過去20年間、一度たりとて休むことなく『フジロック』に携わってきた男:ブライアン・バートンルイス。
オールナイトフジやDAY DREAMINGといったステージのプロデュースに加え、MCやメディアへの喧伝者として『フジロック』の全てを観てきた彼が、20周年という記念すべきこの機会に貴重な写真とともに思い出を語る。
絶えず盛り上がる会場とは別に、実は裏では数々の事件が巻き起こっていた……誰も知らない『フジロック』の真実がここに!
ブライアンの記憶に残る一大事“アンダーワールド事件”とは…
——ブライアンさんは第一回から全て参加しているんですよね?
毎年参加してるね、皆勤賞。
——いまや伝説とされる初回はどんな感じだったんですか?
初日に台風が来て2日目は晴れたんだけど、ステージのダメージが大き過ぎて中止になっちゃったんだ。
台風の規模がハンパなかった。
——初開催ってことは、スタッフも慣れてた訳じゃないですよね?
そう。しかもスタッフも少なくて、僕がやってた通訳部門も全部で8人ぐらいだった気がする。今では100人以上いるのにね。
お客さんも初めてだからみんなTシャツ、タオルに短パンっていうラフな格好で来てて、最終的には本部や楽屋も病室と化してて……。
——もうフェスなんかできる状態じゃない?
いやいや、そんな中でも俺はラジオの生放送をやらなくちゃいけなくてさ。それも深夜2時から。
周りが病人だらけで小声で番組をやってて、確かその途中で中止が決まったんだよね。
でも1日目はホントに凄まじかった。台風でステージが倒れそうだったけど、レッチリまでしっかりやって。
そして2日目は中止になっちゃって、仕方ないから帰りに浅野忠信と富士急ハイランドに行った(笑)
——そうそう、1回目は富士山の麓でやったんですよね。
富士山の天神山スキー場ね。
ただ大雨だったから、このとき唯一見れたのは、電気グルーヴのライヴのときにピエール瀧が着てきた富士山の着ぐるみだけだったんだよね(笑)。
2回目は場所を変えることになったんだけど『フジロック』らしい場所がなかなか固まらず、最終的には豊洲で開催した。
——これまで見たステージで最高だったのは?
俺はWHITE STAGEのMCをしてたんだけど、当時はBeatinkがプロデュースしてて毎回魅力的だったよ。
——では、この20年で最も印象的だった出来事は?
いろいろあるけど、今日のところはアンダーワールド事件かな。
当時俺はスペースシャワーTVの番組で色々なキャラを演じてたんだけど、その中にドーパミンライダーって奴がいてさ。
そいつは常にバイクに乗ってるんだけど、それを『フジロック』でやろうってなって。
アンダーワールドの楽屋前でバイクを跨いで待機してたら最初はスルーされ取材できず、何が何でも取材をしようと思った俺はバイクでステージ袖に登ったんだ。そしたら、アンダーワールドが取材に応じてくれたっていう(笑)
しかも本人が気に入ってライヴDVDにも収録されてた。
——スゴいことをやってましたね。
「毎年変な格好で突撃取材するのが俺のミッションだったんだ。
プライマル・スクリームのボビーなんて、俺のヘルメットを気に入ってそれを被ってライヴに出てたよ(笑)。
あと、忘れられないエピソードと言えば、ジョージ・クリントンのライヴやめない事件かな(笑)」
——それはどんな事件ですか?
真相激白!伝説の??? ライヴやめない事件(笑)
——それはどんな事件ですか?
その日のトリがジョージ・クリントンだったんだけど、終了予定時間になってもまったく終わる気配なし。
そのまま1時間以上プレイしたっていう(笑)
——えっ! そのときステージ裏ってどんな感じだったんですか?
もうヤバいねって。でも誰も止められないのよ。
ジョージ本人は神がかってるし、お客さんもみんなノリノリだし(笑)
——最後は舞台監督さんが出てきてそろそろ〜みたいな?
いや、彼自身コズミックな世界がある人だから、ステージの終了は人が指示するもんじゃないみたいな感じで。
あの人は宇宙と交信してる人だから。でも、最後は電源を落とされたんだけど(笑)
その後も生楽器で演奏し続けてて、その姿がとにかくカッコ良かった。
しかも、彼は確かレッチリのライヴにもサプライズ出演してコラボしてたよ。
——『フジロック』にはたくさんのエリアがありますが、印象に残っているエリアは?
