっぱり最も影響を受けたアメリカに挑戦して、最悪、壁にぶち当たってみるのもいいかなと思ってます。それがやりたいことのひとつでもあるので。あとは、もっと自分たちのサウンドを追求すること。全国区のヒットも欲しいし、海外から面白い、ニュータイプだねって思われる音楽を作りたいし、グッドミュージックを作り続け、とにかく多くの人に知ってもらう、まずはそこからです」

Bleecker Chrom(ブリーカー・クローム)

アルバム「SEVEN THIRTY ONE」(bpm tokyo)

https://lnk.to/BC_STOPR

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