レッドブルが約1ヵ月にわたって東京をジャックする『レッドブル・ミュージック・フェスティバル東京2017』、そのフィナーレを飾るゲーム音楽×電子音楽イベント『DIGGIN’ IN THE CARTS』が11月17日(金)に行われる。
“Dig(ディグ)”、それ即ち“掘る”こと。とりわけ、かつてDJたちはレコードをディグり、自らの武器を装備していた。しかし、それは決してDJだけの言葉ではなく、あらゆるものを掘る=見つけることであり、ゲームのCARTS(カセット)も同じこと。
いわゆるゲーム機が誕生したのは1970年代。それから今に至るには恐ろしいほどの進化を遂げているが、それはゲーム音楽も同じ。他の音楽ジャンル同様大きく変化している。
ゲームが誕生した70年代はまだまだ音色も少ない中で、当時日本でもブームとなっていたテクノポップと出会う。電子を介するもの同士、それはえてして自然な流れだった。
そして、80年代にはファミリーコンピュータ(ファミコン)の勃興とともに、ゲーム音楽も多様化。ゲームの一部としてのものから、ゲーム音楽単体の市場さえ生まれたほど。そこからは拡大の一途を辿り、1990年代にはいよいよ本格的にゲームから巣立ち、ひとつのカルチャーに。
ゲーム音楽オンリーのイベントが開催され、クラブにおいても『東京ゲーマーズナイト』をはじめとするパーティーがファンを魅了していた。そして、その流れを後押ししたのが「beatmania」をはじめとする音ゲーであり、ゲーム音楽はますます大きくなっていく。
また、それは同じデジタルの流れを汲むダンスミュージックとの接点も随所に見ることができる。機械を駆使した音楽というひとつの前提を共有しながら、聴くものに享楽感や哀愁を与えるという意味では、やはり両者は近しい。だからこそクラブでパーティーが行なわれ、現在でも秋葉原を中心としたゲーム音楽とダンスミュージックの蜜月を見ることができる。
しかも、ただ近しいだけではなく、ゲーム音楽はダンスミュージックのアーティストたちに大きな影響を与えてきた。大のゲーム好きとしても知られるフライング・ロータスを筆頭に、ディジー・ラスカルやコード9など、その名を挙げれば枚挙に暇がない。
そんなゲーム音楽の歴史を追いかけたドキュメンタリーが、2014年にレッドブル・ミュージック・アカデミーによって制作されている。その名も「DIGGIN’ IN THE CARTS」。そこでは日本のゲーム音楽がいかに進化し、そのクリエイターたちがどれほど世界のカルチャーに影響を与えてきたのか、6つのエピソードを通じて紹介している。
それから3年、「DIGGIN’ IN THE CARTS」はライヴイベントと形を変え、『レッドブル・ミュージック・ フェスティバル 東京 2017』で開催される。しかも、本祭の大トリとして。
今回はゲーム音楽の本流チップチューンの名匠、『スーパーマリオランド』や『MOTHER2』の楽曲を手掛けたChip Tanakaに加え、Hally、そしてOsamu Satoが出演。そして前述のフライング・ロータスの感性をも刺激したゲームミュージックコンポーザーの大家Yuzo Koshiro x Motohiro Kawashimaがヘッドライナーを務め、彼らの代表作「ベア・ナックル」のサウンドトラックを中心とした国内初のライヴを実施。
「ベア・ナックル」シリーズはそれこそデトロイトテクノとシカゴハウスの流れを汲むものであり、あらゆるゲーム音楽が溢れる今なおフレッシュな感覚を覚えさせてくれるはずだ。
さらに、今回は世界にその名を轟かす日本テクノ界の至宝KEN ISHIIも参戦。最もゲーム音楽との所縁の深いテクノ、その日本代表は過去に『Rez』や『ルミナス』といったゲーム音楽を手掛けているが、今回は国内初となる90年代テクノセットを披露。グラフィックデザイナー集団 MMM が制作するVJセットと合わせ、ゲーム音楽が隆盛を極めた90年代にタイムトリップさせる。
さらにはHyper dub主宰のコード9も来日し、グラフィックデザイナーでミュージシャンのKonx-om-Paxによるオーディオビジュアルショーと並行して日本のゲームに影響を受けたサウンドをパフォーマンスする。
なお、これを皮切りに「DIGGIN’ IN THE CARTS」は世界へとツアー展開していくそうだが、その先駆けが日本で行なわれるのは嬉しい限り。もはやゲームが片手におさまり日常化し、VRさえもその範疇に収めつつある今、そのマテリアルをリアルに体験することこそ真なるゲーマーの極みというもの。
この日ばかりはゲームの仮想空間を飛び出し、現実でゲーム音楽を全身に浴び、踊ろうではないか。なにせ、“電子”で“遊”び、“戯”れる祭なのだから。
EVENT INFORMATION
DIGGIN' IN THE CARTS 電子遊戯音楽祭
2017.11.17 Fri
OPEN/START 19:00/19:30
LIQUIDROOM(Ebisu)
ADV ¥3,500 DOOR ¥4,500
Kode9 x Koji Morimoto AV, Chip Tanaka, Ken Ishii Presents Neo-Tokyo Techno (’90's Techno Set) Visuals by MMM, OSAMU SATO Presents LSD REVAMPED(LIVE) & SPECIAL VJ: TEAM LSD, Quarta 330, Yuzo Koshiro x Motohiro Kawashima Visuals by Konx-Om-Pax, Carpainter (Live Set), hally Presents HALLY COLLECTIVES (hally, Saitone, ヨナオケイシ, 細井聡司, 三宅優, 杉山圭一,Rolling Uchizawa), GONNO presents beyond the chip sounds (Special DJ SET)