Mixmagに認められた若き逸材Fetusインタビュー第二弾。

#1では彼のルーツ……ダンスに勤しみながらもロック/バンドが好きだった少年時代を経てダンスミュージックへと行き着いた経緯を振り返ったが、今回は楽曲制作を開始し「Mixmag’s Best Producer of 2024」に至る過程をクローズアップ。

アーティストとしての活動を始めるも時はコロナ禍、そこで彼がとった行動とは……

「Mixmag’s Best Producer of 2024」を獲得しても変わらなかった、苦悩の末の変化とは……

さらに、独創的な作品が生まれる理由や言語化困難な音楽性の自己分析も。Fetusのサウンドは果たしてドラムンベースなのか、はたまたダブステップかベースミュージックか、彼は自身の音楽をどう捉えているのか、そこには非常に興味深い見解が……。今回もまたTREKKIE TRAXのSeimeiとともに迫る、Fetusというアーティストの矜持とは?

>>>Fetusインタビュー#1 英Mixmag年間ベストプロデューサーに選ばれた儁秀の素顔に迫る

https://floormag.net/fetus001/

◆4つ打ちには興味なし…その納得の理由とは?

――影響を受けたアーティストは?

Fetus:初期衝動はSkrillexですね。当時中学生でしたけど(Skrillexは聴いてて)「ワー!!!!!!!」ってなりやすいじゃないですか。最初に聴いたのは「Recess」だったと思います。

Seimei:あれはいいアルバムだったよね。ドラムンも入ってたし。

Fetus:すごく自由な感じがあったっすね。

――制作はどうやって学んだんですか?

Fetus:独学で、YouTubeを見たりとかして。最初はLogicで作ってたんですけど、Ableton Liveに変えてからわりとスムーズになったというか、うまくなった気がします。自分の曲の作り方がLogicじゃなかったっぽいです(笑)。

その後コロナやし、いろんな曲を作ろうって思って、それが19〜20歳ぐらいですね。当時ドラムンは作れたので(BPM)160でディープなドラムン、リキッドファンク、ハーフタイムみたいなのを作って、あとはテクノっぽいのも。まずはその5個を極めよう思ったんですけど、ホンマはひとつのジャンルを絞って頑張るのがよかったかなと。

それからノリでジューク・フットワークを作ろうって思ったんですけど、そしたらめっちゃ難しくて。それでOyubiに声をかけたっていうのもあります。

――ジューク・フットワークは定型がないので難しそうですよね。

Fetus:バイブスすぎるんですよ(笑)。その後ダブステップも作るようになって、VomitspitのKarnageさん、Dayzeroさんにデモ送ったりしてましたね。

――なぜハウスやテクノにはいかなかったんですか?

Fetus:あまり興味がなかったんですよね。あとはテクノの現場にあまり行ってなかったからかもしれない。ベースミュージックを軸に遊びに行ってたので。

だからベースが軸になった上でのテクノならいいんですけど、ガッツリのテクノはあんま通ってなくて。当時、僕がいてた環境がMaltine Recordsとかドラムンベースの現場がメインだったので、テクノのことがわかんなかった。東京でテクノが盛り上がっているのも知らなかったし、周りにテクノがなかったのでやろうと思わなかったです。

アルバム「b1 b2」を回顧「頑張ったのに…」

――接点がなかったと。でも、楽曲を聴いているとブレイクビーツはあったりしますよね。EP「Fish, Fished, Fishing EP」とかはまさに。

Fetus:あれはEXITっぽい感じになったらいいなみたいな(笑)。でも、ただEXITっぽいだけはなく、それと“自分っぽい”っていう2つの感覚がないとよくないと思ってますけど。

僕は「あの曲と(テイストは)全然違うけどあの曲っぽい」みたいなのものをわりと作ってて、(最初は)ひたすら「あの感じになってほしい」と思って作るけど(結果的に)「自分が作ったらこうなってしもうた!」みたいな感じが多くて。変な曲ができるのはそのせいなのかなと思います。

