5月28日(土)に行われる『STAR ISLAND』。花火と音楽、さらにはパフォーマンスが最新&高次元で融合する本祭は、その開催が発表されて以降大きな話題となっているが、果たしてその中身とは。3人の仕掛人に話を聞いた。

フェスが百花繚乱と咲き乱れる今、新たな試みがスタートする。
それは、日本の伝統文化である花火を最新のテクノロジーと現代人の才気と交えることで、新たなものへと刷新するかつてないもの。果たしてこの大輪はいかに美しく解き放たれるのか。誰もが予想しえないこのエンターテインメント『STAR ISLAND』に関して、今回はその中心人物である3人に話を伺うことができた。

そこにあったのは、伝統と革新が織りなす未来への提示。まずは、その発起人であり総合プロデュースの小橋賢児の思いから……。

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小橋賢児(以下、小橋) 花火とテレビって初めて見たときはものすごく感動したのに、いつの間にか当たり前のものになってしまっていますよね。当時の感動は薄れ、特別なものが特別ではなくなってしまっている。僕はずっとそう思っていて。

——それがイベントの着想ですか?

小橋 今はVRなどもありますが、もともと花火が最初の拡張現実だったのでは?と思うんです。想像したものが光の絵になるわけで。そんな花火の感動もいつのまにか普通になっている。花火はそれだけで十分美しく、花火というだけで人が集まるからよくある伝統としてアップデートしない。どこか置き去りにされちゃっているというか。

どんなに伝統的なものでも、最初に作ったときはイノベーションでありクリエイティヴ。その熱量はスゴかったはずなのに、伝統という言葉で片付けられ、そのままにされているものが多いなって思っていたんです。でも、本当にいいもの、未来に残したいものであれば、その時代にある才能やテクノロジーとかけあわせ、同時代、さらには未来の人たちが見てもスゴいと思うものを作らないと残らないと思ったんです。

——伝統的な花火をアップデートして未来へとつなぐということですか?

小橋 今新しいものと融合させれば、そこで興味を持った人たちが過去を改めて掘り起こし、伝統を守ることにも繋がる。逆に伝統に固執してそのままにしておくと、いずれ置き去りにされる。そういう意味では伝統という言葉は危険だなと思っていて。

だから、僕らが美しいと思う現代の花火をアップデートすることで伝統を守る、それがこのプロジェクトの始まりです。

——以前から花火に興味があったんですか?

小橋 僕が『ULTRA JAPAN』でお台場のど真ん中で花火を打ち上げたいという話を制作チームにしたときに、最初はみんなに無理だって言われたんです。でも、『隅田川花火大会』や『東京湾大華火祭』に参加している花火師さんに相談してみたらなんとか実現できて。

それで『ULTRA JAPAN』のフィナーレで花火を打ち上げることに成功したんですが、そのとき花火師さんもお台場で何万人もの若者が熱狂している姿を見て驚いていたんです。彼らも伝統を重んじる一方で若い人たちにもっと花火を見てほしいと思っていて、『ULTRA JAPAN』で様々な演出やストーリー、それぞれの思いやエネルギーが花火と合致したときにお互い共鳴し、一緒に何かやりましょうという話になりました。

——その後どういった形でこの企画は進んでいったんですか?

小橋 日本と海外の花火の違いについて聞いてみると、技術は日本の方が優れているそうなんですが、ロケーションが違うと言うんです。日本では河川敷など背景がないところが基本ですが、外国では魅力的なロケーションで行われるから、さらに特別なものになっている。そういう意味ではお台場、東京の摩天楼と呼ばれるあの景色を活かしたかったんです。ただ、それだけだとすでにあるので、そのロケーションを最大限に活かしアップデートしたかった。そのために今回は僕が感覚的にメンバーを集めました。

