何事も2回目となると難しいもの。人間“初めて”のものに興味を惹かれ、まずは体験……といった心持ちになるが、2回目はそう簡単にいくわけではない。

しかし、そんなジンクスなどものともせずに前売チケットはソールドアウト。開催当日も15,000人を動員と見事大成功を収めた未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」。

日本の伝統文化である花火を、最新のテクロノロジー・3Dサウンドやパフォーマンスと融合させ、新たな花火エンターテインメントとして提示する本祭。昨今、無料の花火大会でさえ様々な事情により中止を余儀なくされるなかで、花火に付加価値を与えることで有料化し、見事成功を収めるその手腕は恐れ入る。

基本的に、その温故知新的な構造はきっと日本の様々な文化にも通用する部分があると思うが、ただ伝統を刷新するだけではこうもうまくはいかないはずだ。そこには、厳選されたクリエイターたちの汗と涙の結晶とも言えるコンテンツ力に加え、ただただ文化を現代的に置き換えるのではなく、花火自体の見方、そして楽しみ方をも進化させるという考え方も大きい。

よりよりものをよりよい環境で、それも様々なスタイルで……それこそ豪華ディナーに舌鼓を打ちながら、快適に寝転びながらという鑑賞スタイルは他の花火大会ではそうそうない。

さらに、今回は新たにカップルやグループといった来場者たちの“人数”によってカテゴライズし、それぞれの楽しみ方を提示するといった新たな試みも進化のひとつ。もちろん、それらに付随するユーザビリティも抜かりなく、花火という老若男女が楽しめるイベントだけに、ファミリー層に向けてキッズエリアや授乳室を拡充するなど、あらゆる部分に配慮がなされているのも人気の秘訣だろう。

肝心の本祭だが、まだまだ宵の口にはほど遠い16時のオープンながら、DJや数多くのパフォーマーが会場を彩り飽きさせない。それも単純な花火大会ではなく“花火エンターテインメント”と謳う「STAR ISLAND」の魅力。

DJもSHUYA OKINOやSHINICHI OSAWAなどその人選もさすがなもので、クラブとはひと味違う彼らのプレイを堪能できるだけでも嬉しい。パフォーマーもそのパフォーマンス力はもちろんのこと、至るところで来場者たちをもてなす心意気と数の多さは既存のイベントとは一線を画すところだ。

そして、音楽とパフォーマンス、ライティングなどが一体となって繰り広げられる花火も格別なものだった。

何より、全てのタイミングが絶妙で、その展開がなんともドラマティック。花火の視覚的興奮は当然ながら、身体全体を自然と包み込む3Dサウンドが鑑賞者をときに無意識下に昂らせ、誰もが知っている曲ではさらなる感動を呼び起こす。その視覚と聴覚の相乗効果こそ「STAR ISLAND」ならでは。

とりわけ、ビョークの“hyperballad”と花火の幻想的な世界観はえも言われぬものがあり、さらにはクラシックとの親和性、SHINICHI OSAWAの“Star Guitar”やゼッドの“Clarity”といった曲との新鮮なコラボレーション、ブルーノ・マーズやマイケル・ジャクソンといったスターの楽曲の強度などいろいろと興味深いものがあったが、えてしてエリック・プライズの昂揚感と花火のコントラストもまた素晴らしかった。

“未来型花火エンターテインメント”という枕詞もさることながら、そこに複合型、刺激的など様々な言葉があてはまりそうな「STAR ISLAND」。見事第二回も成功に終わり、次なる舞台は……と気になるところだが、これは日本だからこそできたエンターテインメント。

本邦の文化を伝統に甘んじ、固執することなく、日本の強みである技術・テクノロジー、おもてなしの心など様々な要素と緻密に練り上げたからこそできた唯一無二のもの。

そんな日本発のエンターテインメントが世界でどう映るのか、さらなる展開に期待したいし、花火×音楽×パフォーマンスの可能性は無限大に広がっているだけに、ここ日本でもまた素晴らしい第三回が開催されることを願うばかりだ。