「DJは、ライヴより劣る」そういった風潮もかつてはあった。
EDMシーンの寵児、ゼッドの単独来日公演で目にした光景の数々は、そんな懸念を取っ払ってしまうパワーがみなぎっていた。

6月4日の出来事は“音楽の価値”の変動か?
「サマソニ」で再来日が決定しているゼッドの偉業を改めて振り返る。

6月4日に新木場STUDIO COASTで目にした光景は、音楽シーン全体から見れば、よくあることだったかもしれない。
ただ、邦ダンス・ミュージック・シーンにとっては、エポックメイキングな出来事だった。

主役は、EDMシーンのプリンス、ゼッドである。
この日、全世界が待ち望んだセカンド・アルバム「TRUE COLORS」のリリース直後という絶好のタイミングで、初となる単独来日公演が行われた。

チケットは即日ソールドアウト、追加席を用意するも完売(6月6日に行われた大阪公演も同様に完売)。
当日も開場前から、ライヴが待ちきれない来場者による行列ができるなど、ゼッドの人気の高さを示す事例がいくつも確認できた。

彼のこの日のパフォーマンスはいわゆるDJセットである。
シンガーも登場しなければ、バンドもいない。しかもチケットは、8000円である。
08年の『グラストンベリー』のヘッドライナーにジェイ・Zが抜擢され、時代の転換期を感じたような……。ちょっと大袈裟かもしれないが、この日“音楽の価値の変化”を見た。

ダンス・ミュージック・シーンを長年見てきた者にとって、少なからず衝撃的な1日だったことだろう。
ゼッドの単独来日公演の模様を、EDMシーン全体の流れ、ゼッドのアーティスト像を交えて、振り返っていきたい。

EDMカルチャーが勃興し始めたとき、アメリカを中心に“DJセットなのにチケットが高額”といった類の批判的な意見が多く見られた。
EDM隆盛は、ダンス・ミュージックの高揚感溢れるプロダクションもさることながら、その楽曲を数万人規模で現場で共有し、体感できる大型フェスに最大の要因があったと言える。

そして、現場にはそんな批判を封じ込めるほどのパワーをアーティストが発揮しつづけ、オーディエンスが支持したために、現在のEDMシーンが存在する。
フェスには数万〜数十万のオーディエンスが集まり、各国の主要チャートの上位にもDJ・プロデューサーの楽曲が食い込むという好循環を生む。

ダンス・ミュージック・カルチャーにおいて、もっとも活況を呈しているのが現在だと言えるだろう。
過去にも“セカンド・サマー・オブ・ラブ”や“マッドチェスター”、90年代の“ビッグビート”、00年代の“エレクトロ”など時代々々にダンス・ミュージックに端を発するムーヴメントが存在したが、ここまで世界規模で、商業的にも成功した例は稀有である。

アメリカで生まれたEDMムーヴメントは若干のタイムラグの後、少しずつ日本でも紹介されるようになる。
しかし、当初はアメリカや欧州と比べてダンス・ミュージックの土壌が薄い日本で受け入れられるのか?という懐疑的な見方は一定数で存在していた。

そういった状況下でレーベル、イベンター、アーティストら業界全体の積極的な動きもあり、シーンは確実に醸成されてゆき、昨年の『ULRTA JAPAN』の大成功をもって、日本でいよいよEDMが“定着”した。

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と、向かうところ敵なしの状況ではあるものの、例えEDM界のスーパースターといえども単独公演がここまで盛り上がるとは思っていなかった。
それはやはり“EDMは大型フェスで楽しむもの”という概念が強く存在することに起因するのだが、ダンス・ミュージック・アーティストの公演がこれほどまでに日本で熱狂的に受け入れられたという事実を目の当たりにして、感動すら覚えた。

ここ数年でEDMカルチャーの定着とともに生まれた“音楽の価値”の変化。そして、やはりそれをいとも簡単に成し遂げたゼッドというアーティストの魅力が、今回の単独公演の大成功につながったのだ。

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そのゼッドの魅力だが、まずイケメンである
ナメんてんのか?と思われるかもしれないが、これは重要なファクターのひとつ。

これまでにダンス・ミュージックは、好事家たちによるマニアック偏向に陥るきらいがあったが、シーンの拡大には、アイコンの存在は不可欠である。
アヴィーチーしかり、EDMシーンの担い手が若くて活きが良い男たちが多いことは、実際に大きく貢献していると思う。

