エレクトロの果てに見えるもの、それはまさに彼のようなジャンルを超越したサウンドなのかもしれない。

ボーイズ・ノイズの約3年半ぶりの新作「MAYDAY」は、テクノであり、ハウスであり、あくまでエレクトロでもある。
とにかくパワフルでエネルギッシュなその音楽性は、カテゴライズするのももどかしい。

“EDMは興味ない”と言い切る彼が目指すサウンド、その全てが今作に詰め込まれている。

——約3年半ぶりの新作となりますが、その間にシーンも大きく変化したと思うのですが、あのあたりはあなた自身どう捉えていますか?

そこにはいろいろな捉え方があるよね。ただ、ドイツで育った僕からするとエレクトロニック・ミュージックはそんなに変わってないと思う。

90年代には『ラブパレード』に見られたようなレイヴやコマーシャルなユーロダンスとかもあったけど、アンダーグラウンドなシーンも絶えずあったわけだからね。

テクノやハウス、そしてエレクトロはいつの時代も存在し続けてきたし、最近ではまた多くのDJがクラシック(原点)に戻ったりしている。

一方で、アメリカに住んでいる人からすれば、それは明らかに違う状況にあると思う。
なぜなら90年代や2000年代初頭にはエレクトロニック・ミュージックが流行るなんて誰も思ってなかったはずだからね。

今の若いプロデューサーたちは(エレクトロニック・ミュージックの)カルチャーの背景を知らない。それは彼らのせいではないけど、そのために彼らはみんなが好む音楽を作らなくてはいけないというマインドになってしまっているんだ。

メインストリームのエレクトロニック・ミュージックがこうも流行しているのは、そのせいだと思うね。

——それはEDMのことですね。あなたは以前EDMは全く興味がないと言っていましたよね。

今でもあまり興味が沸かないよ。それはメインストリームのポップでしかないと思うし、これまでのエレクトロニック・ミュージックのカルチャーとは別物だよね。

——とはいえEDMの中でもトラップ系とは親和性がありそうな気がしますが。

ヒップホップのエレメントはよく取り入れるけど、僕のDJや楽曲にその要素はあまり関係ないかな。

僕のDJスタイルはいつだってヒップホップのフィーリングにインスパイアされているけどね。
ときにはレコードを短時間で繋ぐこともあるし、いろいろなスタイルでプレイしているからね。
そういう意味では、2メニーDJsを尊敬しているよ。

でも、ハウスとテクノのDJを始めたころは本当に大変だった。
当時、テクノのDJはハウスをかけないし、逆も然りだったからさ。

でも、だからこそその境界線を壊していきたいと思って常にプレイしてる。
そして、曲を作るときもいつも新しいものを作りたいと思ってるんだ。

とはいえ、エレクトロニック・ミュージックはすでに浸透しすぎているから難しいんだけどね。

でも、僕はいろいろなスタイルを掛け合わせ、新しい要素を加えるのが好きなんだ。

——EDM界のスターであるスクリレックスとドッグ・ブラッドとしても活躍されていますよね。

2012年に彼がベルリンでプレイしたとき、僕のスタジオに呼んだんだ。
当時、彼はたくさんの人に嫌われてたんだけどね(笑)。
UKのダブステップをマスに持っていこうとしてたからさ。

でも、彼は少しのパンク精神を持ち合わせたすごくいい人だったんだ。
だから、誰も想像していないかっこいいことをやったらすごく面白そうだと思って、それでドッグ・ブラッドのトラックが出来上がった。

そして楽曲を公開して9カ月後にドッグ・ブラッドが僕たち2人だってことを明かしたわけだけど、みんな驚いてたね。あのときは本当に楽しかった。

——話を本線に戻しますが、今回の新作「MAYDAY」の制作にあたって最も意識したことは?

プロデューサーとして、僕自身を含めたくさんの人を驚かせたいと常に思っているんだ。

ただ、今回新しい曲を作ろうと思ったときに唯一頭にあったのは4つ打ちから遠ざかり、違うテンポに挑戦してみたいということだった。
だから、今作はすごくダイナミックな仕上がりになったと思う。今までのアルバムの中でも一番。

——となると、コンセプトも同じようなこと?