――EP「Fish, Fished, Fishing EP」はFetusくんの作品の中でも異色で、ちょっと“平成感”というか、かつてのNinja Tune、COLDCUTみたいな感じがしました。

Seimei:僕の捉え方もそんな感じでしたね。

Fetus:その前に出したアルバム「b1 b2」がいかにも自分っぽい、Fetusっぽいものになったんですけど、それは余裕がなかったというか、そもそも曲を完成させるのに必死で。それで、アルバムを出したら結構ラクになったんですよ。

――それは達成感、満足感があった?

Fetus:やっとできたという思いがありつつ、その後に「Mixmag’s Best Producer of 2024」に選ばれて……その時、結構頑張ったのにあんま自分変わらんなって思ったんです、性格とか。もともと僕は“変わりたい”願望みたいなのがあって頑張ってたんですけど。

でも今は余裕ができて、今度はみんなが自分の曲をどう思うのか気になってきて。前は「音がパキパキになったらいい」、「とにかく音が良ければいい」みたいなとこがあったんですけど、「Fish, Fished, Fishing EP」は「このキックみんな喜ぶやろうな」、「質感とか音が悪くてもこっちの方がいいな」とかプロデューサー目線すぎるのを一回やめてみようと思って。そしたらそれがちょっと面白くて、アルバムより引き気味というか、ちょっと余裕ができた自分がいて(以前とは)視点が変わったんですよね。

――それは「b1 b2」が評価されたことも大きい?

Fetus:かもしれないですけど、評価されてもなんも変わらんかったっていうのもあります。

――「b1 b2」に自信、手応えみたいなものはあったんですか?

Fetus:あんまなかったですね、なんかあるかなぐらいは思ってましたけど。

◆アーティスト誰もが悩む作品を終え方…完成の基準は?

――普段はどんなふうに楽曲制作しているんですか?

Fetus:僕は「この曲はどういう構造なのか」みたいなことが気になって、人の曲を聴いていても「なんでこの曲はこうなったんや?」みたいなことを考えるんですよ。ミックスがどうこうより「どういうバイブスで作ったんや?」とか。気持ちとか精神的な方が気になるんですよね。

あとは、(1曲作るのに)時間がかかるタイプで、なのに常にいろんなプロジェクトがいっぱいあって、今も完成してないプロジェクトが20〜30個ぐらいある。(PCを)開いて、その時に目に入った曲を作るみたいな感じ。ちょっとずつ更新していって、どっかでハマる時があってそこで急に進む感じです。

――どうなったら完成なんですか? 完成の基準は? ちなみにSeimeiくんは?

Seimei:僕はDJでかけて踊ってる人がいたらいいかなってなりますね。ただ、DJでかけてる時点である程度は「これだったらみんな聴いてくれそう」と思ってるんですけどね。DJでかける=もう自分が好きだから。あとはDJでかけて特別な反応、例えば知り合いから「あの曲なに?」とか聞かれたり、DJ的な思考ですけどそういうのは指標になります。

Fetus:僕は一通り聴いて「おっ!」ってなることが多かったらいいかなと。そもそもそうならないものは出さないですけど。

Seimei:その感覚はわかる。「おっ!」と思うことはあるんですけど、これがまた不思議で、曲によっては最初はそんなにいいと思ってないのに、ずっと聴いてると「いいかもしれない!?」って思うこともあるよね。

Fetus:そうですね。あとは自分っぽいかどうかも大事で、自分っぽくなかったら出さなくていいと思うし、友達、Oyubiくんに聴かせてどこがダサいかとか話し合ったり……でも、最終的には「まぁ、いっか」みたいな感じ(笑)。

――とはいえ、それは試行錯誤した上での「まぁ、いっか」ですよね。

Fetus:そうなんですけど、結局完成させても「もう少しこうしたらよかった!」っていうのも全然あるし、それは次につながるので、そこはそこまでかなと思います。その時の自分はそこまでだったんだみたいな。

