2015年も様々なことがあった音楽シーン。
そこでは、才能あふれる新しいアーティストからベテランまで、数多くの名盤がリリースされた。
FLOORでは、例年通り編集部が独断と偏見で海外主要メディアを選択。
今年は『Billboard』『THE GARDIAN』『NME』『Pitch Fork』『ROLLING STONE』『TIME』が発表したランキングをもとに、2015年の音楽シーンの傾向を読み解いていきたいと思う。
2015年はケンドリック・ラマーと数多くの話題をさらったディプロが主役!?
ビルボード、ガーディアン、Pitchforkと3誌の年間チャートで1位。
他の主要メディアによる同様のチャートでも軒並み上位にランキングされたケンドリック・ラマー。
2016年2月に発表される第58回グラミー賞にも最多の11部門にノミネートされており、あとは何冠を獲るのか?という話題でもちきりだ。
第56回グラミー賞では7部門にノミネートされたに関わらず、無冠に終わり物議を醸すなど悲運な結果を味わっているだけに、2015年こそは彼の1年と言える機運となっている。
それに続くのは、ロックとダンスミュージックを美しく調和させたジェイミー・xx、革命的とまで言われたR&Bの新旗手ザ・ウィークエンド、センセーショナルなデビュー作で話題のコートニー・バーネット、ドリーミー&ガーリーなポップで新アイコンとなったグライムスらが多くのメディアで高評価を獲得している。
ジャンルレスに話題性、セールスなどを客観的に見ても、やはりケンドリック・ラマーが頭一つ抜きん出ているか。
その一方で、ビルボードのダンスチャートで1位を獲得し、ストリーミングサイト:Spotifyで54億再生された“Lean On”やジャック・Üでの諸作など多くの話題を提供したディプロも、2015年も最も輝いた音楽プロデューサーのひとりだったと言える。
効果的な豪華コラボレーションが彩りを添えた1年
2015年は、例年に劣らず豪華なコラボレーションによるヒットが多く目立った1年ではなかっただろうか。
例えば、1月にリリースされたリアーナ、ポール・マッカートニー、カニエ・ウエストの“Five Four Seconds”。
ジャンルも世代も超えたビッグアーティストによる奇跡の1曲は、アコギやオルガンといった温かみのあるサウンドが基調のフォーキーな楽曲で、そのプロダクションも斬新だった。
またビルボードで12週連続1位を記録したウィズ・カリファがニューカマーであるチャーリー・プースを抜擢した“See You Again”、
マーク・ロンソンとブルーノ・マーズの“Uptown Funk”、
ジャック・ユー(ディプロ&スクリレックス)とジャスティン・ビーバーによる“Where Are Ü Now”、
ジェイミー・xxとヤング・サグによる“I Know There’s Gonna Be(Good Time)”など、メジャーとインディ、ジャンル間を横断した効果的なコラボレーションが目立った。
ありがちなコラボレーション(レーベルメイトや同ジャンルによるものなど)とは違い、異種間での混合がヒットチャートを賑わせてくれ、1年間にわたって新鮮な驚きで楽しませてくれた。
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AFX、ディアンジェロにビョークまで
ベテラン勢がひしめく50位圏内
リストには各ランキングのトップ10までしか列していないが、50位圏内に目を向けると興味深いアーティスト、作品が多く存在した。
そのひとつの特徴は、久方ぶりとなるベテランたちの作品の数々である。
例えばニューオーダー(NME48位/ガーディアン22位)や12年ぶりとなった新作をリリースしたブラー(NME15位/SPIN37位)、まさか出るとは思っていなかったディアンジェロの14年ぶりのアルバム(Billboard8位)、ビョーク(ガーディアン5位/NME25位)などに加え、あのジャネット・ジャクソンも7年ぶりのアルバムをリリース(SPIN50位/ガーディアン37位)。
さらに各ランキングでは上位に入ることはなかったが、エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムスがAFX名義で、ケミカル・ブラザーズも5年ぶりにアルバムをリリースし、『SUMMER SONIC』でヘッドライナーを務めるなど往年の音楽ファンの心を荒ぶらせた。
またマドンナの新作『Rebel Heart』もリリースされ、そのリードトラック“Bitch I’m Madonna”では、ディプロがプロデュース。
ともあれ、ベテラン勢の新作ラッシュが光る稀有な1年であった。
その他にも大きなトピックが続々!そして2016年は!?
最新アルバム「25」が11月20日発売だったため、各ランキングでは目立たなかったが、10月22日に発表されたリードトラック“Hello”がわずか2カ月の間で、YouTubeで8億再生を記録したアデルが、年末に際立った存在感を見せつけている(Rolling Stoneのベストソング部門では6位)。
2016年の上半期は、アデルがどこまでこのアルバムからヒット曲を生むかに注目が集まる。
またアデル同様に年末にリリースしたビッグアーティストに、お騒がせ王子ジャスティン・ビーバーやワン・ダイレクションなどもおり、彼らがセールス的には2016年に大きな話題となるのは間違いない。
さらに2015年は、ドレイク、ミゲル等も高い評価を獲得したほか、当初はアイドル視されていたカーリー・レイ・ジェプセンのセカンド『E・MO・TION』もセールスはもちろん音楽的にも高い評価を獲得。
オッド・フューチャーに所属するバンド、ジ・インターネットやザ・ウィークエンドなどR&Bシーンには新しい風が吹きつつある。
またアンダーグラウンド方面からもワン・オートリックス・ポイント・ネヴァーの変態的なエレクトロニカが各誌で絶賛されたことも喜ばしいトピックとなった。