David Morales、テクノ四天王、Ninja Tuneに端を発する彼のルーツを辿りつつ、ハウス再興で着地したTJOインタビュー第一弾に続き、今回は現行のシーンにより深くフォーカス!
ハウスが盛り上がる一方でEDMは今……レームダック状態にあるEDMはもはやオワコンなのか!?
そして、ポストEDM最右翼、近年の大型フェスのメインステージを沸かせる“テックハウス”。もはや渾渾沌沌、幅広すぎてブラックボックス化している感すらあるその実態とは?
さらには、今、世界の注目を集めるJohn Summit大解剖に加え、日本のシーンが孕む問題点。ラップインシデントで地方の危機!?
TJOに聞きたいことをとにかくぶつけるインタビュー第二弾。日本が誇るダンスミュージックマスターに訊く、カオスとフラクタルの2026最前線。教えてTJO先生!
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◆ハウス回帰とEDMオワコン問題
――今のダンスミュージックを俯瞰して見た時に、何が一番面白いと思いますか?
TJO:やっぱりハウスですかね。今の時代にリヴァイバルしたハウスが一番面白いと思います。
――アーティストでいうと?
TJO:ProspaやANOTR、もう少しメジャーっぽいところでいうとD.O.D.とか。彼は以前アッパーな路線でしたけど、今はポップな路線に振り切って歌物を作ったりしてブレイクしてます。去年はCalvin Harrisの“Sweet Nothing”のリミックスがヒットしましたね。D.O.D.の作風は2020年代に帰ってきたピアノハウスというか、どこか懐かしい感じがするんですけど、それが今のフロアでかけても驚くほど盛り上がるんですよ。
――それは日本のフロアでも?
TJO:日本でもです。この温度感でこれだけ盛り上がるなら、もうこれしかないなって感じですね。
――世界的にハウスが盛り上がっている要因を改めて教えてもらえますか。
TJO:今、一線で活躍している若いクリエイターの親世代が聴いていた曲がハウスで、彼らは子供の頃からハウスに慣れ親しんでいるというのがあると思いますし、先ほども話しましたがダンスミュージックの歴史が育まれ、もはや20代、30代の若者だけの音楽じゃなくなったこと。40代、50代、60代も含め、あらゆる世代が楽しめる、その最大公約数にハウスが当てはまっているのがポイントだと思います。
さらにはEDMムーブメントの反動もありますよね。当時は激しい音が好まれていたけど、今はそれが少し落ち着いてきた。加えて、コロナ禍を経てパーティ感にも変化があって、近年テクノリヴァイバルが叫ばれていますが、それと同様にハウスの開放感みたいなものも受け入れられているんだと思います。あとは、クラブで流れてもよし、日常生活で聴いてもよし、車の中で聴いてもよしといった汎用性があるところも要因じゃないですかね。
――ダンスミュージックシーンにとっては、“EDM以降”、“ポストEDM”がひとつの命題だったと思うのですが、ハウスやテクノが解答になっている?
TJO:どれも細分化して熟成されている感じがしますが、それもEDMを経たからこそなんですよね。テックハウスもEDMっぽいものがたくさんあったり。それが答えなんだと思います。
EDMムーブメントによってダンスミュージックが一気に世界的な認知と支持を得て共通理解ができた。それは大きな成果で、「EDMは終わった」という人がいますが終わったわけじゃないんですよ。一般的になったということなんです。
――以前、クラブで「EDMはオワコン」、「EDMと言うのも恥ずい」みたいな若者がいたんですが、そんなことはない?
