FLOOR編集部が独断と偏見でピックアップした各メディアのチャートをもとに、2015年の音楽シーンを俯瞰して読み解いていく本企画。
主要メディアを集めた第一弾、『DJ MAG』『RA』2誌のランキングを分析した第二弾の記事に続き、イギリスの老舗ダンス・ミュージックメディア『mixmag』、そしてアメリカの音楽誌『Billboard』からダンスミュージック系のチャートを解析。
メジャーフィールドをも席巻するEDMとアンダーグラウンドの双方に焦点をあてて、2015年のシーンを紐解いていく。
mixmag
昨年とガラッと変動したランキングはオリジナル色強し!?
DJMAGと並ぶ人気を誇り、30年以上の歴史を誇る「mixmag」誌からは、「The Top 10 Djs Of 2015」のランングを採用。
DJ MAGと双璧を為すランキングとして世界中のダンスミュージックファンから信頼を獲得している同ランキングの結果は、昨年から一変している。
2014年は、ディプロやスクリレックスなどメジャーシーンやEDMシーンからの人気の高いスターがランクインしていたが、2015年はストイックな結果に。
昨年1位のザ・マルチネス・ブラザースに至ってはトップ10圏外になっている。
というのも、mixmagのランキングは、読者投票の手法をとらず長年シーンを見続けてきたベテランエディターやライターによる合議でランクを決定する手法をとっており、いわば1年間で象徴的なパフォーマンスを見せたアーティストへの評価が直結している。
そのトップに輝いたのは、「RA」でも3位にランクしたテイル・オブ・アス。
このイタリア人2人組は、ダンスミュージック・シーンの数々のエポックメイキングな場面で際立った活躍を見せた。
例えば、世界的ロックフェス『Coachella』を爆発させ、コアな音楽ファンから絶対的な支持を得る『Dekmantel Festival』やマンチェスターのThe Warehouse Projectでも並みいる競合を圧倒。
イビサDC10でのレジデント・パーティが昨シーズンでもっとも熱いイベントになるなど、現場レベルで圧倒的な存在感を放った。
さらにテクノの名門R&Sからリリースした“North Star/Silent Space”やカリボー、プラスティックマンといった大御所アーティストへのリミックスなど多くの話題を提供した事も1位に選出された理由だろう。
2位にはRAでも躍進を遂げたフォーテット。
特筆すべきは、3位のブラック・コーヒー。彼は南アフリカ出身のハウスDJで、“アフリカン+ハウス”の新風を巻き起こしているが、なんといっても彼が注目を浴びる理由となったのは、事故により左腕を失ってしまった片腕のDJであるということ。
そうにもかかわらず、右腕一本で60時間耐久セットを完遂するなど、人間離れした荒業を披露。
DJ AWARDS2015では「BREAKTHROUGH IN ASSOCIATION」に輝くなど、2015年を象徴するアーティストであることは間違いない。
またアダム・ベイヤー夫妻のB2Bがランクインするなど、他にはない特色が反映されている。
Billboard
ディプロ、DJスネーク、カルヴィン・ハリスの3強時代!?
ビルボードのHot Dance/Electronic Song部門(通称EDMチャート)の年間ランキングは、今年多くの人が耳にしたアンセムがズラリと並んだ。
1位は、やはりこの曲。ストリーミングサイト:Spotifyでもっとも再生された(なんと5億4000万再生!)曲となったディプロとDJスネークによる“Lean On feat.Mo”。
同曲は、ビルボードの年間総合チャートでも16位に入る大ヒットを記録しており、EDMシーンだけではなく音楽シーンにおいても2015年を代表する楽曲となった。
さらに2位にはまたまたディプロ! スクリレックスとのユニット、ジャック・ユーからジャスティン・ビーバーをフィーチャーし話題となった“Where Are U Now”がランクイン。
また4位には、DJスネークとアルーナ・ジョージの“You Know You Like It”。
ダンスミュージック・シーンのことEDMシーンにおいて、2015年は“ディプロとDJスネークの1年”だったと言えるだろう。
さらに“もっとも稼ぐDJ”として知られるカルヴィン・ハリスも3曲がトップ10に入り、相変わらずのヒットメイカーぶりを発揮。
アーミン・ヴァン・ブーレンとの共作“Another You”のヒットでも知られるMr.プロブズの“WAVES”が5位に入り、2016年以降の躍進に期待がかかる。
また2014年リリースのデヴィッド・ゲッタのアルバム「Listen」から“Hey Mama”がロングヒットを記録。もはやデヴィッド・ゲッタとニッキー・ミナージュの黄金コンビに間違いなしの印象を強くした。
そして、日本でも単独公演が即完売したゼッドも、セレーナ・ゴメス嬢とのコラボが話題となった“I Want You To Know”が10位にランクイン。
意外にもセカンドアルバムの先行シングルがヒットしたアヴィーチーは20位圏内に1曲も入らなかった。
1年間でよく現場で聴いたな~と感慨深くなる楽曲群。一般的認知度が高い楽曲を知るという意味ではやはりビルボードが参考になる。
– BACKNUMBER –
「世界のチャートから紐解く2015年の音楽事情」
|主要メディア編
|ダンスミュージックメディア編-DJ Mag/RA-