2015年にStrictly Rhythmからデビューして以降、NY特有のファンキーなディスコサウンドとアフロビート、さらにシカゴハウスを融合させたサウンドで一躍注目を集めたイタリアン・ハウスデュオ:ロウヘッズ。
グルーヴ・アルマダによる「Fabric」シリーズへの楽曲提供やルイ・ヴェガのグラミーノミネート作に収録された“See some light”のリミックスなど、数多くの話題を振りまいてきた彼らが最新アルバム「After Tokyo」をWolf+lambよりリリースした。
タイトルから察するところ、東京での経験が本作に与えた影響は大きいに違いない。そこで、彼らのデュオ結成の経緯から本作のインスピレーションの源まで、メンバーの2人にいろいろと語ってもらった。
——まずは自己紹介をお願いします。
Nana Darh「ロウヘッズは、ガーナ出身の僕Nana Darhとイタリア出身のStefano Amalfiのユニットさ。僕らは、互いの趣味や興味のある音楽が混ざり合うことで生まれた複数のジャンルのフュージョンを意識して音楽を作ってる。アフロビートからシカゴハウス、ファンキーなディスコまで、ジャンルの壁を感じさせないように2人の知識やアイディアを出し合っているんだ」
——ユニットを組むようになったきっかけを教えてください。
Stefano Amalfi「友達の紹介で出会ったんだけど、そのときに2人の音楽の趣味やバックグランドが全く違うにも関わらず、お互いのサウンドをうまく混ぜることで新しくて面白い曲が作れると思ったんだ。だから、まずはそれぞれバラバラに楽曲を作ってみて、お互いの楽曲を分析しあって、最後にスタジオで一緒に作業して最初のデモを作ったんだ」
——ロウヘッズとしてキャリアをスタートする前、2人はどんな活動をしていたんですか?
Stefano Amalfi「ロウヘッズのプロジェクトを始めた2014年ごろ、僕はイタリアのインディーレーベルSound Divisionのプロデューサーとして働いていた。そこで10年間、楽曲制作における多くのプロダクションワーク学んだよ。プロとしての経験が蓄積されてきたときに、自分のクリエイティビティをもっと表現したいと思ったんだ。それでロウヘッズに100%集中できるように仕事をやめたんだ」
Nana Duah「僕は北イタリアのクラブシーンで長い間活動していた。DJ以外にもプロデューサー、フェスクリエーターとして地元のレッジョ・エミリアを中心にイタリア国内で音楽活動をしていたね。それは貴重な体験で、仕事を通して日本のDJのNaoki Serizawaやアメリカのソウル・クラップ、Wolf+Lambのピロウ・トークなど大勢の国際的なアーティストと出会い、強いパートナーシップと友情を築くことができたんだ」
——ロウヘッズでの2人の役割を教えてもらえますか?
Nana Duah「僕が外交的なところを担当しているかな。これまでにアーティスト活動だけでなく、レーベル、エージェント、ツアーマネージャー、ブッキングエージェントの経験をしてきたからね。だから、そのキャリアを活かして今は広報、アーティストとのコラボレーション、ディストリビューションなどコミュニケーション全般を担当してる。
音楽的には新しいバイブスを探して、新しいムードやメロディを考えている。そして、一番大変なスタジオの作業は2人で一緒にやっているんだ」
Stefano Amalfi「僕の方が機材やスタジオに慣れているから、2人の抽象的なアイディアを音楽という形に変換させる部分を担当している。プレプロダクションからマスタリングまで細部にこだわって楽曲を最初から最後まで作っているよ」
——エレクトロニックミュージックに傾倒するきっかけを教えてください。
Nana Duah「それは10歳のとき、初めての師であるIvan Folloniに出会ったときだ。当時、彼はイタリアでもっとも重要なクラブでマネージャーをしていた。彼が僕に音楽を紹介してくれたんだ。でも、14歳になるまではクラブに入れてもらえなかったから、寝室でエレクトロニックミュージックをカセットで聴いてたよ」
Stefano Amalfi「初めて音楽と出会ったのは6歳ごろ。具体的には、親に強制的にピアノレッスンを受けさせられたときだね。何年もクラシックを勉強しているうちに、親の影響もあってエレクトロニックミュージックに興味を持ち始めた。
14歳の時にDJをしている友達と出会って彼がプレイするところ見ているうちに、自分も音楽をミックスできるのではないか、と思うようになったんだ」
——どのようなアーティストに影響を受けてきましたか?
