“ベタな曲がベタじゃなく聴こえる、ベタじゃない曲が知ってる曲のように聴こえる、そういったことが一番スゴい”とまるで格言のようなステキな言葉を放ったかと思えば……“メチャギャルが「今日なんか超ヤバかったよね」って言ってたらなにげに嬉しい”と照れ笑い。

コアなファンが狂ったように踊る超アングラなパーティでプレイし、その翌日には数千人規模のイベントで辣腕を振るう……日本全国のフロアであらゆるジャンルのサウンドを紡ぎ続けるokadada。
そんな彼にとってのDJとは? 決してアンセルフィッシュになることなく、現代に残る古きよきDJの風格を漂わせる彼の流儀に迫る。

なお、12月1日(土)には、渋谷SOUND MUSEUM VISIONの7周年記念パーティ『VISION 7th Anniversary ‘trackmaker’』への出演も決定。そこで、まずは毎回大盛況の『trackmaker』の話題から。

楽しいけれど…okadadaにとっての『trackmaker』

——okadadaさんはレギュラー……というわけではないものの、『trackmaker』にはかなりの頻度で出演していますよね。どんなイベントですか?

あくまで僕にとってはですが……『trackmaker』が一番“外向き”のイベントなんですよね。僕はメジャーっぽい場所にあまり出ないというか、基本的に出れないと思っていて。

ただ、それが嫌いなわけではないんです。サービスがしっかりしていて、エンターテインメントしている場所は本来好きなんですけど、そこをメインにしていないというか……。そういう意味では、自分の振り幅の中でVISIONは最も大きな場所で、遊びに来るお客さんの層もレンジが一番広い。だから外向き。

——となると、『trackmaker』でのプレイは他とは全然違う?

変わってきますね。でも、それを言ってしまえば、どこもやっていることは違うので、ここだけが特別というわけでもないです。
ただ、幅広いお客さんに自分の音楽をどうわかってもらうか……という意識は強いかもしれないですね。

——『trackmaker』の出演者は“次世代”というのがテーマです。若い共演者から刺激とか受けます?

ここでしか会わない人が多いので毎回面白いです。ゲストの方も豪華ですし。

——ゲストには、これまで小室哲哉さんなど出てますよね。

あり得ないですよね、もうきっと僕が小室さんの横に並ぶことなんて(笑)。そういう意味でも、他のイベントとはちょっと違うかなと思います。

——今年5月には1500人以上の動員を集めていますが、その魅力はどんなところにあるんでしょう?

正直わからないんですよね……僕自身すごく楽しんでいるんだけど、渋谷の超人気クラブでめっちゃ人がいるなかで自分がDJしていることも(笑)。
お店のスタッフとかに、“okadadaさん、最高でした!”とか言われると、時代も変わったなって思います(笑)。

——でもokadadaさん、キャリアはもう10年以上ですよね?

どこがスタートかは曖昧ですけど、この名義でやらせてもらってもう10年です。Maltine Recordsから最初にEPを出したときにつけた名前ですので。

——10年前はこうして渋谷の人気クラブでDJすることになると思ってました?

全然、考えてもなかったですね。当時はとりあえずやってみようぐらいの感覚だったし。でも、本当にありがたいと思ってます。
今でも小さなクラブやコアなイベントでやらせてもらって、さらにはVISIONのアニヴァーサリーにも呼んでもらってる。今は、とりあえずやれるだけやっていこうかなって思ってます。

原点はヒップホップ、okadadaのズルズルDJ人生

——そもそもDJを始めたきっかけは?

中学生の頃にヒップホップ、日本語ラップブームがあって、兄貴も『AIR JAM』世代でバンドをやってたりしていて、いつの間にか音楽が好きになってたって感じですね。
それで、友だちがDJやりたいねんって機材を買ったので、一緒に練習して。そこからズルズルと……。

——となると、原点はヒップホップ?

もろです。しかも、当時流行ってたゴリゴリのビルボード系。あとは日本語ラップ。
僕はすごく田舎に住んでたので、東京に行ったときにレコードを何枚か買って帰るって感じで。確か買ったのは、DMXとか50セントとかだったと思います。

——そこから紆余曲折あって今の何でもあり、オールジャンルOKなスタイルに?

まぁ、今もスタイルがあるかないかわからないですけどね(笑)。今でもDMXとかかけるときありますし。
ただ、何が最初だったかと言えばそこ。あとは、DJ HAZIMEさんをメッチャ尊敬してて……。

——それはちょっと意外ですね。

昔、ラジオ(京都のα-STATION)でDJ HAZIMEさんが番組やってたんですよ。毎週2時間のミックスショーと最新の音楽についてトークを。そこでカッコいいなって思った繋ぎがあったら、同じレコードを買ってきて練習してました。DJ HAZIMEさんは今でも大好きです。

——その他、影響を受けた音楽とかあります?

