interview&text:編集部/photo:©tomato/underworld
至高のデザイン集団Tomato結成以来のメンバーであるカール・ハイドとリック・スミス。
彼らはTomatoとともに仕事を行うと同時に、アンダーワールドのアートワークのほとんどを彼らに託している。
そこには信頼という言葉だけではない、もっと密で深い関係性があるはずだ。
現在渋谷パルコミュージアムほかにて開催中のTomatoの25周年記念展『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION“O”』に先駆け行われた今回のインタビューでは、2人とTomatoの関係性についてはもちろん、カールが“とてもすごいプロジェクト”と語る、本展における試みについても話を訊くことができた。
——アンダーワールドにとって、Tomatoとはどんな存在なのでしょうか? 単純にカールとリックが所属しているデザイン集団、アンダーワールドのアートワークをお願いしているというだけの関係性ではないと思いますが。
もちろん深くて密な関係だよね。でも、ここ数年でこれまで以上に密接な関係になったと思う。
しかも、僕らはこの3月にとてもすごいプロジェクトを東京でやろうとしているところなんだ(笑)
——それは……Tomatoのアニヴァーサリー・エキシビジョンのことでは?
そうさ。あれはエキシビジョンであり、ライヴ・コンサートであり、メディアを通じて放送されるものであって……トータルなイベントになるよ。
今の時点では“何かが起きつつある”としか言えないな。でも、それはきっと起こる(笑)
——先ほど、今アンダーワールドとTomatoは過去にないくらい近い関係にあると言ってましたが、なぜそうなったのでしょうか?
歳月を経てTomatoという集団からは何人かのメンバーが離脱し、それ以外にも様々な変化があったんだけど、今そこに残った連中、一緒に仕事をしている面々はとても近しい間柄なんだ。
僕たちはいつだってお互いを敬い、“我々は一緒だ”という哲学を常に守ってきたのさ。
それぞれの仕事と作品を敬愛しつつ、なおかつそこから双方がインスピレーションを受け取ってきたんだよ。
ただ、それと同時にときにはお互い少しの間離れてみるのも必要なんじゃないかとも思ってる。
そうすることで、逆に改めて自分たちの間にあるスペシャルな関係をエンジョイすることができると思うからね。
こういう話をすると妙に思われるかもしれないけど……今のアンダーワールド、今のTomatoはどちらも“新たなエネルギーの源”みたいなものを発見したんじゃないかと思っていてね……。
僕たちはこれからも一緒に数多くの作品を作っていきたいと思っているし、それを楽しんでいきたい。
そんな関係を誰かと結ぶことができることは、とても貴重で、非常に素晴らしいことだよね。
だから、僕らはこれからもっともっとその素晴らしい関係性を祝福していこう、そう思っているよ。
——あなたから見るTomatoの一番の魅力とは? また、彼らの存在はアンダーワールドのクリエイティブにどんな影響を与えていますか?
影響はね……、どう説明したらいいかな……。一番は、彼らの持つユニークな視点だね。
つまり、僕らがやっていることに対して彼らが抱いている独自のパースペクティヴってこと。
ヴィジュアル・アーティストが音楽に対してコメントしてくれるんだよ。
そうした意見を聞けるのはとても素晴らしいことだし、ヴィジュアル、アイディア双方の面で彼らは僕たちのやっていることにインプットを与えてくれる。
それから、純粋に彼らの作品や仕事を見せてもらう、その時点で僕らはすでにインスピレーションを受けているんだよね。
ただその一方で、ときには彼らが自分たちの作品に僕らアンダーワールドの音楽を使うケースもあるわけだけど……とにかく、創造性豊かな集団に所属するということは特別なエネルギーが宿るものなんだ。
しかも、そのエネルギーというのは毎朝目を覚ますと“今日もいい仕事をしたい!”と思わせてくれる、そういうものなのさ。
——競い合うわけではなく、Tomatoに自分たちのいい仕事を見せたい、そういう思いもやっぱりあるのでしょうか。
もちろんその通りさ! というのも、結局僕らはTomatoという集団の一部であり、ヴィジュアル・アートを作ることがあれば、僕はサイモンと一緒に絵画を描いたり、映画を作ったりもするからね。