ゼッドは、その代表格。特に当日のDJプレイ中の姿は、実にサマになっていて、オーディエンスを煽る仕草ひとつとっても「ズルいなぁ、そりゃ盛り上がりますわ」と。
陳腐な表現ではあるが、“会場がひとつになる”。これが誇大でもなんでもなく、常態になっているという盛り上がりっぷりを実現させていた。

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そして、世界中の主要チャートを席巻するヒット曲の多さ
デヴィッド・ゲッタやカルヴィン・ハリス、アヴィーチーといったアーティストと同様に、ゼッドもまた多くのヒット曲をリリースしてきた。

そんな彼と他のアーティストとの違いを挙げるとしたら、経歴が“華やか”であること。
ジャスティン・ビーバーの代表曲“Beauty And A Beat feat. Nicki Minaj”(2012年)をプロデュース、レディ・ガガのアルバム「Artpop」にも複数の楽曲を提供(振り返るとゼッドの初来日は、レディ・ガガのワールドツアーに帯同してのものだった)、アリアナ・グランデの大ヒット曲“Break Free”(2014年)も彼の手によるものだ。

とにかく世界中で高い人気を誇るポップ・アーティストとの仕事が多く、ダンス・ミュージック・ファン以外にもその名は広く知られている。
さらに安室奈美恵にも“Feel”(2013年)、“SCREAM”(2015年)と楽曲提供をしており、日本での認知度、人気の高さに拍車をかけている。

このようなプロデュースワークの成功も、グラミー賞を獲得したファーストアルバム「Clarity」に代表される卓越したサウンドメイクがあったゆえ。

当日は、最新作「TRUE COLORS」のリードシングルであるセレーナ・ゴメスを起用した“I Want You To Know”などを惜しみなく投下し、“Beautiful Now feat. Jon Bellion”や“Stay The Nights”では、会場全体の大合唱を生み出す。
オーディエンスはみな恍惚の表情だ。

さらにお馴染みとなったゼッド自身が大好きなゲーム『ゼルダの伝説』のテーマをリミックスした“Legend Of Zelda”やEDMアンセムであるショウテック“booyah”やアレッソ“If I Lose Myself”、クリーン・バンディット“Rather Be”など他アーティストの楽曲も交えたぶち上がりっぱなしの2時間強。

紙吹雪やスモーク、映像とのリンクといった演出もあったけど、それはおまけ程度。
今や海外では、ポップ〜ロックのアーティストと同等の人気を誇るスーパースターDJが魅せたステージ。

それを受けオーディエンスも歌い、踊る、その光景。
フェスではなく単独公演でこの熱気。日本のEDMは次の段階へと進んだのではないだろうか。

また本公演は、未成年も入場が可能となっていた。
クラブでしか体験することのできなかった音楽カルチャーに若年層も触れることができた、という点でも画期的だった。

6月4日は、時代の寵児の来日公演という以上に、さらなるシーンの拡大を予見させ、“音楽の価値の変化”を確信させる興味深い事実を多くはらんだ貴重な1日となった。

jkt
ZEDD『True Colors』
UNIVERSAL

SUMMER SONIC 2015
サマソニにて再来日決定!

2015.8.15(SAT) / 16(SUN)
@QVCマリンフィールド&幕張メッセ(東京)
@舞洲サマーソニック大阪特設会場(大阪)
ACT:THE CHEMICAL BROTHERS / ARIANA GRANDE / MACKLEMORE & RYAN LEWIS / MADEON /きゃりーぱみゅぱみゅ / MARILYN MANSON / RADWIMPS / THE ORIGINAL JAMES BROWN BAND / TUXEDO(Full Band Set) / PHARRELL WILLIAMS / IMAGINE DRAGONS / ZEDD / THE SCRIPT / MAGIC! / NICO & VINZ / D’ANGELO AND THE VANGUARD / OLLY MURS / CARLY RAE JEPSEN / CLEAN BANDIT / MODESTEP / PASSION PIT and more

【OPEN/START】 9:00 / 11:00
【TICKET】
前売 1日券 15,500円(税込|ブロック指定)
前売 2日券 28,500円(税込|ブロック指定)
プラチナチケット 30,000円(税込|サマソニ1日券+プラチナ特典)
【INFO】www.summersonic.com