TJO:人によってはあるのかもしれないですね。EDMというと2010年代に盛り上がったサウンドのイメージが強いので。ただ、EDMの特徴であるブレイクがあって、ビルドで盛り上がり、ドロップで爆発するという一連の流れは今や当たり前のものになり、EDMをダサいと思っている人たちですら自然と享受しているんですよ。だから、終わっているというより、それだけ浸透したということ。僕はEDMという言葉の問題、経年劣化みたいなものでしかないと思います。実際、クラブでもEDMをかけている人はまだまだ多いですからね。それがEDMと捉えられているかどうかは別として。
◆John Summitから垣間見えるテックハウス最前線
――今回、特にTJOさんに聞きたかったのは、先ほども話に出てきた“テックハウス”。もともとはテクノとハウスの中間という定義だったと思うんですが、いまやそれが瓦解しているように思えるのですが。
TJO:人によって定義は違いますが、今のような形になった背景には、EDM以降にテックハウスがメインステージに持ち込まれるようになったことがあると思います。そこでテックハウスの多様化が進み、音数の少ないEDM、ベースハウス化したテックハウスなど色々なテックハウスが派生してできてるんですよ。
――例えばJohn SummitやBiscitsもテックハウスの範疇に収められていますが、両者スタイルは全然違いますよね。もはやテックハウスが使い勝手のいいキーワード化され、中身はブラックボックス化してるんじゃないのかなと。
TJO:確かにそういう側面もあるかもしれないですね。ただ、基本的な共通認識としては、2010年代のアゲアゲなEDMサウンドとは一線を画すもの、グルーヴの持っていき方が違ったり、音数が少ない中でも映えるもの、よりモダンなもの、多くの人がクールだと思うものがテックハウスとして機能しているのかなと思います。
――“クール”というのはひとつのキーワードとしてあるかもしれないですね。ちなみに、最近John Summitにどハマりしているんですが……。
TJO:彼は最高ですよね。めちゃくちゃかっこいいと思います。
――彼はテックハウスだけじゃなくハウスもやりますよね。それこそMayan WarriorやDay Zeroなどに出演していたり。
TJO:John Summitが面白いのは、完全に新しいジャンル感で次世代のメインステージを作っているところ。従来のアクトはビッグルームやそれこそEDMが常套でしたけど、彼はシカゴ育ちでハウスを聴いて育ち、テックハウスの畑から上がってきて、なおかつUKガラージやドラムンベースなどの要素も取り入れている。新しい世代のサウンドを積極的に取り入れ、それをメインステージに上手に還元していると思います。
――確かにSub Focusと曲を作ったりしてますからね。ただ、一方で懐かしい感じ、かつてのハードハウスのように聴こえる部分もあるんですよね。UKとUS、とりわけミレニアムのニューヨークを彷彿とさせるような。
TJO:そうですね。そこもまた彼のユニークな点だと思います。あのスタイルはEDM以降のDJの中でも特殊ですよね。
――選曲も例えばCoachellaでNo Doubtのリミックスをかけていたり、しいていうならオネエ感を感じます。
TJO:そうですね(笑)。ネタ的な部分でいうと、今はJohn SummitとDom Dollaが懐かしの曲のネタ使いがうまいと思います。2人とも今は世界的なトップスターですよね。
――日本でJohn Summitのようなテイストは流行るんでしょうか?
TJO:だいぶ浸透していると思いますよ。現場で見ていてもお客さんは慣れてきた感じがする。“Don’t Believe It”なんかはウケますし。Jonas Blueの来日公演でもめちゃくちゃ盛り上がりました。
ちなみにJohn Summitは今年のTomorrowlandで新曲をかけてたんですけど、それがまた80‘ディスコみたいな感じですごくいいんですよ。Armand Van Heldenの“I Want Your Soul”のようなテンションの曲で。彼のそういった絶妙な匙加減、メインストリームとはちょっと違うところに持っていくセンスはスゴいですね。
――今っぽくもあり、昔っぽくもある、あのスタイルはTJOさんならできるんじゃないかなと思うんですが。いろいろな曲を知っているTJOさんなら。
TJO:やってみたいですね。彼は音楽的な知識が相当あると思いますし、同時にちゃんとポップでもある。そこがまた最高だと思います。
◆TJOが渇望する今後流行してほしいサウンドは?
――ハウス以外だとUKガラージも勢いがあると言われていますがどうですか?
TJO:ありますね。広がりはすごく感じます。
――UKガラージはいまやポップスでも取り入れられていますが、一般化しているかといえばそうではない。そのあたりのジレンマはどう思います?それがアンダーグラウンドの宿命なんでしょうか?
TJO:UKガラージや2ステップは、オシャレでジャジーなコード感とダンサブルにも持っていけるビート感を擁しているのでK-POPのようなジャンルにすごくハマると思います。実際すでにその要素は取り入れられていますしね。ただ、これもまたEDMと同じで、UKガラージが流行らないのではなく、一般的にはそれがUKガラージであることを知らないだけで、すでに大衆化している部分はあると思います。
――音楽的な要素は広がる一方で名前は浸透しない、大きな名刺の影に隠れてしまっていると。
TJO:そうなんです。すごくオシャレで耳障りがいいので、聴けばみんな好きになると思うんですけど、それがUKガラージであると認識するかはどうかはまた別なんですよ。ただ、UKガラージの中でもグライムやスピードガラージ、極端にダンサブルなものになるとまた事情は変わってくると思います。けど、UKではもう第二、第三世代まで育ってきていて、アンダーグラウンドの域を超えた感があります。
――UKガラージは、世界でも局地的に大きな盛り上がりを見せていて、オーストラリアなどもスゴいらしいですね。
TJO:みたいですね。僕もよく聞きます。日本でそういった流れをいち早く察知しているのがCIRCUS TOKYOですよね。海外の潮流をしっかりと読んで日本に届けていて、その審美眼は素晴らしいと思います。それに今のUKガラージやベースミュージックに対する若い人たちの熱量は本当にスゴいと思いますね。
――一方で流行しているのがハードテクノ。これについてはどう思いますか?