——それがパフォーマンスアーティストの小林玄さんと3DサウンドクリエイターのKatsuyuki Setoさんということですね。

小橋 花火も実際は3Dなんだけど、遠くで打たれているから、みんなの感覚的には2Dに写ってる。僕はまずその間を埋めたい、音とパフォーマンスで2Dを3Dにしたかったんです。僕の中では“ゴーグルのないVR”がテーマで、そのズレを埋めるために立体的な音とパフォーマンス、さらには光が必要かなと。

今回は、ここにいませんが、光の演出家AIBAさんによるライティングショーも含め、『STAR ISLAND』はこの3つが軸になっています。その中で、演出に関しては『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』という映画で壮大なマジックの仕掛けを見たときに、花火にも心理学やマジックが必要なんじゃないかと思い、様々なショーパフォーマンスの演出を手掛けてきた(小林)玄ちゃんに相談し、今回のストーリー演出やパフォーマーをお願いしました。

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小林玄(以下、玄) 以前、パリのセーヌ川にいたときにいきなり放送が流れたんです。“今から一組のカップルがプロポーズをし、成功したら花火があがります。みんな驚かないでくださいね”って。そのとき、僕はその場から動けなくなって。まわりにも同じような人が何百人もいたんですが、気付くと僕らは花火が上がることを期待してた。ただ、全然その気配がなく、もうダメかなぁ〜と思っていたら、一発の花火が上がったんです。でも、このとき僕は花火を見ていなかったんですよ。なぜなら、喜びに溢れているであろうまだ見ぬカップルを想像していて。

こういった花火の見方を変える、花火を通して何か違うものを見せること。“SEEING”ではなく“BEEING”の時代になりつつある今、ただ見せるのではなく、どう体験させるか。どうやって心の機微を感じさせるか、そのために感覚的なアプローチとして視覚的、聴覚的な部分での最大限の科学と、それでは計れない人の侘び寂びをかけ算するようなアプローチをしたいと思ったんです。

——それは斬新なアプローチですね。

小橋 ものの見方を変える、という意味では進化はしているけど、過去のものがないがしろになっていてもったいないと思うものもたくさんある。それはお台場というロケーション然り。同じ花火でも見方を変えれば楽しめるものがたくさんあるんじゃないかと思っていて。

今回は演出も含め、“見方を変える”というのもひとつのテーマ。たとえば、砂浜でベッドで寝そべりながら花火を見たり、ソファーで見たり。あとはBBQやディナーを楽しみながら見られる席や子どもたちが遊べるところなど、いろいろなエリアを設けています。

 その“見方”というのは視線という意味だけでなく、感性という意味の“物の見方”。どういった感覚で見るのかにもこだわっています。

——音の部分に関してはどうでしょう?

小橋 前にPARCOでアンダーワールドのVR体験をしたときに、映像は360°の仮装現実世界で新しいんだけど、あまり感動がなかったんですよね。何が足りないのか考えたときに音が360°ではなかったからリアリティがなかったと思い、友人で3DサウンドのパイオニアのKatsu(Katsuyuki Seto)くんに相談したんです。

彼のスタジオで音を聴かせてもらったときに、電気を消して真っ暗なんだけど目の前に景色が見えた。音から景色が見えるってスゴいなって思って。時代的に誰もが映像に走りがちですが、音の聴かせ方が大事。そう思ったときにイマジネーションで見る花火ってどうなんだろうと思ったんです。

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Katsuyuki Seto(以下、Katsu) 映画はサラウンドが必須ですが、僕のスタートは逆。映像があると逆に空間が制御されてしまうんですよね。どうしても映像に目がいってしまうから。僕は音でどこまで映像を見せられるのかをテーマにしていて、それはいわば受取手に想像させるということなんです。その中で花火の見方を変えるということは僕にとっても興味深かったんですよ。

——具体的に今回行うことを教えていただけますか?

