誰も見たことのない木星をヴァーチャル空間に作り上げた上に、VJがリアルタイムにその空間をリビルドしていく、驚異の映像体験「Jupiter A VIRTUAL JOURNEY」。その第三弾が5月22日(土)に開催された。

第一弾では木星へ、今年1月の第二弾では第二衛星エウロパ。そして今回、三回目の旅路で向かうは第三衛星ガニメデ。太陽系に存在する衛星の中でも最大の大きさを誇ると言われる寥郭たる星を舞台に、今回もまた度肝を抜く映像とパフォーマンスが繰り広げられた。

まるで英語のようなプロローグから、まず登場したのは日本ドラムンベース界の頂点DJ AKi。序盤は過去二回とはちょっと異なるセットに新鮮さを感じつつ、一方ビジュアルは刷新されるも圧倒的な映像美は健在ですぐさま没入。昨今、多くのオンラインイベントが開催されているが、この世界観と空間演出は「Jupiter」ならでは。

セットが徐々にアップリフティングになっていくに比例しハイプトレイン連発。大きな盛り上がりを見せる中、いよいよガニメデに到着。そこに広がる新たな世界、誰も見たことのないガニメデを見事に構築した想像力にも脱帽だが、今回それ以上に目を見張ったのは随所で画面上に飛び交うオーディエンスのコメント群。

「Jupiter」では、オーディエンスのコメントが弾幕ばりに画面上に流れてくるのだが、左から右へとただただ流されるわけでなく、それこそ渦巻のように流れてきたり、その弾幕がデザインの一部として「Jupiter」の世界観に合致している衝撃。それはクラウドファンディングでの支援者特典モノリスも同様で、使い方がとにかくオシャレ。

このクリエイティビティは畏敬の念を抱くばかりだが、オーディエンスのコメントはリアルフェスで言えば歓声。それがイベントを作りあげていく、リアルもオンラインも変わらぬところまできたことを意味しているし、さらにはコメント(人々の思い)の集積が世界を作りあげていくというのは電脳世界の局地であり、某アニメさながら。思わず少佐の名言の数々が次々に頭をよぎったが、「Jupiter A VIRTUAL JOURNEY」の中では近い未来には……なんていろいろ期待してしまう。

そして、DJ AKiに続くはキッド・ドラマ。超ディープなサウンドはこれまでの「Jupiter」にはなかったが、どうして映像とのマリアージュがまたフレッシュで気持ちよく、ラストを飾るはヴァーチャルヒューマンアーティストYELLOCK。彼もまたこれまでとは一味違う、なんとも厳かな出だしで、しかも降り立つは虚無。ただただグレーの世界で1人プレイする中、突如現れるは巨大なヴァーチャルヒューマン。まるで進撃のYELLOCK。

ビートを刻むYELLOCKと完全シンクロするその様は圧巻で、そんなモノトーンの世界にもコメントが舞い散り、それがまた美しいという恐れ入る仕上がりに。そして、最後は「Jupiter」ではお馴染みの崩壊したヴァーチャル渋谷を舞台にYELLOCKが魂のプレイ。エヴァファン歓喜の宇多田ヒカルのマッシュアップもありつつ、いよいよフィナーレへと思ったら、音が止まり、静寂に包まれるヴァーチャル渋谷。そこに東京都知事のコメントがループされ緊急事態宣言下、つまり現実を彷彿とさせるも、それを払拭、渋谷に光をもたらしたのはオーディエンスのスタンプというなんとも乙な、世界もこうあるべきと希望を照らす演出に思わず胸熱。そこに寄り添うDJ AKi & YELLOCKの“ISOLATED HUMANISM”も素晴らしく、とても感動的なフィナーレに。

かつて少佐はリアリストに対し、「現実逃避をロマンチストと呼ぶならね」と言っていたけれど、「Jupiter」を体感していると現実逃避しているわけではないけれどロマンチストもいいもので、この世界にこそ大きなロマンを感じるところ。コロナで高まるヴァーチャルの気運が果たしてどうなっていくのか、より楽しみになった。

ちなみに、YELLOCKは待望のファーストアルバムのリリースを予定しているそうなので要チェックを! そして、次回「Jupiter」は秋に開催予定だとか。

「Jupiter A VIRTUAL JOURNEY」

https://A-VIRTUAL-JOURNEY.com/