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与えることを喜びとし、商業主義と決別。そして、本来の自分を表現し、今を全力で生きる……10の原理のもと既存の社会から逸脱し、参加するものの精神を開拓する、世界でも例をみない音楽とアートの祭典『Burning Man』が、今年は8月28日から9月5日まで、アメリカ・ネバタ州の砂漠ブラックロック・デザートで開催される。

そこでは何もない砂漠にバーナーと呼ばれる参加者たちが集まり、1週間だけの幻の街「ブラックロック・シティ」を創り上げる。

毎回独自のテーマをもとにバーナーたちによる大小様々なアートが至るところに展開。
2016年のテーマは“Da Vinci’s Workshop”。直訳すると“ダヴィンチのワークショップ”となり、バーナーたちはダヴィンチにインスパイアされた様々な作品を披露してくれる予定となっている。

ここでは、その作品の中から海外メディアでもとりわけ注目を集める4つの作品について紹介しよう。

|Black Rock Lighthouse Service

期間中の夜の道しるべとなる巨大な灯台
その圧巻のラストも見逃せない

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このプロジェクトは、Max Poynton&Jonny Poynton親子が手掛けるもので、彼らは過去にも“The Bottlecap Gazebo”、“The Temple of Whollyness”、そして昨年は“The Totem of Confessions”を展開する生粋のバーナー。

そんな親子の新作は、全長60フィートにも及ぶ木製の灯台。今回はその明かりが、多くのバーナーたちの夜の道しるべとなる。

しかし、バーナー親子が単純な灯台を作るわけはなく、それは地面より突き出るクリスタルをイメージした、いわば灯台の複合体のようなものになるとのこと。
メインとなる60フィートの灯台のまわりに、40~50フィートの灯台が並び、それらを空中で吊り橋などで繋ぐ。いわば巨大なツリーハウスのようになり、バーナーたちはそこで遊ぶこともできるという。

そして、今作のハイライトとなるのはラスト。『Burning Man』では終演と同時に、全ての作品を無に帰すことが定められ、今作もまた最後には燃やされることになる。
巨大な木製の灯台が火に包まれ消滅していく様はきっと見る者全ての心に刻まれるはずだ。

|The Space Whale

砂漠に出現した美しく輝く巨大なクジラは、その美声でもバーナーを魅了!?

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砂漠の中で開催される『Burning Man』だけに、実質そこは海とはまったく無縁の世界。今回はそこに抗うかのような作品が登場する。

それは、Andy TibbettsとMatthew Schultzという2人のアーティストと、過去に“The Ship”(2011年)、“Pier 2 with La Llarona”(2012年)、“Embrace”(2014年)といった並々ならぬ作品を手掛けてきたThe Pier Groupによる共同作品。

“Whale”とのタイトル通り、クジラをモチーフとしたこのプロジェクトは総重量35,000ポンドもの鉄材を使用。組み上げられるは、母と子をイメージした2対のクジラとなるが(高さ50フィート、総重量5万ポンド以上)、その姿は宙にも浮いているように見え、なおかつまわりをガラスで装飾されているために美しい輝きを放っている。

ガラスと聞くと、もしものときの危険性を覚える人もいるかもしれないが、そこは全て強化ガラスの上に鉄でバックアップし増強している。が、当然ながら作品に登るのは禁止とのこと。

そして、この美しきクジラはなんと歌を歌うという。その歌声はいかに、期待が高まるところ。

|Catacomb of Veils

『Burning Man』の歴史上最大規模となる、桁外れの作品が登場

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巨大な作品が続くが、これもまたその規模は桁外れ。全長220フィート、総面積は17,000フィートにのぼる今作は、今年の『Burning Man』最大の作品であり、長きに渡る本祭の中でも過去最高の大きさとなる。

そんなプロジェクトのテーマは“内側と外側”。視点の持ち方により感じ方は異なる一方で同一的にもなりえる、そんなパラレル体験を促すことを実践しているという。

この発案者はサンフランシスコ在住の建築家/クリエイターDan Sullivan。彼は会場となるBlack Rock Cityに実在する地形をモチーフに、今回はピラミッド型のアートを展開。

ちなみに、その巨大さから運搬だけでトラクターを12台も擁し、そのうえで一番の難題である施行作業に入るのだが、そこでは3万フィートもの木材が使われるとか。
そして、建設自体も15日間分刻みのタイトなスケジュールになっているという。

「Black Rock Lighthouse Service」同様、汗と涙の結晶たる今作もまた最後には焼き払われてしまうわけだが、会期中のみ体感できるその一瞬の煌めきこそが『Burning Man』たる由縁であり、魅力なのだろう。

|The 747 Project

世界中の空を舞い、多くの人々を旅に導いた名機が“人生の旅”を演出

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この“747”とは、アメリカ・ボーイング社による大型旅客機:ボーイング747機の型番のこと。
それは“ジャンボジェット”の愛称で知られ、ここ日本をはじめ世界中で活躍した名機。その大きさはスクールバス5台分の幅に、アメリカンフットボールのフィールド半分の長さという巨大さを誇る機体が、今年『Burning Man』にデビューする。

その規模感もさることながら、制作に携わったスタッフの数も規格外で、ボランティアを含めるとその数なんと2000人にも及んだとのことだが、何より今作が注目されているのはそのコンセプトやプロセスにあると言われている。

今作の発起人:Big Imagination Foundation創始者Ken FeldmanとJonathan Teo、そしてそのチームスタッフによると、この機体が打ち出すメッセージとは“人生の旅”。
ボーイング747機が多くの人々を旅させてきたように、今作もアートを用いて人生の旅を演出するという。

Ken Feldmanは過去にも『Burning Man』に参加しているのだが、2009年のRobot Heartステージでこのアイディアが浮かんだという。

そして、それから約7年の月日をかけて進めてきた一大プロジェクトなのだが、実は今IndieGoGo上で寄付を集っているまっただ中。6月13日の時点では目標額に達成することができずにいるとか。

ちなみに、目標額である5万ドル集まれば機体の頭75フィート、10万ドル集まれば全機体を会場で披露することができる(この寄付のほとんどは運搬費になる)。

また、今後も寄付は継続され、来年の開催までに24万ドル集まれば次回もまた『Burning Man』にそびえ立つとか。ぜひとも全機体を会場で見たいところ。

EVENT INFORMATION

Burning Man

2016.08.28 SUN〜09.05 MON

Black Rock Desert (Nevada,USA)

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