DJ EARL

グローカリゼーションが生んだラシャドに続く若きヒーロー
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愛嬌抜群の風貌。DJアールは髭を生やし、いかつい体格をしていてもどこか子供っぽさが残る。

シカゴを源流としたアンダーグラウンドサウンド、ジューク〜フットワークは2010年代のダンスミュージックに大きな影響を与えたジャンルのひとつだ。今は亡きDJラシャドを筆頭に世界に伝播していったこの音楽は、もともとはシカゴで始まった小さな動きでしかない。

西海岸、東海岸と大別されるようにアメリカの音楽カルチャーもNY、LAを大きな拠点として、シカゴは軽視されがちである。都市の規模は2都市と比較してもなんら劣らないし、デルタブルースやハウス発祥の地であり、ジャズカルチャーもクラシックも有名だ。
DJアールもそんなシカゴでキャリアを磨いていった。学生時にはオーケストラに所属し、サックスやフルート、パーカッションを担当。ジャズバンドにも影響を受けた。その中でダンスにも情熱を注いだ。

根っからの音楽好きであったアールは、徐々にDJラシャド、DJスピンらTeklifeクルーの動きを知り、彼らと行動をともにすることとなる。
フットワークはもともとダンサーのためのサウンドとして形成されていった。より面白いムーブのためのビート、テクスチャーを。その哲学はダンスミュージックの原点ではあるが、現行の高揚感重視、騒げる音楽では忘れられていた価値観かもしれない。

フットワークのムーヴメントが拡大する中で、DJアールは、プロデューサーとしてTeklifeクルーとともに注目を集めているが、彼のサウンドはまだまだ進化の過程である。昨年リリースされたアルバム「Open Your Eyes」を聴けば、一目瞭然だ。

奇才の名をほしいままにしている電子音楽家ワンオートリクス・ポイント・ネヴァーが参加する一方で、ヒップホップやUKベース、ジャズ、ファンクなどの音楽ジャンルの破片の集合体であり、その革新性の背後にはしっかりとオーセンティックな音楽知識が隠されている。

フットワークの今後を担う新星は、シカゴの局地的な音楽を高め、世界に飛躍する。偉大な先人の遺した道を半ばいったが、そこからは彼が切り拓く道となるはずだ。

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