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インターネット動画サイトの影響もあってか、いまや世界中でフェスティバルが大流行。
マイアミの『Ultra Music Festival』やベルギーの『Tomorrowland』などのAfter Movieが何千万回もの再生数があるなど、もはやそんじょそこらの映画やなんかよりもよっぽど影響力のあるものになっている。

そんな2013年は、本格的にフェス元年っていう感じだったので、今年はこれでもかってくらい行きました。

3月のマイアミでの『Ultra Music Festival』と6月の『Ultra KOREA』は、日本側のディレクターをやってるので仕事でもあるのですが、その他にも限定20万人のチケットが1秒で即完売になった『Tomorrowland』やオランダの『Sensation White』へも行った。

60年代のロックや90年代のヒップホップが台頭したように、いまはエレクトロダンスミュージックとシーンが世界中でかなり盛りあがっていて、ただのクラブ・ミュージックの枠を超えて、音楽、映像、花火、ステージデザイン、全てを包括した総合芸術の域にいってると思った。

残念なことに日本ではまだ派手目な音楽ジャンルって捉え方をされている場合が多いけど、今年の9月にやってくる『ULTRA JAPAN2014』を体験してもらえば、少しは見え方も変わってくるのではないかって思ってる。

さてさて、そんな昨年行った様々なイベントの中で特に印象強かったというか色々な意味で概念を変えさせられたのが、アメリカのネバダ州の砂漠で行われた『Burning Man』

このイベントは1986年にサンフランシスコのベイカー・ビーチでラリー・ハーベイという人物が恋人との別れにケジメをつけるために「MAN」という人形の像を燃やし、そこに居合わせたアーティスト達がこれはアートだ!と自発的にお互いのアート作品を持ち寄ったのが始まり。

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その後、年を追うごとに規模が拡大し1990年から現在のネバダ州のブラック・ロック・デザートへ会場を移し、いまでは6万人もの参加者を集めるまでになった。

この『Burning Man』ほど、参加した人とそうでない人との間での意識の違いを感じるイベントはないと思う。
世の中的には砂漠で開催されている大型フェスとかって認識だったりするのではないでしょうか?
まぁ砂漠に6万人もの人が集まっているだけでそう言われても仕方ないのだけど、実際にはいくつかの独自のルールをもった実験的な社会のコミュニティだったりする。

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そのひとつが“No Spectator(傍観者になるな)”
全ての参加者が表現者であるというルール。

通常のイベントのようにただチケットを買って受け身でいくものとは全く別もので、参加者みんなでブラックロック・シティという街を造り上げていく。
アーティストもステージもみんなチケットを買った参加者たちが用意する。

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さらには、ここでは基本的に通貨が一切通用しないので、水・食料・住居などは自らで持参し、砂漠と言う過酷な自然環境のなかで生活しなくてはいけない。

と、ここまで聞くと、なんでそんな面倒くさいことをわざわざやらなくてはならないの? って、思う人もいるでしょう。
しかし、参加した人達のほとんどがまたこの街に戻りたいと切望する。
それはこの街が想像を超える世界観で、とにかく信じられないくらいハッピーだから。

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その理由の一つに“GIVE&GIVE”という基本精神が挙げられる。
アート表現も食べ物を渡すことも全てがGIVEとGIVE。

巨大な船のようなアートカーにブースをのせて砂漠を走らせ(もちろん誰でも乗れる)、バーではお酒やフードがフリーで配られる。
他にも、アマゾンで修行したシャーマンからヒーリングやリーディングを受けることもできる。

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一部ではこれらの行為を物々交換と誤解をされているが、それだと“GIVE&TAKE”になってしまう訳で、そこにあるのは完全なるペイフォワード、つまり見返りを求めない奉仕の世界。
自分がしてもらったことをその相手に返すのではなく、自分に見合った形で誰かにしてあげればいいのだ。

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だから世界のトップDJはそれを音楽という手法を使いGIVEし(リッチー・ホウティン、カールコックス、エルナン・カタネオ、スクリレックス、ディプロなど多数参加。もちろんギャラなし)、

お金がなくても笑顔をGIVEすることや奇抜なファッションで人を楽しませるGIVEだってある。
夜空から星が振ってきた!って思ったら、空から光をまとった人が降りてくる演出だったり(笑)。

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そうそう砂漠では、電波もなにも通じないから携帯やPCはほぼ皆無に。
そうすると不思議と自分の感度が良くなるみたいで、思っているものを引き寄せる力も強くなる。

例えば、ノドが乾いたと思ったらマルガリータ屋が突然現れたり、例え仲間とはぐれても絶妙なタイミングで再会したりする。

とにかく見返りを求めないこの街は、信じられないくらいハッピーな雰囲気に包まれているのだ。

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最後に、僕がこの『Burning Man』に参加して改めて感じたことは、“本質へと繋がる人類の可能性を教えてくれる希望の街”だということ。
その街は、一週間でなくなってしまうけど参加した人々の中には、確実にその精神が刻まれていく。

もちろん参加するために、各々の出来ることである程度の自己投資は必要になるけども、これは目先の投資ではなく、未来をつくる上での宇宙規模での投資なのだと思った。

世界中にあるどんなフェスティバルやイベントとも比べられない、この『Buning man』を是非一生に一度、出来るだけ早めに体験していただきたい!

Text:小橋賢児

小橋賢児
こはしけんじ
1979年8月19日生まれ、1988年、芸能界デビュー。以後、岩井俊二監督の映画『スワロウテイルバタフライ』や NHK朝の連続小説『ちゅらさん』、三谷幸喜演出のミュージカル『オケピ!』など数々の映画やドラマ、舞台に出演し人気を博し役者として幅広く活躍する。しかし、2007年 自らの可能性を広げたいと俳優活動を休業し渡米。
その後、世界中を旅し続けながら映像制作を始め。2012年、旅人で作家の高橋歩氏の旅に同行し制作したドキュメンタリー映画「DON’T STOP!」が全国ロードショーされ長編映画監督デビュー。同映画がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にてSKIPシティ アワードとSKIPシティDシネマプロジェクトをW受賞。
また、世界中で出会った体験からインスパイアされイベント制作会社を設立、ファッションブランドをはじめとする様々な企業イベントの企画、演出をしている。
9万人が熱狂し大きな話題となったULTRA JAPANのクリエイティブディレクターも勤めたりとマルチな活動をしている。

EVENT INFORMATION

Burning Man

2016.08.28(日)〜09.05(月)

アメリカ・ネバタ州 ブラックロック・デザート(Black Rock City)

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