オランダ・アムステルダムで立ち上げられ、東京とヨーロッパの最先端音楽を繋げてきたレーベルSound of Vastが今年で10周年を迎え、その記念イベント「Wicked」が6月22日渋谷WOMBで盛大に開催された。ハウスミュージックやテクノシーンで重要な存在となり、国内外のアーティストをサポートしてきたSound of Vast。10周年記念イベントはレーベルの歴史と功績を祝う特別な夜となった。
TEXT:Seishin 原田篤
【豪華なラインナップ】
ここの記念イベントには、Sound of Vastと関わりの深いアーティストが多数出演。レーベルの設立者であるRed Pig FlowerをはじめShinichro Yokota、Monkey Timers、The People ln Fog(DJ Sodeyamaの別名義)、Kenji Takimi。海外からはJapanTour中のDJ、プロデューサーJustin Van Der Volgenなどが参加し、多様な音楽スタイルを披露。各アーティストがプロフェショナルであり持ち味・魅力を活かしたDJセットは観客を終始魅了した。
The People In Fogは序盤、機材を綿密にチェックしながらスタンダードなソウルナンバーから口火をきった。プレイから40分頃にフロアの頃合いをみてピアノトーンのハウスナンバー、最後にはBPMを上げてバトンを渡した。同時間帯にスタートしたKenji TakimiのDJブースは芸術空間で至高の150分であった。ブース間に隔たりが無く、直に芸術的なプレイをあらゆる角度から体感した。外国籍の客層が6割近くWOMB LOUNGEの空間に彩り豊かな、優美な旅路を感じる音の流れに、歓喜の宴が繰り広げられた。
【特別な演出】
イベント会場は特別な夜のために、VJ Manamiのビジュアルエフェクトで彩られ、視覚的にも楽しめる演出が用意されていた。微細な赤と青の混合、言葉のメッセージ、最後には泡の絵となり物語を綴っていた。WOMBのライティングとの相性が計算され、音楽とともに視覚的な楽しみも提供され、来場者は非日常的な体験を味わった。
【Red Pig Flowerのインターナショナルセット】
Red Pig Flowerのセットはソウルのリズムを感じさせ、ホットでセクシーなものだった。DJブースの周囲はエネルギーで満ち溢れており、背後からの歓声に呼応して選曲する魂をゆさぶる彼女のナンバーの虜に。終盤の深い闇の中で音を紡ぐRed Pig Flowerの姿が美しかった。Red Pig Flowerのソウルをもう一曲聴きたかったが、Monkey Timersがデッキに触れた。パーティとは非常に難しくもあり、感覚と感情の交差が大切な場面であり醍醐味であると思う。ラストのMonkey Timersは凄みを感じさせるクロージングであった。ハウスミュージックでありながらロックンロールの片鱗もときおり感じる場面があった。観客は音楽が持つ存在意義を信じ切る意思を汲み取り、フロアは未来を描き、ダンスのリズムを離さなかった。
【レーベルの歴史を振り返る】
イベント中は、Sound of Vastの10年間の歩みを様々な仲間と音とパーティを通じて体現。設立当初から現在に至るまでのレーベルの成長と変遷、関わったオーガナイザー、アーティストやクリエイター、ダンスフロアへの深い想いや大切にしている事に包まれ観客はその情熱に思いを馳せた。なによりオーディエンス、仲間、先輩方、ひとりひとりに真摯な対応をするKnockの姿に心動かされた。私は幸運な事にSound of Vast創成期に撮影をさせて頂き、今なお動き続ける姿に感銘を受けた。
【今後の展望】
Sound of Vastは、10周年という大きな節目を迎えたことで、最先端の東京で今後も新たなアーティストの発掘、ブッキングなど革新的な音楽イベントの開催が心待ちにされている。東京/アムステルダムを起点に次の音楽シーンを牽引する存在として、ますます注目を集めることだろう。この日はレーベルの過去と未来を繋ぐ重要な夜となり、音楽と共に成長し続ける彼らのこれからの活動にも大いに期待が寄せられる。