直前に迫るGW。今年は例年以上に全国各地でフェスやイベントが開催されるなか、特にダンスミュージック・ファンにはたまらないスポットがある。
それは、東京の海の玄関口でもある晴海客船ターミナル。
そこでは5月3日(火)、4日(水)、5日(木)と連日フェスが開催!
3日にはイビサ屈指の世界的人気クラブPACHAの上陸に先駆け開催される『PACHA FESTIVAL TOKYO 2016 KICK OFF』。
4日には昨年大成功を収めた至極のアンダーグラウンド・カーニバル『CIRCOLOCO JAPAN 2016』。
そして5日には本邦初開催となるヒップホップの祭典『PUBLIC LABO BLOCK PARTY』。
この強烈な3連戦を前に、FLOORでは各フェスを手掛ける主催者たち、『PACHA FESTIVAL TOKYO 2016 KICK OFF』から高田浩介氏、『CIRCOLOCO JAPAN 2016』からAKIRA氏、『PUBLIC LABO BLOCK PARTY』から藤田太郎氏。DJ、アーティストではなく、あくまで裏方として日本のシーンを牽引してきた歴戦の猛者たちに集まってもらい、本誌編集長:芹澤直樹とともに鼎談を敢行。
前編となる今回は、それぞれのフェスの魅力を語り合いつつ、後編では仕掛る側の視点から現行シーン、加熱するフェス・ムーヴメントをえぐっていきたい。
普段あまり語られることのないフェスの裏側、そして日本のシーンの現状がここに! 必見!
人気クラブからビッグフェスまで
日本のシーンを陰で支える男たちの華麗なる歴史
FLOOR編集長:芹澤直樹(以下、芹澤)「まずはじめにみなさんの自己紹介から。
これまでプロデュースしたイベントやフェス、クラブのこと、あわせてご自身のことを教えてください」
藤田太郎(以下、太郎)「過去に麻布十番でWAREHOUSE702というクラブのプロデュースを9年ぐらいやってました。当時は、それこそPACHAのパーティや最初の『CIRCOLOCO JAPAN』を開催したり」
芹澤「WAREHOUSE702は、海外のイベントを日本に持ち込むのがかなり早かったですよね」
太郎「そうだね。『Bugged Out』や『SecretSundaze』、『Freerange』だったり。そういったものがすごく好きだったんですよ。
その後、VILLAGEという今回のイベント(『PUBLIC LABO BLOCK PARTY』)のルーツになるようなヒップホップ系のクラブを1年やって、最近ではELE TOKYOをプロデュースしました。
野外だと、AKIRAさんと一緒に『BIG BEACH FESTIVAL』を5年やらせていただいたり」
AKIRA「僕は1998年に帰国して『Solstice』というトランスのイベントを長年やって、その流れから『BIG BEACH』、そして去年は『Sensation』をやったり」
芹澤「『Solstice』はスゴかったですよね。00年代にトランスの一大ムーブメントを作りましたが、あのパーティはそもそもどういった経緯でスタートしたんですか?」
AKIRA「カナダでパートナーのchikaと出会い、98年に帰国したら『EQUINOX』や『MATSURI』といった僕らの遊び場だったパーティが続々となくなってしまったんですよ。だから、自分たちでパーティを始めた。それがスタートですね」
芹澤「確か、六本木にあったクラブ:GEOIDが最初でしたよね。その後、2000年には富士山麓でフェスもやって」
AKIRA「あの時は3000人ぐらいの(集客)予定だったのが、最終的に6000人ぐらい集まっちゃって。
イスラエル人を筆頭にみんなエントランスでお金払わないで山を超えてきたり(笑)」
芹澤「そんなトランスのムーブメントの後に『BIG BEACH』。
そして昨年は『Sensation』。これもまた盛り上がりましたが、どうやって日本に持ってきたんですか?」
AKIRA「イビサにいたときのネットワークで、数年前から話はあったんですよ。ただ『Sensation』の存在は知っていたんだけど当時はそこまで興味がなくて(笑)。まわりでもあまり反応が薄かったし。
その後、15周年のときに改めて日本開催の打診があり、今度はまわりも興味を示してきたのでやろうかなと」
芹澤「その背景には『ULTRA JAPAN』を筆頭に日本でのEDMの隆盛がありますよね。
では次に高田浩介さんお願いします」
高田浩介(以下、浩介)「僕は2002年のオープンから2015年まで、新木場ageHaに携わっていました。
なので、クラブ以外の経験がなく、お二方と違って今回の『PACHA FESTIVAL』は僕自身初のフェスになります」
芹澤「ageHaではどんな仕事を?」
浩介「最初はポーター、それこそペーペーでした(笑)。
その後パーティのディレクションをやらせてもらうようになり、ハコ貸しの担当もやったり、最後はすべてやってましたね(笑)。
ただ、基本的にはイベントのディレクションが主です。最終的にはゼネラルマネージャーを務めてました」
芹澤「ageHaで13年間、数々のパーティを手掛けられてきたわけですが、噂によると動員数が最も多かったのはAKIRAさんのパーティだったと聞きましたが」
浩介「そうなんですよ。あれは相当スゴかったですね」
AKIRA「あのときは、本当にご迷惑おかけしました……」
浩介「当時、過去にない人数のお客さんが詰めかけましたから。今ならある程度流れがわかるのでさばけると思うんですけど、あのときは未知の世界。スタッフもみんな怖かったと思います(笑)」
イビサが誇る世界的人気クラブPACHAが日本上陸!