僕はコンセプトを立ててその通りに行動するのは得意じゃないんだ。だから、コンセプトというのは特にないね。

スタジオでとにかく新しい音を試し、好きな音が見つかったらまた次を探す。そうやって組み立てていく。

僕の場合、楽曲の制作はすごく直感的なプロセスなんだ。

——タイトル「MAYDAY」の由来は?直訳すると“救難信号”という意味ですが。

ここにはちょっとしたメッセージが込められているんだ。

僕はいつもなんとなく蚊帳の外にいる気分なんだよ。僕の音楽はピュアなテクノやハウスでもなければ、メインストリームでもないからね。

それだけに、このアルバムはアウトサイダーと大衆に抗うことについて体現させているつもりさ。

ここ最近はみんな同じような音ばかりだし、僕は僕なりのアイデンティティを示したい。他とは違って聴こえる音楽を作りたいし、見え方も感じ方も大衆的にならないようにしたいんだ。

世の中にはたくさんのアウトサイダーがいて、彼らだってたまには世の中を変えることができると思うしね。

——今回は大きな会場でこそ映えるポテンシャルを感じましたが、それは近年数多く参加しているフェスの影響があってのことなんでしょうか?

曲を作る上で、自分のDJセットに組み込むことができるかということは常に重要視してる。

ただ、どちらかと言えば僕はクラブでプレイする方が好きだから、今回もフェス用というわけではなく、あくまでどちらにも対応できる、そんな作品になっていると思う。

インスピレーションを受けたのはUKのブレイクビーツやレイヴのレコード、それこそケミカル・ブラザーズやプロディジーの初期の音楽だったんだ。

彼らのレコードはすごくユニークでイノセント(無垢)でナイーヴな気持ちにさせられるよね。
テクノとヒップホップの融合はとても興味深いよ。

——ゲストもハドソン・モホーク、スパンク・ロック、ベンガにポリカと様々ですね。

ハドソン・モホークは友達なんだ。彼と作った“Birthday”は、僕のアルバムを締めくくるに最高のトラックになったと思う。

DJプレイでもいつもそうなんだけど、僕はどっぷりヘヴィーなものをやった後、最後はハッピーなものをかけたいんだ。

その他のコラボも今回は本当に素晴らしいものだった。それだけに僕らがどれだけ楽しく音楽を作っていたのか、ぜひみんなにも知ってほしい。

全てのコラボはごく自然に生まれ、自然と音楽ができたんだ。それは、このアルバムを聴いてもらえればきっとわかってもらえると思うな。

——最近あなたがハマっているサウンドは?

正直、インダストリアルな音楽やEDM、インディ・テクノには飽き飽きしてる。

今最も面白いのはヴァイナルだね。DJでもヴァイナルをたくさんプレイしているよ。

——アルバムリリース後に、来日予定はないのでしょうか?

まだ未定だけど、近いうちにまた行きたいと思ってるよ。

——ちなみに日本の印象は?

すごく大好きだ。日本には世界でも有数の最高のカルチャーがあるからね。

僕自身、実はドイツ以外で初めてDJしたのが日本だったんだ。それ以来大好きだよ。
日本のサブカルも興味深いしね。

その他にも好きなところはたくさんあって、これまで10回ぐらい行っているけど、できることなら短時間でもいいから住んでみたい。これは本心だよ。

Interview&text:編集部
Translator:Ako Tsunematsu

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BOYS NOIZE
『MAYDAY』

Boysnoize Records

BOYS NOIZE
ボーイズ・ノイズ
ドイツ出身のアレックス・ニダによるソロ・プロジェクト。2000年代に巻き起こったエレクトロ・ムーブメントを牽引し、以降も様々なサウンドを取り入れ進化。DJ、プロデューサーとして活躍するとともにレーベルBoysnoize Recordsを主宰。2012年にはスクリレックスとユニット:ドッグ・ブラッドを結成。