テクノの聖地、ドイツはベルリンで開催されている『Berlin Atonal』は1982年に初開催。当時アヴァンギャルドな音楽性で人気を博したが、時代の潮流を鑑み惜しくも一時休止。しかし、ベルリンに新たな息吹を吹かすべく2013年に23年ぶりに復活した。
以降、最新の映像表現やインスタレーションなどとリンクすることでより多角的なコンテンツを擁し、世界中のコアなファンを魅了し続けている。
そして、先週末には世界初となるサテライト・イベント『Berlin Atonal presents New Assembly Tokyo』 をここ日本で開催。
コンテンポラリー・インダストリアルやノイズ音楽といった実験性の高いアートフォームの最先端を投影した、刺激的な音の冒険を届けた。本稿では、ベルリンで開催されている『Berlin Atonal』に近年出演しているENAの言葉をもとに、その魅力に迫ってみたい。
彼曰く、このフェスの特徴は“都市型”であること。開催地はベルリンの中心部、そこには巨大建造物がこだまし、場所柄人々が集まりやすい出会いの場でもあると言う。
しかし、フェス自体はかなり実験的かつ先鋭的で、他のフェスではありえないラインナップとロケーションが際立っている。近年は“Kraftwerk”と呼ばれる発電所の跡地で開催され、その退廃的でありつつも鮮烈な、余計なものがなにひとつないモノクロームな場所はまさにアンダーグラウンドの極地。そこに映像モニターやレーザーが設えられ、そこはある種カタルシス的空間に。
そんな『Berlin Atonal』の意義……それは音楽を楽しむうえでの原点回帰、そして挑戦でもあるとENAは言う。
「本来、実験性や創造性はエレクトロニックミュージックの基本的な概念だと思いますが、それを売りにビジネスが成立していない現代社会において、『Berlin Atonal』はしっかりとそれを守っている。
また、いつの間にかエレクトロニックミュージック=ダンスミュージックと考えられているなかで、コンサート形式で音楽を聴くことを提示しているこのフェスは原点回帰であり、同時に新しい概念への挑戦でもあると思います」
彼はこの『Berlin Atonal』で2015年にはソロライヴを、昨年はFelix Kとともにライヴを行ったが、このフェスに必要なのは個性だと教えてくれた。個性を出し切れないアクトはえてしてフロアの反応が薄いとか。
その基準はかなりシビアのようだが、それだけにクオリティが担保されているとのこと。また、欧米ではバックステージへの配慮が欠けることが多いというが、ENAの話ではここではかなりオーガナイズされており、まじめで几帳面なドイツのイメージそのままというのも興味深い。
そんななか彼が最も印象に残っているライヴは昨年のアレッサンドロ・コルティーニのステージだと話す。
「(ラインナップは)無機質で硬質な音が多いなか、彼はエモーショナルな面を強調したライヴで異質ながらも個性をはっきり出していました」
そんな『Berlin Atonal』は、8月16日〜20日まで開催される。本祭に興味ある方は今から旅の支度を。
エナ
ドラムンベース〜ダブステップを出自に、様々なジャンルを昇華した個性溢れるサウンドで世界を虜にしているプロデューサー・DJ。国内屈指のベースミュージックパーティ『Back To Chill』のレジデントをつとめつつも、日本はもとより海外での評価がすこぶる高く、リリースのほとんどは海外の主要レーベルから。また、毎年のように海外ツアーを敢行中。