たくさんあるけど、じつは企画倒れで面白いのもあって、マニアックなお化け屋敷とかあったね。しかも結構本格的な。
でも、気付いたらなくなってた気がする。あれは伝説だね(笑)
——世界一小さいクラブもありましたよね。畳二畳分ぐらいの。
ミニチュア・オブ・サウンドだっけ?
あの場所にはいろいろ逸話があって、もとは資材置き場だったんだけど、そこにいろんな人が居着くようになっちゃって、クラッシュのジョー・ストラマーがそこでキャンプしたり。
だから、今でもそこには彼のメモリアルがあるんだ。
——そこはやがてバーになり、ステージになり、今ではTHE PALACE OF WONDERになってますね。
でも、かつてはそこにケミカルとか大物アーティストもお忍びで遊びに来たり。
そうだね。最初は小さかったけど、面白くてなんか危ない感じがする人がたくさん集まってた。
夜遊びする人の憩いの場みたいな感じでね。その頃はまだオールナイトフジも無かったし。
——オールナイトフジはいつからでしたっけ?
確か2002年頃かな。最初は、夜中に勝手にスペースシャワーTVのブースの音響をつけてDJしてたのが始まりで、スタッフに怒られては消してを繰り返してたら結構客が集まって(笑)
そんなにやりたいんだったらってオレンジコートでやれってことで翌年から。
――最初はどんなラインナップでしたっけ?
トランスもあったり、結構面白いラインナップだったと思うよ。
当時は野外パーティが盛り上がってて、その感覚と『フジロック』のレイヴ感が俺の中で被るところがあったんだ。
それで、夜な夜な音を浴びて楽しむコンテンツが『フジロック』には足りないって勝手に思ってね。それを『フジロック』に盛り込もうって企画だったんだ。
――今年はどんな内容になるんですか?
今年は、UKからオービタルを呼んでるよ。それにKEN ISHII。UKと日本のテクノ頂上対決。そこにDJ NOBUが加わって、さらに浅野忠信のバンド:SODA!も。もちろんBBLもやるよ!!今年は初日の夜に『Café de Paris』で開催。奥の奥の奥まで足を踏み入れた人達のみが体験できる極上の遊び場を用意してるからお楽しみに!
——では最後にブライアンさんなりの『フジロック』の楽しみ方を教えて下さい。
基本は“寝ない”ことと“同じ場所に5分以上いない”こと。
超観たいステージも5分で次に行くことだね(笑)
EVENT INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL’16
2016.7.22(FRI)~24(SUN)
新潟県湯沢町苗場スキー場(Niigata)
先行枚数限定:¥18,000(1日券) / ¥34,000(2日券)/ ¥43,000(3日券)
一般発売:¥19,000(1日券)/ ¥34,000(2日券)/ ¥36,000(3日券) ※6月4日より発売開始
SIGUR ROS / BECK / RED HOT CHILI PEPPERS / DISCLOSURE / WILCO / Ken Yokoyama / JAMES BLAKE / SQUAREPUSHER / BATTLES / BIFFY CLYRO / THE ALBUM LEAF / THE AVALANCHES /The Birthday / avengers in sci-fi / BABYMETAL / BEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALS / CON BRIO / COURTNEY BARNETT / Lee“scratch”Perry / Baauer / DJ HARVEY / THE INTERNET / JACK GARRATT / JAKE BUGG / KAMASI WASHINGTON / MURA MASA / OLIVER HELDENS / ROBERT GLASPER EXPERIMENT and more
ブライアン・バートンルイス
タレント、DJ、MC、ラジオパーソナリティ、そしてオーガナイザー、様々な顔を持ち、エンターテインメント業界で幅広く活躍。『フジロック』ではステージMCから企画まで様々な形で関わり、2000年代以降は世界中から人気DJ、アーティストを招聘するオールナイトフジ・ステージを手掛ける。同ステージは今年も開催。
Photo:宇宙大使☆スター/Masanori Naruse