Katsu 音のパーツが正面だけではなく、配置によってどのように作用するのか……普通のステレオで聴く音楽とスピーカーの配置によって感覚に与える作用は違うんです。会場そのものをサラウンドで包み込むことは、技術的にもコスト的にもそう簡単にできることではなく、屋外では非常に難しい部分が多いんですが、僕は今その難題に挑んでいます。

しかも、通常のフェスはスピーカーを前方にまとめられているので音のコントロールも配線もシンプル。でも今回はスピーカーがのべ60基、ラインアレイのタワーが4つという前代未聞のセッティング。なおかつ、音量のクレームが出ないようにサウンドをデザインする必要もある。本来はタワーを増やすことで解消できることもあるんですが、そうすると景観的に花火を損ねてしまう。様々な条件下で前例のない組み方をしています。

 演出や音響などそれぞれのセクションが夢を語り合い、素晴らしいものができたとしても、イベント自体にクレームがきてしまったらおしまい。そして、最悪なのはこういったイベント自体がなくなってしまうこと。根付いていくことが重要であり、そのためにも僕らは終わらせないようアップデートしていく必要がある。今回はそのための挑戦でもあるんです。

規制上、やりたくてもできないこともありますが、かといって今までのルールに則ったことだけをやっていてもアップデートはできないので、すごくギリギリの部分を攻めていることが『STAR ISLAND』の最大の新しさだと思います。

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Katsu 音響的には新しいステージにいけたと思っています。僕はイルカの超音波の研究もしていて、音で感覚は開閉する、そういったことにも挑戦していて。僕はパワースポットが好きで、世界中をまわって音響的な観点で研究しているんですが、今回は一部のエリアでそこで出ている周波数も再生します。

当日使用するドイツのアダムというスピーカーは50kHzまで再生できるので最高の音質で超音波を体感できるんですよ。本当のハイレゾ・サウンドですね。耳では聴こえない音でどうやって感覚を開くか、それを20kHzと50kHzの周波数をランダムに使い分け、超音波でやります。

人ってものの見方とかがそのときの感覚で変わる、たとえばお酒も誰と飲むかで味が変わりますよね。フィジカルな部分を最高な状態にしておけば見えるものもよく見える。だから、音のテクノロジーでできることは全てやって、感覚を開いていこうと思っています。

——イルカの超音波って人にはどんな影響があるんですか?

Katsu 簡単に言えばリラックス効果ですね。イルカも3種類あって、それぞれ効果は違うんですが、僕はバンドウイルカをベースに心のフィルターを取り除く研究をしています。それは大人になればなるほど作られると思うんですが、それを取り除く方法として超音波を使っているんです。そうすることで、歌詞の意味が自然に入ってきてイメージを連想させることができたり、情景を浮かび上がらせたり、そういったことが可能になるんです。

——それが感覚を開くということなんですね。

Katsu そうですね。僕のスタジオでは『感覚を開く会』というのを行っているんですが、開いた状態でミーティングをするといいものが生まれる。『STAR ISLAND』のプロジェクトもそうしています。そこでは本来人が感じるものがより明確になるんですよ。そして、ご飯を食べてもおいしいし、水もおいしくなる。それは感覚が開いているから。

毎日同じことをしていると感覚は閉じ、一方で感動が増えていくと人はストレスアウトしていく、いわばデトックスですね。それを自発的にやっています。今回(小橋)賢ちゃんから花火の見方を変えたい、そのために力が必要だって言われたときに、その感覚はすぐにわかったんですよね。僕は音響に心理学も取り入れているので。

また、音の配置で感じる方が変わるということ、たとえば自分の前には川があり、その反対側には森のせせらぎがあり、上からは鳥の鳴き声がするようにサウンドをデザインすると、その中で人は川に近づいたり、森に行くこともできるんです。つまり、自分がいる場所によって聴こえ方や感じ方が変わり、情景をイメージさせることができる。現物がない状態でそこまで連想させるためのサウンドデザインと超音波です。

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——映像に音を付けるのではなく、音から映像を見せるということですね。

Katsu 3Dサウンド以外でも、僕は3Dミュージックというのをやっていて、そこでの曲の捉え方は音楽そのものを空間の中で作り込んでいくことなんです。僕はこれでグラミーを狙っています。素晴らしい音楽は世界中にありますが、音響では負けない。彼らは映画のサラウンドが限界ですが、僕は映像なしで風景を思い浮かばせる、それを16年間研究してきたんです。

——その経験を今回フルに活かす、それはひとつの挑戦でもありますよね?