DJを始めて3年ぐらいはヒップホップのレコードを買って練習してたんですけど、ちょっとずつレコード屋の新譜コーナーとか見出して。アンダーグラウンドなものとかも気になり出したけど、どうもそんなにハマんなくて。
そんなときに、京都にA.Y.B FORCEっていうグループにULTICUT UPS!っていう2人組のDJがいたんですよ。高校3年のときに彼らのミックスCDを聴いて、それがスゴ過ぎて。

ファンキーなブレイクビーツにソウルやヒップホップ、ミドルスクール、オールドスクール、ディスコ、ハウス、なんでもありみたいな。それにメチャクチャ影響受けて、聴ける音楽ならなんでもいい、音楽は全部聴きたいと思って。

それで、大阪の大学でリスナーサークルに入ったら、そこにいた人がまたスゴくて……。ノイズやってる人やモッズバンドの人、ネオアコやソフトロックのDJなんかもいて、あらゆる音楽が入ってきて。そこで人生狂いましたね(笑)。

——そこからジャンルに関係なく、いいものを貪欲に取り込むスタイルに?

DJを始めたころからチャートをよくチェックしてて、それは今も変わらないんですよ。もはや習性というか、チェックするのが好きだし。

大学に入って一時期は古い音楽にハマりましたけど、しばらくしたら“やっぱみんな最高やん”みたいになって。考えてみると、僕はあんまり音楽でこじらせたことないんですよね。流行も好きだし、そうじゃないのも好き。

好きじゃない曲を好きにさせる…okadadaの理想

——では、選曲の際に意識していることは?

大前提として、僕が現場に持ち込んでいる曲は全部好きな曲なんで、究極的には何をかけてもいい。

あとは、やっぱりお客さんに喜んでもらえるものですね。それもいろいろ種類があると思うんですけど、“イエーイ!”みたいな盛り上がりも、後ろの方で心の中で“メッチャヤバイ”みたいになってる人も、広い意味ではどっちでもよくて、ただ何かを与えたいっていう気持ちはありますね。

例えば、感動とか。騒げればOKでもいいんですけど、僕はそれだけだとあんまりお金はもらえへんなと思っていて。
えらそうですけど何かを与える、あとはDJでどうしたら人が変わるかみたいなことは考えますね。

昔からベタな曲がベタじゃなく聴こえる、ベタじゃない曲が知ってる曲のように聴こえる、そういったことが一番スゴいと思ってて。

——確かに。

つまり認識が変わるってことだと思うんですけど、それがパーティの延長でできたら最高ですね。

それこそ選曲やそのときの状況、天気や場所、一緒にいる人なんかで音楽の聴こえ方って変わると思うんですけど、DJとしてお客さんにどこまで介入できるかが大事だと思ってます。

——例えば、それまで好きじゃなかった曲が好きになってもらえるとか?

それは一番かもしれないですね。その時のことってその人の中にずっと残ると思うし。

クラブなんてはしゃげればいいじゃんみたいな人が、意外とクラブっていいなとか音楽いいな、踊るっていいなみたいな感じになったら嬉しいです。
正直、俗にいうパリピの人とかって音楽をマジメに聴いてないとか思われがちですけど、それ以外の人がマジメかといえば、それはわからない。踊るために作られている曲なのに踊らないって、実は不真面目なんじゃないかって思うときもあるし。

まぁ、どっちでもいいんですど、ちょっとでも僕のDJが誰かに干渉できて、何かが変わるみたいなことがどんな場所でもできたらいいなって思います。
普段はナンパしかしないけど、あの日はちょっとオモロかったなみたいな人がひとりでもいたら僕が出たかいはあったかなって。

——『trackmaker』でもそういうことがありそうですね。初見のお客さんも多いわけで。

僕と全然接点なくて、たまたま遊びに来た人で、僕の名前を覚えて帰らなくてもいいからそう思ってもらえたらいいですね。
メチャギャルが“今日なんか超ヤバかったよね”って言ってたらなにげに嬉しいし(笑)。

——そう思ってもらうためにしていることってあります?

できるだけ誰でも入りやすいようにしたいとは思ってます。ただ、それこそVISIONのように様々なお客さんがいる中でもハードルは下げたくない、でも門戸は広げたいんですよ。

人に何かを伝えるとき、わかってもらいたくて、わかりやすい曲をかけたりハードルを下げがちですけど、僕はそれは間違ってると思う。門戸を広げても自分の中でハードルは下げちゃいけないんですよ。
人から見たら下がって見えるかもしれないけど、ハードルを下げだしたら、たいしたことできへんやろなと思ってます。

——言い換えれば、お客さんに媚びてるということ?

