昨年、日本に初上陸した『ULTRA JAPAN』。
2回目となる今回、前回を上回る成功を収め、それはもはやムーブメントではなく1つのカルチャーとなったと言えるだろう。
そんな『ULTRA JAPAN』について、ここではビジネス、ファッション、そしてシーンにもたらした功績……、その他様々な面からこのカルチャーについて考えてみたい。

もはやただのムーブメントにとどまらない
新たなビジネスモデルとしての機能性

まず集客の面で見てみると、昨年と同様に今年も前売りチケットは争奪戦。
そして、動員数も昨年は2日間で4万2000人(公表)だったところ、今年は3日間で9万人(公表)と、1日あたりの数も増えている。

そこには昨年の成功があり、なおかつ日本でも数多くのダンスミュージック・フェスが開催されたことで一般的な認知度が高まったことも大きいだろう。
つまり、確実に日本の土壌にフェスティバル文化が根付いてきたと言える。

そして、『ULTRA JAPAN』の経済波及効果も昨年の78億円から95億円にまであがったという数字が算出されている。そこには参加者たちが事前にファッションをはじめとする関連グッズを購入していたことはもちろん、移動や宿泊に関する費用など様々だが、それ以上に一流企業が続々参入してきたことが大きい。

すでに世界的にはハイブランドの広告塔をEDMのトップDJたちがつとめたりと、海外ではスタンダードだったことが、日本でも起こっている。
実際、最近ではテレビCMにEDMが使われるようになり、ファイナンス系の一流企業やテレビ局までもがEDMフェスティバルをサポート。
つまりマーケットとして、今最もホットなユースカルチャーとして認められた証でもあるのだ。
その先駆的存在が『ULTRA JAPAN』であり、それがEDM×フェスティバルという、それまで日本になかったビジネスモデルを確立したのだ。

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ファッションとの親和性の拡大
よりオシャレになった来場者たち

では、参加者たちの様子はどうだったのか。
彼らはフェスで音楽以外、特にファッション面における楽しみを見いだしている。

かつて、フェスと言えば山間部で開催されていただけに、服装も機能性を重視せねばならなかったが、『ULTRA JAPAN』をはじめとする昨今のフェスは開催場所がアクセス良好な首都圏。
それだけに、各々が思い思いのファッションを楽しむことができ、ひいてはフェス・ファッションなる新たなモードを生み出した。

事実、昨年はフラワークラウンやビビッドなコーディネイトなど、フェスにおける流行を多々感じた。が、それも前回の話。
今年は早くもトレンドが変化し、より洗練された都会的なファッションを多く見かけた。

具体的に言えば、主流は70年代のボヘミアン・ファッション。そしてスポーツ・スタイルにストリート系。
昨年までの派手一辺倒のスタイルから明らかに変化したその傾向は、これまでになくオシャレなものだったと思う。

そういったファッション面における他フェスとの差別化、そして先鋭化の部分で言えば、海外の最先端の流れを日本に持ち込むことは、『ULTRA JAPAN』主催者側の狙いのひとつだったはずだ。
そのために今回は、前回終了後からファッション系のメディアと手を組み着々と情報を露出。
そして、本祭の開催が近づくにつれ最新のフェス・ファッションのお手本となるコーディネイトを続々とリリース。
さらに、アパレル・ブランドや著名なスタイリストも巻き込み、音楽だけではない、フェスにおける次のフェイズの楽しみ方をプレゼンテーションしてきた。

その結果、参加者たちがよりオシャレになっていたことに繋がった。

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脱EDM的な取り組みと同時に
EDM新時代に向けて

そして音楽面。
昨年との違いはRESISTANCEの存在だ。

EDM色の強かった感のある前回に対して、今年はアンダーグラウンドなテクノ/ハウスを推進する新たなステージの設立が大きな意味を持っていた。
それは、EDMしか知らない世代に新たな選択肢を与え、それまで知らなかった世界を体感させるという意味でも重要だった。

流行だけを追うのではなく、ダンスミュージックという文化を時間と場所を超え繋ぐ、それは結果として『ULTRA』というブランドをより高め、広げることになったと思う。

また、今回はEDM自体に対するアプローチも前回とは違っていた。
それは世界的なシーンとリンクしているところでもあり、メジャー・レイザー&DJスネイク“Lean On (feat. MØ)”やカルビン・ハリス&ディサイプルズ“How Deep Is Your Love”、さらにはジャックU“Where Are Ü Now”など、本流EDMとは言えない楽曲を多くのDJたちがプレイしていたことからもわかる。