本家の魅力をレジデントたちとともに提示
芹澤「様々な経歴を持つみなさんですが、GWには同じ晴海客船ターミナルを舞台に5月3、4、5日と各々フェスを開催されるんですよね。
ここからはそれぞれのフェスの魅力を伺いたいと思いますが、まずは先陣をきって3日に開催する『PACHA FESTIVAL TOKYO 2016 KICK OFF』から」
浩介「コンセプトは、イビサの世界的人気クラブPACHAを日本に持ってくる、それに尽きますね」
芹澤「浩介さんにとってPACHAとは?」
浩介「PACHAは今、世界で20店舗近くのフランチャイズがありますが、なかでもイビサはその始まりであり、すでに半世紀近くも営業しているまさに老舗です」
芹澤「以前から日本にも店ができるという話はありましたよね」
浩介「現状アジアには進出してきてるんですよ。
1月にマカオに店舗がオープンして、その後もプロジェクトが進んでるみたいです。
PACHAもアジアマーケットを狙ってきているんじゃないでしょうか。ようやく日本でもお客さんが見込めるようになったということですね」
芹澤「今回のフェスはどんな形になるのでしょう?」
浩介「GWはPACHAが上陸するキックオフになります。なので、まずはPACHAを体験してほしい。
フェスとクラブの違いもありますが、ラインナップはもちろん、ダンサーも現地から招聘して可能な限り本家の魅力を伝えたいと思ってます」
芹澤「ラインナップは、第一弾で現地のレジデントを務めるマーティン・ソルベグが決定し、その後もベースメント・ジャックスをはじめとするPACHAに出演経験のあるアーティストが名を連ねました。
まさにPACHAの世界観を日本に持って来るという感じですね」
浩介「集客を考えればEDMも重要ですが、PACHAを体験するという意味ではやはりレジデントが必要不可欠だという話に落ち着いて。
そこからラインナップの選定が始まったんです」
芹澤「PACHAのレジデントには、デヴィッド・ゲッタがいる一方で、マセオ・ プレックスやソロモンもいたり。幅広いジャンルの人気アーティストがいますよね。そのバランスは?」
浩介「翌日に開催される『CIRCOLOCO JAPAN』に比べるとポップですが、PACHAはメジャーとアンダーグラウンド双方の魅力を兼ね備えているので、幅広い層の方々が楽しめる。海外のディスコのようなイメージですね」
アンダーグラウンドの極地から届けられる至高のフェス
本場『CIRCOLOCO』を彷彿させる胸熱ラインナップが実現!
芹澤「今話にもあがりました『CIRCOLOCO JAPAN』は5月4日に開催。
こちらはどんなイベントになりそうですか?」
AKIRA「『CIRCOLOCO』もPACHAと同じイビサで生まれたパーティですが、やはり現地のアンダーグラウンド感をそのまま持ってこれればと思ってます。
去年幕張でスタートしたんですが狙い通り音好きの人たちが集まった。それは今回も同じようになると思います。
もともと僕らは長年アンダーグラウンドでトランスをやってきて、音楽的にはそこに遊びに来ていた人たちも入り込めるような、ちょっとトランシーなハウスやテクノが軸になります。『CIRCOLOCO』を開催しているDC10自体、イビサでも特に音にこだわるクラブなので、僕らも音にはこだわりたいところですね」
芹澤「すでに発表されたラインナップはセス・トロクスラーとマルチネス・ブラザーズ。
アンダーグラウンド・ファン御用達のRAやmixmagのランキングの常連を揃えてきましたね」
AKIRA「本国の『CIRCOLOCO』の希望としては、今年日本でやるならこの2人という意向が強くて。
『CIRCOLOCO』に関しては完全にブランディングがしっかりしていて、基本的に本国の意向が強いんですよ(笑)。
でも、彼らがフックアップしたアーティストはDC10を卒業した後も本当に活躍している人ばかりで。その審美眼は本当にスゴい」
芹澤「ジェイミー・ジョーンズやダミアン・ラザラスもそうですよね。元を辿るとDC10に繋がる。ただ、その中で今回のこの組み合わせは、今考えられる限り最高の組み合わせだと思います」
各都市で進化するヒップホップ、そのカルチャーがクロスオーバーしたオリジナル・フェス『PUBLIC LABO BLOCK PARTY』が始動
芹澤「一風変わって『PUBLIC LABO BLOCK PARTY』。こちらは?」
太郎「基本的にはヒップホップのフェスですね。世界中からアーティストを集めているのは他と変わらないんですけど、僕らは既存のパーティを海外から持って来るのではなくあくまでオリジナル。
それだけに日本人がチョイスするであろう世界を舞台に活躍するヒップホップのアーティストをセレクトしていて。
今回が一回目になるんですが、ヒップホップの中でもファッション性も意識したアーティストを選んでいます」
