天は二物を……いや、彼のポテンシャルを考えれば、三物も四物も与えてしまった。そう思えてならない天賦の才、キャプテン・マーフィーことフライング・ロータス。 今回の『Brainfeeder 4』では、そのアンビバレントな両名義で2種のライヴを披露。そんな垂涎ものの機会を前に、本誌ではまだまだ謎に包まれたキャプテン・マーフィーについて フライング・ロータスに直撃。その本性に迫る!

「キャプテン・マーフィーは壮大な構想の元に生まれた……と言えたらいいんだけど、そういうわけでもないんだよね。俺は長い間インストの音楽をやってきたから、今度は言葉で表現したいと思って始めただけなんだ。ただ、始めてからが大変でさ……。もともとは自分が楽しむためだけにやってて、曲を人に聴かせるつもりなんてなかったし、正体が自分(フライング・ロータス)だってバラすつもりもなかった。でも、友達にできた曲を聴かせたら、みんな“(世の中に)出しなよ”って言うから発表した、というのが経緯だ。そこから、神話性を持たせたら面白いと思って“正体は誰にもわからない”という打ち出し方をした。今の音楽には謎めいたものや神秘性がないだけに、そういった部分で何か面白いことができたらって思ってね。みんな、自分の名前と顔を売ろうと必死になってるこの時代に、俺はむしろ“正体を明かさないで出しちゃえ”って思ってさ」

—— キャプテン・マーフィーのプロジェクトは、もっと計画的なものだと思ってました。

「フライング・ロータス名義のアルバム『Until the Quiet Comes』を完成させた後、作る作品がなくて、何か適当に曲を作ってみようと思ったのが始まり。じつは、思いつきから自分の創造性を探求しただけなんだ」

——当初匿名性を楽しんでるようにも見えましたが。

「正体はもうバレちゃったけど、最初のころはそれ(匿名性)を楽しんでいたのは確かだよ。周りの目を気にすることなく何でも言いたいことが言えたしね。フライング・ロータスではできないことを思いっきりやって楽しむことができたよ。でも、そこには代償もあって、匿名な以上パフォーマンスができなくてさ。あと、いろんな人と共演するのも難しかったんだ。正体がバレないよう、自分の足跡を消すのに苦労したよ。それが作業に支障をきたしていって、本来あるべき音楽よりも神秘性の方ばかりが話題になってしまった。俺はそれが嫌だったんだ」

——キャプテン・マーフィー名義でのアルバムというのは?

「それは自分でもわからないし、発売時期も特定したくない。まだレーベルとも契約していないし、完成すべき時に完成するよ。前はできるだけ早く出そうと思ってたけど、今はそんなに焦って出す必要はないと思ってる」

——昨年8月にアール・スウェットシャツ、MFドゥーム、サンダーキャットが参加した“Between Villains”が発表され、その後マッドリブやハドソン・モホークなどのトラックも完成しているとの情報もありましたが。

「確かに彼らとは一緒にやったよ。でも最終的にどんな作品になるか、正直自分でもまだわからないんだ。アルバムも製作途中だから、この段階で語れることはないね」

——BRAINFEEDERのレーベル・ショウケースは、日本でも過去3度開催されてきましたが、今回キャプテン・マーフィーとしての出演が実現しました。

「俺も出演することができてうれしいよ。これまでもずっと出たいと思っていたんだけど、他の予定が入っていたり、作品の締切などの関係で叶わなかったんだ」

——2012年末以降、様々な国でライヴを行っていますが、最近はどんなステージを披露しているんですか?

「古い曲から未発表の新曲までやってるね。しかも、バンドを従えてのライヴだ。それは、自分にとってはこれまでとは全く違う形態だからすごく面白いよ。俺は今ライヴを楽しんでるんだ。バンドのメンバーは、基本サンダーキャットのバンドをそのまま使っていて、3人編成のバンドと俺、という編成だ」

——『Brainfeeder 4』のステージでは特別なことをやろうとか、何か考えてます? 言える範囲でいいので教えて下さい。

「バンドメンバーと『ドラゴンボール』の格好をするよ……というのは冗談だけど、何か特別なことをしたいとは思ってる」

——あと、今回はキャプテン・マーフィーとしてだけでなく、フライング・ロータスのライヴもやるんですよね。

「やるよ。しかも、この2つは全く違う内容だ。フライング・ロータスの方は最新のヴィジュアル・ショウをやる予定さ。ほとんど3Dのようなプロジェクションになるよ」

——今回のショウケースは、トータルでどんなものになりそうですか?

「俺は、見に来た人たちが1つ1つのライヴを見た時に、異次元移動したかのような感覚になってもらいたいね。そして、他では聴くことのできない音楽を体感してもらいたい。魂に共鳴するようなものを、目と耳で感じて欲しい。自分たちの生活に欠けている何かをライヴで体感して貰いたいし、そこから刺激を感じ取って貰えたらうれしいよ」

——最後にファンにメッセージを。

「もうすぐ日本に行くよ。頼むから東京で一番美味しいラーメン屋に連れてってくれ。日本に行く目的は2つ。ライヴをやることとラーメンを食べること。頼んだよ!」