『RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2017』の一環として10月24日(火)に渋谷Red Bull Studios Tokyo Hallで開催される『言霊 – KOTODAMA 言霊歌詞展覧会』。
これは他イベントと違い歌詞に焦点を当て、本祭の舞台となる東京を改めて見つめるという新機軸。日本のアーティストたちが紡ぐ言葉の数々に込められた思いを感じることで、きっと音楽の新たな魅力を感じることができるはずだ。
東京という器に人は音楽を奏で、
言葉を紡ぐ
東京。
日本の首都。面積は2,190.75km2。人口は約1370万人。ニューヨーク大都市圏より大きい世界屈指の経済規模を持ち、多様なカルチャーが入り乱れた世界有数の大都市である。
東京は内から見るか、外から見るかで様相も変わる。
“東京”に住み慣れた人にとっては目まぐるしい毎日で気づきにくいが、地方で暮らしている人にとって“トーキョー”は、最新のスポットに溢れ、芸能人やセレブにも会える、きらびやかで最先端の街だったりする。また世界から見るとまた違った街に見えてくるだろう。
“東京”がタイトルやテーマになっている曲は古今東西多く存在する。それはこの都市が、群衆と孤独、夢と挫折、未来と過去……様々な相反する要素が渾然一体となっているからだろう。ある人には希望に見えて、隣の人には絶望に見えるかもしれない。今回は様々な角度から本誌がセレクトした“とうきょう”をテーマにした楽曲を紹介していきたい。
東京の街に出て来ました
あい変わらずわけの解らない事言ってます
(くるり「東京」/作詞:岸田繁)
東京には夢があるだろう。あるいは、あるように見えるだろう。物理的に東京でしか叶えられないこともあるだろうし、東京はくすぶった毎日を打破するために漠然と向かう目的地にもなる。時に東京はユートピアとして扱われ、青春ソングになる。
くるり、GOING UNDERGROUND、ケツメイシ、銀杏BOYZ、エレファントカシマシらの「東京」やシャ乱Q「上・京・物・語」など……。私小説的な独白になっているのが青春系ソングのひとつの特徴だ。“夢”“孤独”は、ユートピアとディストピアが表裏一体で表現される。ステレオタイプにはなるが、夢を叶えるために上京し、冷たい街に絶望する。
この都会 凄く冷たい
周りから見ると 触れたくて甘い
(ケツメイシ「東京」/作詞:吉田大蔵)
いわば東京に馴染めない“アウトサイダー”としての心境が映し出される。しかし、時に故郷にいる人を想い、もしくは東京で一筋の光明を見出し、また歩きだす。
気付けば今日もいつものコンビニでジュースを買って立ち読みをする
特に読みたい本なんかないくせに…
終電が行くとわりと静かな街明るい夜はとても便利です
寂しい夜もなんとかやってゆける
(Going Underground「東京」/作詞:松本素生)
何気ない日常を緻密に描写した歌詞は、リアリティ抜群だ。だから、響く。容易に自分を主人公に投影することができる。
抜群の安定感のある山手線の
エメラルドグリーンの座席シートにカラダを預ける
この高速移動式鉄箱の奴ら
僕ともう一名を除いて
全員 目が死んでいる
(ネズミハナビ「Dance.」/作詞:吉田諒)
すぐに情景が思い浮かぶだろう。“東京”という曲は、常に冷徹なリアリティが同居している。
あなたに逢いに行くのに
朝からドレスアップした
ひと番中 愛されたい
トーキョーは夜の七時
(PIZZICATO FIVE「東京は夜の七時」/作詞:小西康陽)
東京が“トーキョー”になるように、曲によっては、現実から夢のような場所に変わることもある。
PIZZICATO FIVEの「東京は夜の七時」は、街の灯りが星のように煌めく美しい東京だ。
JR新宿駅の東口を出たら
其処はあたしの庭 大遊技場歌舞伎町
(椎名林檎「歌舞伎町の女王」/作詞:椎名林檎)
そして、時にはネオンが光る眠らない欲望の街にも化す。東京という街の多様性ゆえ、楽曲もひとつのシーンを切り取るだけで、実に様々な表情を見せてくれる。
YMOの名曲「テクノポリス」で、“TOKIO”(TOKYOの意)のボイスサンプリングが多用されたように、カルチャーの坩堝のような近未来都市のイメージも根強いし、昭和歌謡や演歌では“大人の情愛”の舞台にもなる。
暗い都市のイメージも、幸せの象徴も、失恋の思い出も、夢を叶える場所にも、歌い手のその時の心情を映し出す鏡として、東京はどんなテーマも受け入れてくれる。それは日本人の誰もが知っているランドマークやスポットがどこよりも多いことと因果関係があるはずだが(リスナーとの共感性において)、一都市としての多面性、様々なカルチャーがミックスされていることが大きな要因ではないだろうか。東京は、音楽において器だ。
音楽シーンが変化するように、東京の街も変化する。色んな東京があってそれでいい。
東京とうきょう。
トーキョー。
TOKYO。
あなたにとっては、どんな街だろうか?
EVENT INFORMATION
言霊 - KOTODAMA 言霊歌詞展覧会(RED BULL MUSIC FESTIVAL)
2017.10.24(火)
Red Bull Studios Tokyo Hall(Shibuya)
¥2,000
出演:大貫妙子, 小西康陽, LEO今井, マヒトゥ・ザ・ピーポー
朗読:池内万作, 白勢未生