ジョン・ワーウィッカーは今、僕の新しい本のために版を組んでいるところだし。
彼とはこれまでにも何冊か一緒に本を作ってきたんだ。
つまり、僕らはお互い受けてきた教育や経験を活かしながら一緒に仕事をすることがかなり多いわけさ。
というのも、僕が美術学校に通っていたころに感銘を受けたことのひとつに、自分とは違うトレーニングを受けたアーティストに僕の抱えていた問題を聞いてもらえた、アートの制作にまつわる問題を相談できた、というのがあってね。
問題を抱えて困っている当人以外は少なからず余裕があって、だからこそみんな解決法を提案してくれるものなんだよ。
例えば、陶芸家が画家に問題解決の糸口を聞くのは素晴らしいことだと思うし、それは画家が彫刻家に、映像作家がパフォーマンス・アーティストに聞いてもいいと思うんだ。
僕らがTomatoとして集まって集団を結成したとき、様々な修練を積んできた人間が集まる組織を自分がいかに欲していたのか、そこに改めて気付かされたわけだよ。
要するに、自分の抱えている問題とは直接関係のない“外部”の人間に相談ができる、そういう組織が必要だということだね。
——確かに第三者の意見は大事かもしれませんね。
そうなんだ。だからTomatoとは“水平思考の集まる場所”みたいなものなんだよ。
——最初に話にあがりましたが、この春渋谷で開催されるTomatoの25周年記念エキシビジョンに関して、その見所、魅力を教えてもらえますか。
正直な話、僕以外の連中が何をやろうとしているのか、僕もよく知らないんだよね(笑)
——でも、今回はアンダーワールドとTomatoのコラボもあるんですよね……。
ああ、同じスペースを共有するはずさ。同じ空間に作品を展示することになると思う。
僕自身はそこで最新の作品、初披露となるインスタレーションをクリエイトするつもりだし、そこではヴィジュアル・アートとアンダーワールドとして僕がやってきた仕事をリンクさせるつもりさ。
ある種、ストリートの詩人めいた作品というか、僕がアンダーワールドの音楽でやってきたストリートにインスパイアされた詩と、ヴィジュアル作品とを結び付けようと思ってるんだ。
様々な場所の街路を歩くことで僕が受けたインスピレーションと、アンダーワールドの音楽のために言葉を拾っていく僕の手法とが共存した、そんなインスタレーションになるはずだよ。
しかも、今回のためにリックが制作したサウンドも加わる予定さ。
だからこれは完全に初、まったく新しい経験になるはずだ。
それに、アンダーワールド自体も相当とんでもないことをやるつもりだよ。
ライヴ新時代へ……アンダーワールドのスペシャルライヴ&TOMATO25周年記念展レポ
INTERVIEW WITH TOMATO|サイモン・テイラー×ジョン・ワーウィックが語るデザインと音楽
アンダーワールドが語る6年ぶりの新作、それは終わりではなく始まり…
アンダーワールドも所属する最先端のデザイン集団TOMATOがこの春渋谷をジャック!
アンダーワールド緊急来日決定!彼らが行う一夜限りのスペシャルライヴとは…
EVENT INFORMATION
『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION“O”』
2016.3.12.SAT~4.3.SUN
【OPEN / CLOSE】10:00〜21:00
パルコミュージアム(PART 1・3F)、ギャラリーX(PART1・B1F)
その他、シネクイント(PART1・8F)、2.5D(PART1・6F)、
ポップアップショップ(PART1・B1F)など
一般500円、学生400円、小学生以下無料
アンダーワールド
カール・ハイドとリック・スミスが中心となり結成。ダレン・エマーソン加入後リリースしたファーストアルバム「Dubnobasswithmyheadman」でシーンに鮮烈なデビューを飾り、“Rez”、“Born Slippy”といった不朽の名曲を世に送り出すとともに、世界的なダンスアクトに。2000年にダレンが脱退し2人体制へ移行するもその実力は健在で、2012年にはロンドン五輪の開会式で音楽監督を担当。このたび約6年ぶりの最新作「Barbara Barbara, we face a shining future」をリリース。