Seimei:それは僕も全然ある。

Fetus:あとは僕、共作が多くて、いろんな完成の目安を見てきたんですけど「この人はここでやめるんだ、俺はまだいきたい」みたいなこともあったりもして。こだわりもいきすぎるとエクスペリメンタルになっていったりするんでそれもよくない、違うものになっちゃうので。だからいろいろ難しいんですよね。止めなければいけないところで止めた方がいい。

Seimei:DJがかけやすいものを、っていうのもあるしね。

Fetus:そうなんですよ。いろんな人と作っているといろいろな発見があって、最近なんとなくわかるようになってきました。

◆あなたの自分らしさ、音楽ジャンルはなんですか?

――これはFetusくんがこだわっていることのひとつだと思うんですけど、“自分らしさ”ってなんだと思いますか?

Fetus:メロディがないとか、メロディで作ってないところですかね。僕は多分エフェクターの音というか、リズムがパキパキしてて……難しいっすね、僕もわかってないかもしれない(苦笑)。ただ最近思うのは、フィルの感じとかは僕っぽいんだろうなと思っていて、あとは雰囲気ですかね。

Seimei:Fetusくんの曲は雰囲気、特有のムードがあるよね。アルバムとかは明らかにそうだったし。

Fetus:どうやってそれができているのかわからないですけど、多分軸を大事にしてないからかなと思うんですよね。ドラムンをちゃんとやろうとか、テクノをやろうとかじゃなく、みんなを踊らせようとかでもなく。ただジャンルを借りて曲を作るみたいなのが軸なので。

――でも今はジャンルに固執することもないというか、それこそSkrillexなんてその象徴のような存在ですよね。

Fetus:それで曲を作るのがラクになったっていうのはあります。

――一方で自由になりすぎて大変と思うことはないですか?

Fetus:それはあんま感じないですね。

――ジャンルを尋ねられた場合はどう答えてます?

Fetus:まずは“ベース(ミュージック)”って言いますね(笑)。

Seimei:ベースって便利だよね(笑)。

Fetus:そうなんですけど、受け手からすると「なにそれ?」ってなっちゃうかなとも思うんですよね。

――みんなそこまで気にしていないと思いますけどね。明確に括る必要がないというか、言ったもん勝ちというか。

Seimei:確かにそうですね。ハウスもプログレッシヴからディープハウスまであるのに“ハウス”。テクノもそう。いろいろありますからね。例えば僕がFetusくんを説明する時は、もともとはドラムンベース、その中でも暗めのエクスペリメンタルものが好きで、今はBPM160の曲を中心にリリースしてて、たまにダブステップ作る感じかな(笑)。

――でも最近の曲は以前に比べて明るい曲が多いですよね?

Seimei:そうなんですよ、明るいんですよね。なんで?

Fetus:それは理由があって……

#3に続く……

Fetus(フィータス)

2000年生まれ、大阪府出身。2022年にリリースしたOyubiとの共作“Earnin It”で注目を集め、Ben UFOやNoisia、London Elektricity、SHERELLEらジャンルを超えて多くのアーティストのサポートを受ける。これまでベルリンのHERRENSAUNAやフランスのWajang、そしてTREKKIE TRAX国内外のレーベルから作品をリリース。2024年にはドラムンベースを軸にジューク/フットワークやテクノ、ダブステップなど幅広いジャンルに展開するファーストアルバム「b1 b2」を発表。世界各国で高く評価され、A.G.COOKらと並び「Mixmag’s Best Producer of 2024」に選出。2023年からは盟友OyubiとともにレーベルTuringを主宰。2025年には韓国・ソウルの名門クラブCakeshopで海外初公演を果たす。なお、Fetusとはラテン語で“胎児”を意味し、自身の音楽が特定のダンスミュージックのジャンルと紐づかないよう、何にも染まっていないことを表現すべくつけられた。

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