要は、もっといろいろとコントロールした方がいいってことですね。コントロールするのは客じゃなくてDJの側だと思うので。

場所によっても違うとは思うんですけど、僕のようなDJは特にハードルを下げちゃうと意味がない。らしさというか売りがなくなる。そういう意味では、『trackmaker』は毎回いろいろ悩みますね。他の現場と明らかに違うので。

なさそうで…やはりない!? 初めて明かすokadadaの夢

——最近の若いアーティストについてはどう思ってます?

単純にスゴイなって思いますよ。何度か一緒になってるSUSHIBOYSとかユーモアあるし、技もあるし。

そういった存在がたくさん出てきてますけど、もっと出てくるといいですね。やっぱり、キャラクターはたくさんいるにこしたことないので。選ぶものが多い方がパイも増えるし、そうなると僕らも得するし(笑)。

個人的に『trackmaker』は毎回どんなアーティストが出てくるのか楽しみです。

——そんな中にあってokadadaさんの存在も面白いと思いますけどね。

いつまで使ってもらえるかわからないですけどね……。そういう危機感はあるし、一方であわなくなったらしょうがないとも思ってて。

基本的に、僕はひとつのところが勝つのはよくないと思ってて、VISIONのような人気クラブからそれこそ小箱までがうまく循環して、いろいろな魅力が伝わっていかないとジリ貧になるだけだと思うんです。

そんな中で僕の存在って、例えば大箱で音数少ない曲で盛り上げられるように誘導させたり、ハデなノリの曲とそうでないものの共通点を見出してお客さんを楽しませたり、そういうエッセンスを増やす人として呼ばれてるのかなと思うし、そうであったら嬉しい。そこにこだわっている人ってそんなにいないので。

——ちなみに、最近はどんな曲が好きですか?

難しいですね……ここ2、3年は面白いものがいっぱいあるし。
ニューエイジとか、エレクトロビートのハウスの人がそういうのを作ってたり。初期ハードコアテクノみたいなものも改めて聴いたりもしてます。

あと、ここ3年ぐらいはバイレファンキですかね。メチャクチャミニマルになっててヤバイです。Tropkillazとか。

——最後に夢とかってあります?

それ、初めて聞かれました(笑)。

——それは多分……なさそうだから(笑)。

そうなんですよね、ないんですよ……。
音楽で飯食うぞとか覚えてる限り考えたことがない。もともと食えると思ってなかったし。

——でも、今食えてる。

そうなんですよ、不思議です。好きなことを続けてるだけだけど、そこにはやっぱり変化がないとつまならないし、どうせなら人に見られたい、広げていきたい気持ちもあって、その結果が今なのかなと思います。

最初から音楽で飯食うぞっていうより、人に見てほしいっていう思いの連続でした。ただ、30歳になってそれもちょっと変わったかな……それこそ考え方とか。
この3年ぐらいは僕の中で修業期間みたいな感じだったんですよ。それを経てどうなるか、今はまた考えようって感じです。

——曲を作ったりとかは? そもそも作ってたわけで。

作ってるんですけど、散らかり過ぎてて。曲はやっぱり人にあわせたらダメですね。思い込みが大事。これがいいんだって自分の中で絶対的なものにしないと。
どうも最近はそのパワーが衰えてしまったようで……。DJをやり過ぎて、そっちにパワーが持っていかれてるのかもしれない。

——誰かみたいになりたいとかもない?

ないというか、あるというか……到達点みたいなもので言えば、自分の思い込みをすごく高いところで昇華してる人。

それこそ日本人ではMOODMANさんやALTZさん、COMPUMAさんとか……みんなもはやウィザード級ですよね(笑)。

マイケル・ジャクソンとかも同じだと思うんですけど、音楽に本気でおかしくなれたらいいですね。そして、その結果として困窮しないぐらいにお金がもらえて余裕がある、それが理想(笑)。

お金持ちになって好きなことができなくなるのもイヤ、かといってお金は必要やし……。

——新曲、楽しみにしてます。

だいぶ出してないですからね。作品になったらいいですけど、もしかしたらミックスとか違う形になるかもしれないです。

人間って、いつ最高到達点がくるかわからなくて、それがもしかしたら明日かもしれない。でも、そこからまた続くとも思っていて。だからきっと楽しいんだと思いますけど……毎日そんな感じです(笑)。

EVENT INFORMATION

VISION 7th Anniversary 'trackmaker'

12月1日(土)

OPEN 22:00

SOUND MUSEUM VISION(Shibuya)

ADV¥3,000 DOOR¥3,500

Dorian Concept / Seiho / okadada / ZEN-LA-ROCK / G.RINA from FNCY - DJ SET- / DÉ DÉ MOUSE / Licaxxx / TORIENA / YOSA&TAAR

インフォメーション