近年話題のシティ・ポップからニューウェーヴ、さらにはニューエイジなど、海外で評価の高いメイド・イン・ジャパンのサウンド、「和ジャズ」の選りすぐりの楽曲をコンパイルした「J-Jazz (和ジャズ)」の第三弾が3月にリリース。

今回も河野康弘トリオが86 年にリリースした“Song Of Island”から、サックス奏者・峰厚介の“Morning Tide”、白木秀雄の“Groovy Samba”、中島政雄の“Kemo Sabe”、高瀬アキの“Song for Hope”などレアな楽曲が満載。

本シリーズの監修を務めるトニー・ヒギンズとマイク・ペデンは「J-Jazz」に関し、「我々は名作だと確信した楽曲とともに日本のジャズを素晴らしく紹介できる入門編となる楽曲を第1弾で披露したかったので、かなり特定なサウンドの音源を集めた楽曲リストを考えた」と語り、さらに第二弾は「選曲対象となる幅を広げ、ジャズのジャンル内に入っているあらゆるスタイル、ビッグ・バンド、モーダル、フュージョン、ファンクとその他を網羅しようと試み、我々に取って第1弾より良く聴こえたような気がしたほど出来が良くて満足している」と話している。

そして、今回の第三弾については「前作のスタイルの広範囲に及ぶ感覚を保ちしつつ、沖縄のジャズ、ボッサとファンクなどにさらに分岐し、日本のインディーズやプライベートなジャズ・レーベルの音源を深く掘り下げた」とのこと。

また、欧米のジャズと日本人による違いについてトニー・ヒギンズは「多くの日本のジャズ・ミュージシャン、特に我々のJ Jazzシリーズで取り上げた60年代と70年代のアーティストを観察し、気づいた特徴としては、彼らは数多くのジャズのスタイルを演奏する事ができ、またどのスタイルが上手である事だ。特にリズム奏者、ドラマー、ベーシストとピアニスト。そんな訳で彼らはスタンダート、バラードから、ストレートアヘッド、ハード・バップから、ファンク、フュージョン、モーダル、フリーな即興まで全ての演奏ができ、各スタイルを均等な良さでプレイできる。アメリカやヨーロッパのプレイヤーの傾向としてはあまり多く見られない、魅力的な多様性を日本人のジャズ・ミュージシャンが持っている。もちろん、アメリカとヨーロッパの素晴らしいプレイヤー達で幅広いスタイルを行き来できる方々もいるが、日本みたいに一般的ではないかと思う。アメリカのジャズ・ミュージシャンは一つの特定なスタイルや少数のスタイルの組み合わせに留まる傾向がある。しかし、多くの日本人のプレイヤーたちは雇われ続き、録音仕事に呼ばれ続けるため、全てのスタイルに学ばなければならなかったと思う。忘れてはならないが、戦後に米軍が日本を占領した頃、多数の米軍基地があり、アメリカの軍人のために日本人のジャズ・ミュージシャンがその基地内でコンサートを開催していた。現地のプレイヤー達は、クール・ジャズ、ビバップ、ジャンプ・ブルースなどの全スタイルを演奏する多様性を持たなければなりませんでした。その多様性が60年代と70年代に発展していった。日本人のプレイヤーの技術力は並ならぬものだ。特にドラマーは別次元にいる。素晴らしい」と考察。

そして、今後については「J Jazz Masterclass Seriesの一環として我々は多数のアルバムを再発する予定だが、驚きを台無しにしたくないので、名前を今明かさない。J Jazzの第3弾を出す前に最近再発した作品は、もともと1984年に発表された中村慎太郎クインテットのアルバム『Evolution』だ。J Jazz Masterclass Seriesのシリーズの7枚目のアルバムだ。我々は大傑作しか再発したくなく、最低でも10枚ぐらいを出したい。再発見必須の音楽が日本にあまりにも多くまだあるので、我々は始めたばかりだ」とのこと。