Nana Duah「自分にとって一番近く、影響力があったのは、両親と一緒に聴いていたマイケル・ジャクソン、マーヴィン・ゲイ、ケニー・ロジャース、ドナ・サマー、ライオネル・リッチーかな。他にも大勢いるけど、長くなっちゃいそうだ(笑)」
Stefano Amalfi「ベートベンなどのクラシックからイノベーティヴなFKJまで、幅広く常に好奇心を持って音楽を聴くのが好きだ。今の自分の音楽にもっとも影響しているのは80〜90年代のエレクトロニックビートやファンク、あとはシカゴハウスかな」
——アルバムに関して伺います。「after Tokyo」というタイトルの由来は?
Stefano Amalfi「このアルバムを作るきっかけとなったのが、2018年に初めて東京に行ったときだったんだ。Contactで開催されたパーティ『LiLiTH』ですごくポジティヴなバイブスとみんなの優しさを東京という離れた街で体験できたことを記念してアルバムを作ろうと決めたのさ」
——具体的には、東京でのどんな経験が本作に影響しているんですか?
Nana Duah「日本人は、音楽に対して徹底的に向き合っていると思う。それはクラブで音楽を楽しむオーディエンスや新しいサウンドを常に研究する日本のアーティストから感じ取れた。そんな日本でのギグやアーティストたちと過ごした時間の中で、音楽が文化や言語も違う観客に最高の体験を届ける一番いい方法なんだと気付いたんだ。それが今作におけるクリエイティビティのコアだね」
Stefano Amalfi「僕らにとって東京は、本当の意味での初めての国際的な経験だったんだ。それはクリエイティヴに対する考え方や音楽制作の体制について、ものすごく影響したってことなんだ」
——その話を聞くとTomomi Ukumoriをフィーチャーした日本語の楽曲が収録されていることにも納得できます。
Nana Duah「日本の文化がとても好きだから、アルバムでも日本人のアーティストとコラボをしたかった。親友のDazzle Drumsに相談したらTomomiを紹介してくれて、彼女の歌声を聴いたときに適任だと感じたんだ」
——これまでにも「BLACK PARADISE ep」などで、NAOKI SERIZAWAやDazzle Drumsをリミキサーに起用してますよね。
Stefano Amalfi「僕らにとってパートナーから正直なフィードバックをもらうことはすごく大事なんだ。それは違う環境や文化で育ったアーティストであればなおさらね。
あとは、彼らの音楽に向き合う姿勢が僕らと同じだったことがすごく嬉しかった。だから、友達になれたんだと思う。そして素晴らしい作品を提供してくれたしね」
Nana Duah「彼らは僕らのプロジェクトを最初から信じてくれて、世界に届けるのを手伝ってくれた。彼らがくれた大きな可能性にすごく感謝してる」
——CREW LOVE所属アーティストのピロウ・トークやGreg Paulusとの共作もありますね。
Stefano Amalfi「彼らのサポートを通して音楽に新たな深みや質感が生まれたと思う。“Black Paradise”以降とてもいいパートナーシップで活動をしてきたピロウ・トークとは絶対にファーストアルバムでコラボしたいと思っていたんだ。
それとGregがアルバム全体のプレゼンテーションについてアドバイスしてくれた。オープニングを飾る“Benji”がそれを物語ってるよね」
——今回のアルバムで一番苦労したことは?
Nana Duah&Stefano Amalfi「アルバムそのものだね(笑)」
——最後に、あなたの東京でのお気に入りの過ごし方を教えてください。
Nana Duah「レコードを聴いたり、買ったりするのはLighthouseが一番だね。焼肉はJumbo!あそこは最高級の和牛を食べることができるからね。
あとは、街の至る所で美味しくて安いラーメンが食べられるのが本当に最高だ。 それに、渋谷と新宿には小さなバーがたくさん並んでいて、特に呑んべい横丁やゴールデン街は、古い日本家屋のお店が多いから伝統的な雰囲気を感じながら美味しい日本酒や国産ウイスキーが飲めるのもいいよね」
Stefano Amalfi「MIOとNAOKIがオーガナイズしてる『LiLiTH』は東京で一番クールなパーティだと思うよ! あとは、オルタナティヴな夜を過ごしたいときはDazzle Drumsが毎月第一日曜にAoyama Zeroで開催している『Block Party』。
それ以外にも、DJ Bridge Bar、Azumaya、Aoyama TunnelやOathといった小さいDJバーは、ハイクオリティなDJがいて友達と楽しい夜を過ごすのに最適だよね」
Lowheads
「After Tokyo」
Wolf + Lamb
photo by Masanori Naruse