2019年以来、3年ぶりに開催された「ULTRA JAPAN」。この“3年”というモラトリアムがなんというか……“3年経っても”なのか、はたまた“3年も経つと”というべきか……とにもかくにも久々の「ULTRA JAPAN 2022」を振り返ってみたい。

今年は本家マイアミでも無事開催され、ヨーロッパも大いに盛り上がった「Ultra Music Festival」。日本でも各地で野外フェスが再開する中、アジアで先んじて「ULTRA JAPAN」は9月17日、18日に開催(KOREAは24日、25日)。結果としてチケットは事前にソールドアウト。初日はオープン前から長蛇の列。2日目も生憎の天候ながら大行列。ULTRA JAPAN人気は“3年経っても”健在だった。

今回は「ULTRA MAIN STAGE」と「ULTRA PARK STAGE」の2ステージ。好天に恵まれた初日はスタートから大盛況で、やはり“3年も経つと”その開催を誰もが待ち侘びていた様子。特にメインは顕著でTJOやYAKSAの安定感抜群のプレイもあり盛り上がりの初速がとにかく早いこと。そうした中で興味深かったのはCartoon + YELLOCK。テックハウスのCartoonとドラムンベースのYELLOCKがいかに融合するのかと思えば、4つ打ち〜ドラムン、そして再び4つ打ちへと移行する変則的セットで、これがなかなかに新しさを感じたし、アリだなと。

暑さが増す中、初日のハイライトは早々に。それはULTRA JAPAN初参戦となるティミー・トランペット。目下大型ダンスミュージックフェスでは今最も盛り上げる男との呼び声高いティミーは日本に来て大好きになったというお酒「咲」を片手に速攻で伝家の宝刀トランペットを吹き鳴らし、上半身裸になるのもまた瞬速(開始から15分程度!)。さらにはステージ上で踊るわ、走るわ、腹筋するわ、懸垂するわ。挙句に誕生日の方や婚約者をステージに上げるわ、パーティモンスター:スティーヴ・アオキを超えるノリが過ぎるパフォーマンス。

そして、何よりセットも爆裂ハードスタイルに随所にJポップをマッシュアップ。Ado“新時代”にLiSA“紅蓮華”はまだまだかわいいもので、SMAP“世界に一つだけの花”に加え、シメにはULTRA JAPAN史上初の坂本九“明日があるさ”からの、どこで覚えたのか“サライ”(お台場で!)はやりすぎかと思ったが、このコミット感、虎穴に入らずんば的なローカライズ力が人気の秘訣かなとも(ここまでやりきれるのはなかなかいない)。

そんなティミーだっただけに、続くカシミアはそのコントラストでストイックさ倍増。ティミーとは別ベクトルのハードさ&相変わらずのオリエンタル感で、何より冒頭の“Neverland”は桃源郷感があってエモかった。

そして、初日メインのトリはマーティン・ギャリックス。2014年の初開催時も出演し、その時はまだまだ幼さもあったが今となってはもう……DJ MAGのランキングを幾度となく制覇し貫禄たっぷり、髭も蓄え精悍に。肝心のセットは自身の楽曲中心で、出てくる出てくるヒット曲、その多さに改めて驚きつつ、終盤にはサプライズゲストに翌日の大トリ、USJでの神対応で話題のゼッドがここでも神対応。コラボ曲“Follow”を投下し、ラストは“Starlight”。“3年経っても” ULTRA JAPANはスペシャルナイト。

一方、パークも度々盛り上がり、特に印象的だったのはYohji Igarashi。カシミアの裏で珠玉のハウス。盟友のHIYADAMもゲスト参戦しての“NIGHT TIME IN TOKYO”はたまらなかった。2日間通してパークはパークで独自色満載というか、出演者たちがやりたいことをやりきっている感がとても魅力的だったし、アートあり、パフォーマンスあり、そしてシチュエーションも開放感があってとにかく気持ちよかった。

初日の雑感としては3年ぶりの開催に沸きながらも、やはり3年のブランクは大きかったのか、お客さんたちは早々に盛り上がり過ぎで“3年も経つと”ペース配分を見誤っていた感が。また、この日は久々の暑さもあって最後はどこかバテ気味、マーティン・ギャリックス時には少し疲れも見え隠れ。

