今年も2日間で8万人を動員と見事大成功を収めた「EDC Japan 2019」。

開催日の5月11日(土)、12日(日)両日とも天候に恵まれ、オーディエンスも豪華ランナップのめくるめくプレイに気持ちよく踊り、盛り上がることができたはず。そんな本祭に関して、改めて振り返ってみたい。

(c)Ivan Meneses for Insomniac

まず、怒濤の2日間を経て、まっさきに思い浮かんだのは“多様性”、いわゆる昨今話題の“ダイバーシティ”。
3回目となる今年はヒップホップ、ベースミュージックを武器とするHARD、USロス仕込みのテクノ・ハウスが魅力のfactory 93、その2つのチームがステージを監修したことで音楽性は拡大。
とはいえ、ベースミュージックにハウス、テクノはこれまでにもあっただけに、とりわけフレッシュだったのはヒップホップ。

(c)Ivan Meneses for Insomniac

ヒップホップの盛り上がりは言うまでもなく国内外で顕著だけど、今回はその本質・成熟度を垣間見ることができたというか、フェスにおける新たな可能性を感じたというか……このあたりはまた改めて別の記事で紹介するのでお楽しみに。

(c)Alive Coverage for Insomniac

さて、一重に多様性と言ってもジャンルが幅広くなっただけかと言えば、そうではなく、横だけではなく縦にも広がり、見せ方も多角的だったと思う。ジャンルを横とするならば、縦とは時代。つまり、様々な世代のアーティストが登場していたということ。

(c)Keiki-Lani Knudsen for Insomnic

顕著なのは、ポール・ヴァン・ダイク。
今回はティエスト、アーミン・ヴァン・ブーレンとポール、1990年代から2000年代初頭に謳歌したトランスムーブメントの象徴的存在、いわばトランス四天王的存在のうちの3人が出演(あとひとりはフェリー・コーステン)。近年トランスも再燃の兆しというか、ヨーロッパでは常に大人気だけど、この3人が一堂に会するなんてかつては夢にも思わない大事件。
それだけに、往年のファンには垂涎ものだったと思うし、実際ポール・ヴァン・ダイクのときにはフロアの年齢層も高かった気が(昔のアンセム満載だったし)。

その他にも、ジョシュ・ウィンクがいたりなんかして、これら銘打つならばアラフォー・ホイホイ。実力的、バリュー的にラインナップされるのは当然のことだけど、ちょっと足の遠くなった層を再びフェスへと戻さんとする思惑も感じたり、感じなかったり。

かたや初来日となるエクシジョンは、前評判通り破壊的かつエモいプレイが素晴らしかったし(欲を言えば、もっと深い時間に見たかった!)、ジョーズやジョイライドといった実力者たちもそのポテンシャルを十分に発揮し、フェスティバルサウンドの現在進行形を満喫。ナウなフェスならではのアトモスフェアは十分に感じられた。

今や日本でも数多くのダンスミュージックフェスが開催され、海外アーティスト供給過多なところがあるものの、縦と横に交わることでそれを緩和していたように思う。

(c)Graham John Bell for Insomniac

付け加えるならば、DJたちの選曲もここ数年は時代の横断感が著しいというか、それこそひと世代、ふた世代前のアンセムをセットにうまく組み込むのも常套手段に(代表的なのがダフト・パンク“One More Time”だけど、今回はあまり聴くことがなく……)。

今年のラインナップで言えば、アリソン・ワンダーランドもいろいろかけていたし、ペギー・グーなんかもスゴかった。こういった時代の横断感はすごくフレッシュだし、無限大の可能性を感じるところ。

(c)Keiki-Lani Knudsen for Insomnic

また、見せ方という意味では、音楽的にリンクするアーティストをただ並べるのではなく、あらゆるジャンルをパズルのように組み合わせることで、様々な音楽を楽しむと同時に出会いを提供する、フェスならではの醍醐味もたっぷり。

今回はジャンルの幅が広がり、より様々な音楽との出会いを可能とした中で、タイムスケジュールにおいてもそれをより深めようとしていたのでは……。フェスがフェスたる由縁というか、改めてフェスとしての矜持を示していたと思う。

ただ、フェスあるあるだけにいかんともしがたいことだけど、アーミンとスクリレックス、どちらを観るかの究極の選択はやっぱりやるせない気持ちに(どっちも見たかった……)。

(c)Alive Coverage for Insomniac

そんな多様性を感じた一方で、ちょっと面白かったのはアーミンのステージ。
近年、ひとたびアンセムがかかれば大合唱というのはこの手のフェスではもはや当然のことだけど、このときはみんな確実に“Blah Blah Blah”待ち。いつくるかと待ち構えるなか、まさかまさかプレイすることなく「ありがとうございます!」と締めくくらんとするアーミンにちょっとした肩すかし感というか、がっかり感が広がったのはなんともはや。

さすがネット社会、みんなしっかり予習していて、よくも悪くも予定調和的なアンセム至上主義ここに極まれり。ちなみに、その後“Blah Blah Blah”は無事プレイされて大熱狂したことは言うまでもなく。そして、それはスクリレックスのときにも感じたし、メジャー・レイザーやティエストのときも。

(c)Ivan Meneses for Insomniac

あとは、ベースミュージックやトランスはやっぱり盛り上がるなか、スクリレックスがなんともハウスで、本祭終了後にSEL OCTAGON TOKYOで行なわれたアフターパーティに登場したディプロもハウス多め。ここ数年ハウスの再燃は感じるところだけど、この2人がハウスしているのは興味深く、それもいかにもな感じではなく、さすがスクリ&ディプロ一筋縄ではいかないハウス。今後の動向がちょっと楽しみに。

(c)Keiki-Lani Knudsen for Insomniac

その他にもいろいろあったけど、固いこと抜きに楽しめた「EDC Japan 2019」。

ちな、今回フル参加した本誌編集部Sに聞くと、一番印象に残っているのは“ゲーム・オブ・スローンズ”だとか。
なんでもそのテーマ曲を初日はアーミンが(自らのリミックスを)、2日目にはディプロがSEL OCTAGON TOKYOでプレイし、イントロで感極まったそう。

とにもかくにも、オリンピックイヤーの2020年は果たして……「EDC Japan」の今後に期待大!

Main Photo:(c)Ivan Meneses for Insomniac