Katsu 他に何もマネをするものがないぶん、挑戦と言えますね。60個のスピーカーをそれぞれ特定の場所に設置し、別々の音を出さなくてはいけないし、野外なので風の影響も考慮しなくてはならない。でも、世界初のことをやりたくて挑んでいるんです。失敗はできないですし、本音を言えば毎日プレッシャーで吐きそうです(笑)

小橋 たとえば花火の音がみんなのまわりを一周して、その後にリアルの花火が夜空に上がる。あるいは海の中に潜り、そこからあがってきて見る花火だったり、そういった仮想現実を音で想像させる。ひとつの花火を見るために今回は特別な3Dサウンドの演出をしているんです。

 制作サイドやクリエイターのアップデートもそうなんですが、今回は感覚的なことを伝えることで、お客さんや世界のエンターテインメント業界、さらにはこれからの日本や世界のショービジネスに対する警告であるべきだとも考えていて。つまり、“お客さんの感覚がアップデートしてほしい”ということなんですよね。

たとえば何回かやっていくうちに演出的にはグレードダウンしたとしても、お客さんの感覚があがっていけばそれが成功だったりもする。今の時代は過剰な演出ばかりになっていて、さらにはものごとの本質を考えずに見て、お客さんは優劣を付けているんですけど、本当にあるべき姿は何かを見たり、聞いたりしたときに自分の中に情景が見えて、感動して自然とスタンディングオベーションが起きている。そうやって個人の感覚が養われることが大事。だから、僕たち制作側よりも、ミッションとしてはお客さんの感覚のアップデートを命題にしています。

小橋 本当のクリエイティヴってただ新しいことをやっていくことではなく、人にどう想像させるか。毎回最新技術を使うと底が見えてきてしまうし、そういうことではないと思うんです。今回のプロジェクトに関しても新しい施設を常設したり、期間限定の屋内公演なら現実的なんでしょうが、それが1日でなくなるということが普通じゃないのかなと思います(笑)

小橋賢児
こはしけんじ
役者として活躍した後、世界中を旅することで受けたインスパイアをもとに新たなステージを開眼。映画監督やイベントプロデューサーなど様々な分野で辣腕を振るう。現在は『Dîner en Blanc』や『ULTRA JAPAN』といった海外イベントを日本に紹介すると同時にディレクターもつとめ、さらには数多くのPRイベントの演出なども手掛けている。
小林玄
こばやしげん
アーティストとしてマイム、マジック、道化芝居などあらゆるパフォーマンスで国内外のイベント、メディアに出演。その一方で、パフォーマンスに関する深い造詣とコネクションを活かし、演出家、コンテンツプロデューサー、パフォーマンスコーディネイトなど多岐に渡り活躍。また、作家としても映像や舞台の脚本、本の執筆なども行い、その才気は各界で注目を集めている。
Katsuyuki Seto
かつゆき・せと
音のみで映像を連想させる3Dミュージックなる概念を確立させた3Dサウンドデザイナー・プロデューサー。その才能は世界が認め、過去にはクリエイター100選にも選出。さらには映画『アバター』の制作などで有名なVFX制作チームWeta Digitalも彼に注目している。現在は国内外の特殊音響空間をプロデュースをはじめ幅広く活躍。スタジオ・スペースラボ代表。
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EVENT INFORMATION

STAR ISLAND

2017年5月27日(土) ※予備日:28日(日)

開場 16:00 / 閉場 21:00


お台場海浜公園

STAR SEAT ¥8,000 / STAR SEAT(BEST VIEW)¥10,000 / LIMITED STAR SEAT(BED)2 名 ¥30,000 / LIMITED STAR SEAT(DINNER)2名 ¥40,000 / LIMITED STAR SEAT(BIG CUSHION)4名 ¥50,000

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