続く2日目は朝から悪天候の中でも弾けるお客さん。“3年も経つと”鬱憤も積もり積もったか、それを晴らさんと雨中で踊る姿は圧巻。途中、雷鳴が轟くもメインは避雷針が用意されており、その用意周到さもさすが。そんなメインでは前日同様まずは日本人アーティストが続々登場し、DJ TORAのステージにはAK-69も参戦。そして、この日のヘッドライナー第一弾ニッキー・ロメロは最悪のコンディションの中でも新曲を交えつつ奮闘。お馴染み“Toulouse”をかけると同時にバケツをひっくり返したような雨になるも、“3年経っても”お構いなしに盛り上がるオーディエンスの姿はひとつのハイライト。

2人目はオリヴァー・ヘルデンス。ピカチュウキャップを被ってお茶目に登場するも(ヘッドホンをする時に邪魔そうだった)、そのプレイはもはや職人、決してブレることなく独自の道を追求する匠の技。予想通り“Wombass”に始まり、自身の楽曲&別名義ハイローも交え、いい意味でいつも通りのハイクオリティ。途中、ピカチュウキャップを被り直して“Pikachu”からの“Gecko”がなんとも乙で、最後まで超ダンサブル。悪天候の中でも多くの人が詰めかけていたのだが……どこか胎動感が薄く、これも3年ぶりだからかと思ったが、それを見事に払拭したのはアフロジャック。

3年前の「ULTRA JAPAN 2019」で大トリを務めたアフロジャックだが、この日はその時とセットは違うもアフロジャック節は相変わらずというか、その変わらなさがULTRA JAPAN再開を実感させてくれたというか……きっと3年前も“Titanium”〜“Hands Up”〜“Hey Brother”のビッグウェーブはあったし、その既視感こそが時間を飛び越え、3年前の続き、止まっていた時間が動き出したというか、ようやくULTRA JAPANが戻ってきた感じで感動(泣けた)。

決してオリヴァーが悪かったわけではないが(むしろ素晴らしかった!)、アフロジャックになるとオーディエンスのギアが数段上がった気が。さらにいえば今回、初日も大いに盛り上がったがティミー・トランペットとカシミアは正直ULTRA JAPANらしさは希薄というか馴染みがなく、2日目も終盤アフロジャックになってようやく感じたULTRA JAPAN感。2014年の第一回以来、2015年、2018年、2019年、そして今回と7回中5回も出演してきたアフロジャックこそやっぱり“ミスター・ウルトラジャパン”。そして今回の勝手にMVP。

こうして久々のULTRA JAPANにどっぷり浸りながら本祭を締め括ったのはゼッド。アフロジャックからのゼッドは奇しくも2018年と同じ構図で、このバックアゲイン感もエモかったし、最後にも関わらずDJブースを変えるゼッドのこだわりにも脱帽。そして、プレイもやっぱりゼッドはゼッドで途轍もない一体感。共感性、わかりやすさは天下一品、誰もが彼のヒット曲を待ちわび、“Stay The Night”も“Stay”も“Beautiful Now”も“Break Free”も“Clarity”もひとたびかかれば半端ない盛り上がり。ある種のお約束感とそれを叶えてくれるゼッドが盛り上がるのはもはや必然。さらには前日にお返しとばかりにマーティン・ギャリックスがステージへ。そして再び“Follow”。

最後は“Straight Into The Fire”でフィナーレを迎えた「ULTRA JAPAN 2022」。無事に終了したのは何よりだが、“3年も経つと”コロナ禍もあって体はなかなかに衰えたもので正直体力的にキツかった一方、“3年経っても”楽しいものは楽しかった。ただ、音楽的にはコロナ以降の楽曲も多い中、盛り上がったのはコロナ前のヒット曲が多かった気がするので、来年は肉体&音楽的にも改めて仕上げ直せばより楽しめるだろうし(みんなクラブに遊びに行こう!)、そうなればまた新たなULTRA JAPANがきっと楽しめるはず。2023年もまたお台場で“U”が輝くことを望むばかり。

©ULTRA JAPAN 2022