世界最高峰のダンスミュージックフェスティバル『ULTRA MUSIC FESTIVAL』がついに日本に初上陸。
その模様は、すでに各メディアで大きく伝えられてきたが、本誌ではまた別の角度から『ULTRA JAPAN 2014』をレポート。
本祭が大成功を収めた理由とは……。
2013年、『ULTRA JAPAN 2014』の開催がアナウンスされると、それは瞬く間に日本列島を飲み込んだ。SNS や動画サイトでは、本国マイアミをはじめ、ワールドワイドに繰り広げられる『ULTRA MUSIC FESTIVAL』(以下UMF)のアフタームービーが溢れ返り、小出しにアップされる本祭のラインナップに日本のダンスラバーたちは一喜一憂した。
さらには本祭の開催が近づくにつれ、音楽面のみならずファッションメディアはこぞってフェスファッションの特集を展開。世界各地の『UMF』で流行したフラワークラウンや、各国の国旗を取り入れたファッション、ビビッドなカラーリングのペアコーディネイトなどが拡散されたのだ。
『ULTRA JAPAN』はもはやダンスミュージックの枠組を超え、新たなカルチャーとして広がり、本邦でもこれまでにない異様なほどの盛り上がりを見せた。
そして、いよいよ開催当日。夢にまでみたあの壮大かつ豪華な舞台を目前にし、集まった多くのオーディエンスはそれだけで歓喜。そして、DJ MAG誌のDJランキングでも上位に位置する世界的スーパースターたちのプレイに昇天したのだ。
結果的に大成功を収めた『ULTRA JAPAN』。ここではその実直なレポート、というわけではなく、このムーブメントが日本に帰結したその背景に迫ってみたい。
まず『UMF』はEDMというメジャーフィールドをも席巻する最新音楽潮流における1つのメルクマールであると同時に、新たな世界的ビジネスの最新形態&賜物であるだろう。ジャンルのセクショナリズムを超え、ダンスミュージック史上最大とも言えるビッグバンとなったEDMは、音楽の販売以上に興行における成功が大きい。
つまり、フェスという大規模イベントが1つのキーとなっている。
世界では数年前からEDMが隆盛していたが、日本でなかなか広まらなかったのはそれが大きな理由の1つである。しかし、この『UMF』の上陸により、それは解消(つまりここからさらなるEDMの波が日本で巻き起こる!)。
そして、それは同時にアメリカのショウビジネスという黒船の来航だと言えるだろう。少なからず、これまで日本でも『ULTRA JAPAN』クラスの動員数のフェスならば数多くあった。しかし、それらはあくまで日本方式。今回はその仕組み、内情がまったくといっていいほど違っていたのだ。
今回の『ULTRA JAPAN』は、日本の既存のフェスと違い、音楽ファン以外の幅広い層をも獲得した。
EDMはダンスミュージックとは無縁の一般層へのリーチを可能にし、ファッションをも巻き込むことでそれはより拡大。
さらには富裕層を取り込んだことも大きい。VIP、VVIPといった数十万もするチケットが今回はすぐさま完売するなど、海外ばりに本物のセレブたちが流入してきたのである。
これはまさにアメリカンビジネス的発想。
そして映像から演出、ライティングにデコレーション、全てにおいて世界トップのクオリティで、視覚、聴覚、そして肉体を一度に刺激するパッケージされたステージを作り上げた。ハードウェルやアクスウェル・イングロッソなど、彼らは世界で幾度となく魅せてきた、音楽に映像、演出がすべて1つになった完成形のパフォーマンスをここ日本でも披露したのだ。
それは悪いことではない。初見ならば当然感動するし、完成品は何度見ても素晴らしいのだから。『ULTRA JAPAN』は、あらゆる面において世界的ショウビジネスの奔流を日本に伝えたのである。
しかしながら、全てが良かったかと言えばそうは言い切れない。東京というセンシティブな街は海外と同じようにはいかないもので、例えば音の問題。フェス、それもEDM主導で、なおかつあれだけド派手な演出ならば爆音であることが必要だが、それができていたかと言えば……。
その他にも大なり小なり問題はある。しかし、今回は初開催。諸問題は次回の課題として主催者に受け止めてもらいつつ、このビッグウェーブが一過性のものにならないよう、さらなる盛り上がりを期待したい。
いずれにせよ、『ULTRA JAPAN』は、2014 年のダンスミュージックシーンにおいて最大のハイライトであったことは間違いない。
最後に補足として、本文中で触れられなかった『ULTRA JAPAN』を盛り上げたアクトたちに焦点を置いて、それぞれのハイライトを述べることで結びとしよう。
Afrojack
“Ten Feet Tall”に始まり、“Freedom”、“Turn Up The Speakers”、“Dynamite”と、
まるでライヴのごとく自身のヒット曲を連発したアフロジャック。
会場には、そんな彼のステージを見て涙するオーディエンスも。
Hardwell
2013、14年とDJ MAG誌のDJランキングトップに輝いたハードウェルは初日の大トリを担当。
世界一の名に恥じないプレイで終始オーディエンスを圧倒。
アンコールでは自身の一大アンセム“Spaceman”をプレイし、会場は熱狂の渦に。
Axwell Λ Ingrosso
本祭のラストを飾ったのはアクスウェル・イングロッソ。
彼らだけのためにステージも一変し、音と映像がリンクした驚愕のパフォーマンスを披露。
最後はスウェディッシュ・ハウス・マフィアの“Don’t You Worry Child”で大円団。
Alesso
EDM界随一、感涙必死の美メロ・マスター、アレッソ。
そんな彼の代表曲“Sweet Escape”、“Scars”、“Heroes”がかかるとオーディエンスは大合唱。
既存のイベントでは味わえない、みんなで歌って踊る一体感は鳥肌もの。
Steve Angello
元スウェディッシュ・ハウス・マフィア(SHM)のメンバー、スティーブ・アンジェロは初日に登場。
主宰レーベルSIZE RECORDSからの楽曲を中心とした貫禄のプレイで会場を沸かせた。
Martin Garrix
いまや飛ぶ鳥落とす勢いのマーティン・ギャリックスは初来日。
“Tremor”や“Turn Up The Speakers”、そして代表曲“Animals”で会場は大揺れ。
EDM隆盛の勢いそのままに、シーンの若き覇者の実力を見せつけた。