近年勢いを増すトワークやトラップ的な趣向、そしてディープハウスへの憧憬など、EDM自体が変化している。
そんな流れを汲み取る感度の高さも光っていたと思う。

そして、音楽性の変化がありつつもメインステージでは映像や演出、ライティングなど、全てが一体となって観客を圧倒するステージ性も格段に増し、より開放的で、享楽的で、刺激的な空間が生まれていた。

その一方で、RESISTANCEにおける密度の濃い世界。
リアクション重視のメインステージに対し、ある種の旅、壮大な物語を描かんとしたRESISTANCE。
その対比も実に興味深いものがあった。

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参加者たちを惹き付けた
メインステージのテーマ性

次に、メインステージにおける人選を見てみると、今回はより幅広くもわかりやすい人選だったと言える。

初日は帝王アーミン・ヴァン・ブーレンと日本での知名度も高いアフロジャック、そしてEDMから逸脱したところでのロビン・シュルツ。
さらには、日本代表としてDJ EMMAの出演も新鮮だった。

2日目にはヴァイストーンやニッキー・ロメロといったEDMの流れもありつつ、マイアにカーネイジ、極めつけはDJスネイクとスクリレックスというある種アウトローな人選が秀逸だった。

そして、最終日には実力者ダッシュ・ベルリンからの前回大好評だったアレッソにスーパースター:デヴィッド・ゲッタと、なんとも趣のあるラインナップ(付け加えるなら、日本初登場となったアンソロも素晴らしかった。彼のように日本未上陸のDJを発見できることも僥倖だ)。

EDMの今を体感した初日、亜流で魅せた2日目、そして最終日はお祭感満載で大円団。
この構図、各日テーマが感じられたことは、参加者の遊び方にさらなる刺激を与えたことだろう。

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参加者をエディケイトしていく
『ULTRA』の未来を見据えたアプローチ

昨年、世界最高峰のフェスが鳴り物入りで上陸し、EDMという大波とともに既存のダンスミュージック・シーンだけでなく、その他の層にまでリーチ。『ULTRA JAPAN』は1つのムーブメントを作りあげた。

さらには、世界規模で展開されるショービジネスの最新形態を持ち込み、本邦のエンターテインメント業界に一石を投じた。

そして今回、そんな『ULTRA JAPAN』が継続的に開催され、成功を収めたことで、それが一時的なものではないことを証明した。
しかも、前述したファッションとの連携で世界のモードを啓蒙し、前回以上に多種多様な音楽性を導入するなど、あらゆる面で参加者をエディケイトしていた。

そうすることで、彼らもフェスや音楽に対して、より深く接することになるはずだ。
いわば未来をも見据えたアプローチ。それは、今後の『ULTRA JAPAN』の展開に大きく関係してくることだろう。

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世界と戦うために
いま日本人DJたちに必要なことは

一方で、日本のダンスミュージック・シーンにおける世界との壁も浮き彫りになった感もある。

この2回の開催で現行のシーン(EDM)では、世界的ヒット曲がないと勝負できないことがわかった。
つまり、ビッグ・フェスにおけるメインは、ある種EDMのプロデューサー・ショーでもある。

彼らは世界的ヒット曲があり、なおかつ映像、演出面においても観客を楽しませる様々なギミックを常に打ち出している。
それはもはやメジャーにおけるライヴ、あるいはそれ以上のものかもしれない。

そんな海外勢に対して、日本のアーティストはどう戦っていくべきなのか。
正直、日本人DJのスキルは高い。ミックスやスクラッチなど、どれをとっても世界標準にある。ただ、それだけでは世界と戦うのは困難だ。

過去2回の『ULTRA JAPAN』でも随所に見えたが、VJや照明、その他ステージスタッフを含めた“魅せる”という部分での強化。それは、海外アーティストも行っている“チーム化”、それがより一層重要だ。
最新の映像技術を駆使することはもちろん、プリミティブなところではシンガーやプレイヤーを招聘するなど、やり方は様々。

ただ、ことEDMシーンにおいては人の曲をかけているだけでは世界にいけないのではないか、そんな思いが頭をよぎったことは伝えておきたい。
全てを達成するにはまだまだハードルはたくさんある。しかし、日本人アーティストが『ULTRA JAPAN』を経て、いつか世界の『ULTRA』を熱狂させる日が来ることを楽しみに待ちたい。