芹澤「ファッション性という意味では様々なアーティストがいると思いますが、ヘッドライナーにAトラック、YG、スケプタを据えた理由は?」
太郎「日本、そしてアメリカもそうですが、ヒップホップって街ごとにセパレイトされていますよね。日本で言えば六本木、渋谷、横浜系のように。
そこは4つ打ちと違った、地域性を伴って発展する独自の文化だと思うんです。
そういったこともふまえ、日本にはヒップホップのフェスがないっていうシンプルな思いからスタートしました。
ただ、実際フェスをやるにしても現実的にギャラや制作費の問題があり、ある程度の規模感でないと面白いアーティストを呼ぶことができない。そんな中で、全ての地域のシーンに刺さるものをと考えたときに挙がったのが彼らだったんです。
Aトラックはもともとカニエ(ウエスト)のバックDJから入り、ディプロやスクリレックスら同様にメジャーにも打ち出し、それでいて一番リアルなDJでもある。
その他、YGに関してはコンプトン、ちょうど映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』もあったし、ウエストコーストのファン層も取り込みたかった。
そしてなんといってもここ数年カニエ、ドレイクらが夢中になってるUKグライムのシーンからSKEPTAの出演が決定したのも非常に大きい、いまや全米がグライムに注目してるといっても過言じゃないですし、そうやっていろいろな人種が集まって起こる科学反応を楽しんでもらう、それがこのフェスのコンセプトでもあって」
芹澤「地域性をクロスオーバーさせていくという発想は今までなかったですね」
太郎「ひとつに染まりすぎてしまうと閉鎖的になりがち。それはいい部分もあるけど、悪い部分もあるんですよ。
今回のようにフェスを仕掛けるにあたっては、そんなに大きくないパイの中でたくさんのゾーンに刺さるように構築しないと成立しない。単純にヒップホップと言ってもより間口の広い形でいきたいなと」
芹澤「とはいえ、今回は2500人のみの限定開催ですよね?」
太郎「チケットを早く買ってほしいから(笑)。というのもありますが、基本的には今回発信する角度に興味もってくれた人が人数限定という環境の中でノイズなくパーティできる空間を提供したいと思っています。
ヒップホップって、実は前売りの文化が一番ないジャンルだと思うんです。最もメジャーに近く、ライヴの文化も存在するんだけど、特にクラブシーンはチケットを買う文化があまりない。
というのもあってまず初回は好きな人にチケット買って集まってもらい体感してもらって、来年に向けて情報を発信してもらえたらいいなと思ってます。
まずはやってみないとね(笑)」
芹澤「人数を限定することでお客さんが心地よく遊べる空間を守れる、という部分もありますね」
太郎「それにヒップホップは野外に対して不慣れな部分もある。それだけに今回お客さんにはいいコンディションで楽しんでもらいたいんです。
PACHAや『CIRCOLOCO』、その他にも『ULTRA』や『SENSATION』のように、海外のブランディングを日本にローカライズするのって結構難しいと思うんです。コントロール不能な部分もあるわけで。
そういう意味では自分たちで作っていく、それはそれで大変だけど好きにできるので楽しいですね……」
後編ではそれぞれのフェスの魅力をより探りつつ、さらには日本のダンスミュージック・シーン、そしてフェスの現状を彼らが語り尽くす。
そこには様々な問題、そして未来への提示も……。
EVENT INFORMATION
『PACHA FESTIVAL TOKYO 2016 KICK OFF』
2016.5.3.TUE
START 11:00
晴海客船ターミナル(Tokyo)
一般チケット¥12,000 VIPチケット¥30,000
MARTIN SOLVEIG, FEDDE LE GRAND, BASEMENT JAXX(DJ SET), KLINGANDE, GORE PERFORMANCE, DAISHI DANCE, TJO, YASUCA, CYBERJAPAN DANCERS
EVENT INFORMATION
『CIRCOLOCO JAPAN 2016』
2016.5.4.WED
START 12:00
晴海客船ターミナルDC10 PARK(Tokyo)
一般チケット¥7,000
SETH TROXLER, THE MARTINEZ BROTHERS, NASTIA, MEES DIERDORP, SATOSHI OTSUKI
EVENT INFORMATION
『PUBLIC LABO BLOCK PARTY』
2016.5.5 THU
OPEN/START 11:00/12:00
晴海客船ターミナル
ADV ¥8,000
A-TRAK, YG, SKEPTA, COZY BOYS, SHINTARO, KINGMCK, ARTHUR YETI