果たして今の世の中は正しいのか……
最新作に刻まれた彼らの視座

海を越えた“世界”を直視しながら、自分たちが今生きている“世界”を疑う。その姿勢はyahyelをyahyelたらしめている根幹であることは間違いないだろう。そして、それは彼らの作品の随所に現れている。11月にリリースした最新作『Flesh and Blood』でも、そんな気概ばかり。今作を通して垣間見えるyahyelの姿とは……。

——新作は1曲目からタイトルが“Kill me”。これは何について歌っているの?

池貝 この曲は実は最後の方にできた曲で、アルバム全体のイメージができた後、それを表明する曲を作りたくてできた曲なんですよ。だから、タイトルも“Kill me”という強い言葉を使ってる。歌詞の世界観も自分ひとりの視座。まわりの人たちが変わっていくこと、いわば同じ船に乗っていたはずなのにいつの間にかまわりが変わってしまう恐怖を歌っているんです。
それはアルバム全体を通しても出ていることなんだけど、この曲のサビは特にそれを強く打ち出してますね。もしも既存の関係が変化して、今までの関係が嘘だったとしても嘘をつき続けてくれ。それができなければ自分を殺してくれっていうような。世間では変化することに対してポジティブな風潮がありますけど、それが是であることを最初から否定しているんです。

——一般的には人は変化するもの、それが当然だと思われがちだけど。

池貝 もちろんそれは仕方がないことだと思うんですけど、それに対して無自覚でいることは違う。変化を理解した上で進んでいくべきで、社会のプレッシャーや同調圧力に無自覚すぎると思っていて。そもそも明確な視座がないことが問題であり、この曲はそういったことの表れなんです。

——誰かに敷かれたレールには乗らないぞってこと?

池貝 乗らないというよりは、乗る前にもっと考えてみたらっていう提起。考えることは大事なんですよ。

——その他の曲も様々な主張が込められていると思うんだけど、たとえば“Once”は?

池貝「これは“一度”とか“かつて”とか、すごく瞬間的なことを意味している曲だから“Once”なんですけど、そもそもは表現したい空間があったんです。そこは窓がついた部屋で、なかには自分ともうひとりの人間がいて、そのふたりの関係性の中だけで時間が経過してしまっていることをなんとか繋ぎ止めようとしているんです。
一方で、窓の外では世界はそれに関係なく進んでいる。ただ、時間が少しだけゆっくりになっている部屋の中では、自分たちが変わっていくことを止められず、そしてそれは徐々に歪んでいく。つまり、相手に対する感じ方や印象が少しずつ歪になっていく感覚を描写した、個の関係の中で生まれた曲なんです。ミュージックビデオでは、それを視覚化しているんですけどね。

——アルバムの中で1曲だけ雰囲気が違うなって思った曲があるんだよね。“The Flare”なんだけど。

池貝 その曲は破壊衝動があるんですよ。それ以外の曲は描写というか“こういうことが起きてるけどどう思う?”っていう挑発というか問いかけ。事実の提示をしているけど、“The Flare”だけは“こういう女がいて、全部破壊していったけどどうする?”みたいな感じ(笑)

篠田 そういう時期だったんだよね(笑)

池貝 歌詞の中で“ユース”って言葉が出てくるんですけど、若さっておそらく何かしらの破壊の上で成り立っていると思うんです。この曲は最終的にはそういったことを歌っているんです。破壊と対話している感じで。

<次ページ> 思考停止による世界の危惧を鑑み 彼らは存在意義を問い続ける

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yahyel
『Flesh and Blood』

Beat Records

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- FLESH AND BLOOD LIVE - 1st ALBUM RELEASE PARTY

2016.12.16 Fri

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2016.12.31 Sat

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