2015年もっとも輝いていたアーティストを、アンダーグラウンド/メジャーの区別なく幅広くピックアップしてきた「FLOOR ARTIST OF THE YEAR」。
ラストとなる今回は、残る4組のアーティストを一挙紹介!
なぜ彼らが選ばれたのか? その功績を振り返る……。
-BACK NUMBER-
FLOORが選ぶ2015年もっとも輝いたアーティスト10人
Part.1|Part.2
07|DJ SNAKE
ディプロとともにEDMを刷新する異端児は2015年も大活躍
ディプロとともに、2015年のダンスミュージック〜EDMシーンで印象に残ったアーティストと言えばDJスネイク。
Mad Decentに所属し、2013年にリリースしたリル・ジョン“Turn Down For What”を皮切りにヒット曲を量産している彼だが、メジャー・レイザーとの“Lean On”もさることながら、2014年リリースのディロン・フランシスとの“Get Low”、アルーナ・ジョージとの“You Know You Like It”の余波が2015年にまで及び、後者はビルボードのホットダンス・エレクトロニックソングスで4位を獲得(ちなみに同チャートの1位は“Lean On”)。
さらに、ビルボードではトップダンス・エレクトロニックアーティスト部門で3位。
DJ MagのTop 100 DJsでも2014年から33ランクアップの32位と破竹の勢いを見せていた。
着実に音楽シーンに根付きつつあったトワークを、彼とディプロが2015年に大成させたことは間違いないと言えるだろう。
正直なところ、今回彼を選出する際には、EDMシーンのアイコンとして長年活躍し続け、YouTubeやSpotifyでの再生回数でも上位にランクインしたデヴィッド・ゲッタ、そしてディサイプルズとの“How Deep Is Your Love”で脱EDMの兆しをみせたEDM界の寵児カルヴィン・ハリスの名も挙がったが、シーンの流れを総括して見た結果、やはりDJスネイクの功績が大きかったと判断したことを最後に付け加えておきたい。
08|FLOATING POINTS
アンダーグラウンド界を圧倒したのは才能溢れる孤高のサイエンティスト
EDM〜メジャー・シーンで活躍したアーティストがディプロだとすれば、アンダーグラウンド・シーンで最も存在感を示したのはフローティング・ポインツだと言えるかもしれない。
コアなダンスミュージックを専門とする世界的メディアMixmagとRAにおける2015年のベストディスクでは、彼が発表したアルバム「Elaenia」が3位と1位にランクイン。デビュー作品ながら高い評価を獲得し、メディアだけでなく各国のアーティストたちも絶賛した。
<参照>
世界のチャートから紐解く2015年の音楽事情
– Mixmag & Billboard編
– DJMAG & RA編
そもそも彼は、2000年代後半にシーンに登場するとすぐさま頭角を現し、2010年には名門Ninja Tuneからオーケストラ仕様のザ・フローティング・ポインツ・アンサンブル名義で作品をリリース。
それがジャイルス・ピーターソン主宰のWorldwide Awardsを受賞し一躍名を馳せることに。
また、DJ、プロデューサーとして活躍すると同時に、Eglo Recordsのオーナー、さらには神経科学の博士号を取得したサイエンティストでもあるという異様な経歴も話題に拍車をかけた。
そんな彼が満を持して発表したアルバムは、約5年もの歳月をかけて成熟させたものであり、そこにはディープハウス〜ジャズ〜ソウル、さらにはクラシックまで、様々な音楽を内包。
他のサウンドを圧倒するエレガントかつ壮大な仕上がりで、全世界の音楽ファンを魅了した。
2015年は彼然り、アンダーグラウンドなシーンにおいても若い才能が花開いた、そんな1年だったと言えるだろう。
09|Oneohtrix Point Never
世界に名だたる名監督をも虜にした奇才が見せたネクスト・レベル
リリースが11月ということもあり、惜しくも今回のランキングからは漏れてしまった感もあるが(とはいえPitch Forkでは11位!)、発売以来世界中のメディアがこぞって絶賛するワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)の新作「Garden of Delete」。
2010年リリースの「Returnal」、翌年の「Replica」、そして2013年名門Warpから発表したアルバム「R Plus Seven」、いずれも各メディアから喝采を浴び、年間ベストディスクに選ばれていただけに、もしもリリースが早ければ……という思いは拭えない。
とはいえ、彼の才能はやはり非凡すぎるほどに非凡で、それはメディアにとどまることなく世界的映画監督ソフィア・コッポラをも魅了し、映画「ブリングリング」では彼を音楽監督に抜擢。
その他にも、様々な有識者たちがOPNの才能を認めている。
そんな彼の新作に関して言えば、前作とはまた異なるロックやヘヴィメタルにも通じる狂おしい魅力に溢れ、“ブライアン・イーノの後継者”と呼ばれる彼にしては異様とも言える仕上がり。
それだけに、OPNのポテンシャルの高さがより一層際立ったとも言えるが、そんなエクスペリメンタルな音楽性もさることながら、今回はリリース前に公表した「ファンへの手紙」で新作の存在を明らかにし、何かと話題をさらったそのプロモーションもとても興味深かった。
マルチメディアなパフォーマーとしても名を馳せる彼だけに、音楽性のみならず様々な意味で今後も注目の1人である。
10|Black Coffee
南アフリカが誇る隻腕のカリスマ
その活躍がいよいよ認められた2015年
リアルなダンスミュージック・シーンを伝える専門誌Mixmagにおけるトップ10DJs of 2015において3位にランクイン。
さらには、ダンスミュージックの聖地イビサで毎年発表されているDJアワードでも今後注目のBREAKTHROUGH ASSOCIATION MIXCLOUDに選ばれたブラック・コーヒー。
南アフリカはダーバン出身のディープハウスDJである彼は、左手が不自由な隻腕であるにも関わらず類い稀な努力により唯一無二のビートを生み出すことに成功した逸材だ。
13歳のときにとある事件(事故)により左手の自由がなくなりながらも、2003年にRed Bull Music Academyの南アフリカ代表となって以来DJとしてワールドワイドに活躍する中で、2010年には右手のみで60時間にも渡るDJプレイを敢行(それはギネス記録にもなっている)。
さらにはプロデューサーとしても活躍し、2005年にはアルバム「Black Coffee」でSAMA(South African Music Awards)のベストダンスアルバム賞を、2011年には南アフリカで音楽賞を受賞するなど、高い評価を受けている。
母国南アフリカではすでにカリスマ的存在でもある彼だが、上記の通りいよいよ世界での認知を得た2015年。
決して隻腕のDJだからというわけではなく、あくまでその才能ありき。
ディープハウス・シーンにおいては、今後注目の存在であり、その動向に期待が高まるところ。
また、2015年はここ日本にも初来日を果たし、見事なプレイを披露。大きな話題をよんだ。