僕はいまだにどこまで川島くんがこの作品を理解しているのか……好きなのか、嫌いなのか、それさえも計れないし、本当にわからない。
ただ、そのとき川島くんが曲を聴いて“よかったです”と一言言ってくれて。そこで何かひとつ解決したかなと思います。
——その完成した曲がいよいよ世に届くわけですが。
仕方がないことだと思うけど、今回の作品はいろいろなバイアスがかかった状態で聴くことになると思うんです。最後の作品でもあるわけで。
だから、この作品の真価がわかるのは数年後かもしれないし、人によっては数十年後かもしれない。
でも、そのときに確実に機能する音楽、その日が来たときにこれが力を持った音楽だということがきっとわかると思うんです。だから、末永く大事にしてほしいですね。
——今作の中で気になったのが4曲目の“NARCOSIS”。このタイトルは、日本語にすると“昏睡”。それがなぜ最後の最後に当てはめられたのかなと。
もともと川島くんはこのタイトルを3曲目の“FLARE”に付けていたんです。でも、この曲はもっと晴れやかで、天にも舞うようなポジティブなフィーリングがあるんじゃないかと川島くんに話し、“FLARE”になったんですけど、そのとき僕は“NARCOSIS”というタイトルの曲を新たに作ろうと思ったんです。
この言葉をテーマに自分が描くイメージ、それは決してネガティブなことじゃない。
始まったものが終わり、また始まりを迎える、その最終局面にNARCOSISがあると思ったんです。そして、この曲で作品を締めくくろうと。
——なるほど。
NARCOSIS(=昏睡)という言葉はドキッとしてしまう言葉かもしれないけど、それは今の川島くんの状態をイメージしてしまっているから。
この曲が、それこそ普遍的に聴かれるものだとしたら、それはとても心穏やかな状態だと思うし、次に何かをするための準備時間と受け取る人もいるんじゃないかと思ったんです。
僕はそういった晴れやかな気持ちでこの曲を作りました。
——これはBBSなりの賛美歌なのかなと思ったのですが。
教会音楽のような神聖な感じは、自然とこうなっちゃったんです。
純粋にアーティスト活動をしていると人生自体が作品に影響を与える、それは避けられないんだと改めて思いましたね。
僕は数多いるアーティストの中でも、こういった局面で作品を作ることができた本当に稀な、そして幸運なアーティストだと思うんです。