もはや激流とも言えるような変化の激しいダンスミュージックシーンをサバイブし、見事確固たるポジションを築いた25歳以下の若き才能にフォーカスを当てた特集、U25アーティストファイル。
彼らの存在は、いまはもちろんのこと未来の音楽シーンにとってもその行く末を大きく左右するであろう、まさに逸材ばかり。

彼らはいかにしてそこに辿り着いたのか。その輝かしき軌跡を追うことで、シーンの今を探る。
その第一弾として紹介するのはケイトラナダ、ムラマサ、カイゴの3人。主戦場となるジャンル、フィールドは違えど、間違いなくシーンの第一線をひた走る彼らが歩んできたその道筋とは。そして、果たして何が彼らを成功へと導いたのか……。

KAYTRANADA
音楽へのたゆまぬ愛とインターネットが生んだ稀代のプロデューサー

Kaytranada
2016年、最も注目を集めた“U25”プロデューサーのひとりケイトラナダ。
カリブ海に浮かぶ島国ハイチで生まれ、カナダはモントリオールで育った彼は14歳でDJを始め、15歳にして作曲活動を開始。数多くのブートレグを制作し、それが様々なアーティストや音楽関係者の目に留まり、一躍名プロデューサーへの階段を歩んでいくのだが……その成功の裏にあったのはインターネット。

ケイトラナダ以前のケイトラダムス名義時代を含め、彼の名前はBandcampやSoundCloudなどでは常に注目を集めていた。そこにアップされたジャネット・ジャクソンやダニー・ブラウン、エリカ・バドゥなどの多くのブートレグやミックスはネットでも別格のクオリティを誇り、特に2012年にケイトラナダ名義となって以降は注目度が加速。

すると、インターネットを飛び越え現実にも派生し、タリブ・クウェリやジ・インターネットらのプロダクションを手掛け、なおかつディスクロージャーのオフィシャルリミックスに繋がるなど、プロデューサーとしての存在感を増していく。
現代においてインターネットはもはや成功への登竜門。彼はまさにその最たる例であり、そこでアクションを起こせないようでは世界基準のアーティストになることは困難だということだ。

しかし、それで簡単に成功したかと言えばそうではない。彼の音楽性に垣間見える90年代へのオマージュや古き良きサウンドへの愛は本物であり、その探究心やセンスは誰にもマネすることができない強い個性を持っている。

そんな彼は昨年デビューアルバム「99.9%」をリリース。豪華アーティストが参加し大きな話題となったが、当時もうひとつある事件があった。それは、突如彼がバイセクシャルであることをカミングアウトしたこと。
英メディアによると一時はそれを隠し続けることでアイデンティティの危機に陥ったという。しかし、その不安が払拭されたことで彼は新たなスタートが切れたはずだ。
それがどう左右するのか、今後の動向が楽しみだ。

<次ページ> Mura Masa|選択肢はひとつしかなかった…孤立ゆえに生まれたハイブリッドな音楽性

1 2 3