TJO:海外のフェスで聴き慣れている人が増えてきてますし、いまや六本木や銀座など、VIPの人たちにも人気ですよね。ある種ファッション的に捉えている人も多いのかなと思います。
――あと、世界的にはトランスが再び盛り上がりそうな気配があります。Tiëstoが回帰し、Armin van Buurenもその傾向がある。
TJO:それは僕も同感ですね。UKガラージの現場に行っても海外ゲストが4つ打ちをかける時にハードハウスやトランスを入れているんですよ。スピードガラージと親和性が高いというのもあると思いますが、そうやって他ジャンルでも使われるということは再評価されている証左。結局、流行にはサイクルがあるんだなってつくづく思います。
――先ほど話に出たMousse Tの“Horny”、より大きなところではBasement Jaxxの“Where’s Your Head At”、その前はModjoの“Lady”とか、過去の名曲が次々に再評価されて新たに生まれ変わったりしてますからね。
TJO:新しい曲が次々と生まれる一方で再評価の波があるのは、やっぱり時代を重ねたからこそで、かつ、やっぱりいいものはいいということなんでしょうね。
――個人的にはHamdiなどがTim Deluxeの“It Just Won’t Do”をよくかけていて、Underwater系辺りがきてもいいんじゃないかなと思うんですけど、TJOさんは今後に関してどんな方向性を望んでいますか?
TJO:最近はハウスの中でもよりディスコなサウンドが注目を集めていて、それがより波及していくと嬉しいですね。それこそDimitri From Parisみたいな。
――Dimitri From Parisといったらもうガッツリディスコですね。
TJO:あのぐらい生音っぽい感じでもフロアがキープできるようになったら最高。すでにANOTRの“Talk To You”がそんな感じなので、いけるような気がします。
――ディスコは日本では難しい気もしますが。
TJO:そんなことないと思いますよ。みんな体に馴染んでますから。Earth, Wind & Fire然り、最近ではBruno Mars然り。高揚感や一体感でいえば、ディスコは圧倒的だと思います。あとは単純に強いキックじゃなくてもフロアの空気が作れるようになったら嬉しいですね。
――まだまだそこは難しい?
TJO:難しいですね。僕がオールミックスのクラブでやる機会が多いからなおさらなのかもしれないですけど。ただ、そこでも生音っぽいキックで盛り上がることができたら嬉しい、そうなったときにやりたいことはたくさんあるんで。
◆地方に危機!? DJには夢がない!? 日本の現状
――以前から日本は世界の潮流と時差があると言われていますが、そこはまだ変わらないと思いますか?
TJO:日本は良くも悪くも独自のカルチャーが確立していて、それが世界のタイミングとの誤差を生んでいる気がします。ただ、若干遅れたとしても入ってはきてはいるので悪いことではないと思いますけどね。
――日本にも良いダンスミュージックのアーティストは数多くいると思うんですが、J-POPなどに比べるとあまり認められていません。なぜなんでしょう?
TJO:そこは様々な要因を孕んでいると思いますね。例えば規模感の違いだったり、単純に距離の問題だったり。
――そこはインターネットでは埋められない?
TJO:難しいでしょうね。あとはアジアを見渡した時に各国様々でトレンドが早いところもあれば遅いところもある。そのあたり一緒くたにされているところもあるかもしれない。
――例えば世界的に評価されている“アニソン”に国産ダンスミュージックが使われたら何か変わったりしますかね?
TJO:変わると思います。それくらいアニソンが特殊すぎるということでもありますが。
――ただ、J-POPでも4つ打ちのダンスミュージックライクな曲はたくさんありますよね。
TJO:そこがJ-POPを含めたポップスの懐深さであり、取り入れ方のうまさだなと思います。ただ、日本のダンスミュージック自体は独自の進化を重ねていて、それもまた面白いですよね。
――TJOさんは全国津々浦々でDJをしていますが、コロナ禍以降、何か変化を感じますか?
TJO:今は地方が大変ですね。それはかなり感じます。
――その要因は?
TJO:大きいのはラップの台頭ですよね。それによってダンスミュージックのパーティを開催できる場所が確実に減っている。特に地方はJ-RAPが圧倒的に人気ですね。
――Licaxxxさんも同じことを言ってました。みんなDJではなくラッパーを目指してしまう、もっとDJが憧れの存在にならないといけないと。
TJO:そうですね。DJの人口自体は多いと思うんです。以前に比べて始めやすくなったし、DJになるための環境は整っているんですけど、一方で海外の情報が入りづらくなってる。今はメディアも全然ないですしね。
そうした中でラップやボカロとか選択肢が増えて、若い人たちがダンスミュージックを選ばなくなった。良くも悪くも海外の音楽を聴く必要がなくなってしまった。これは映画も同じで、洋画があまり観られなくなってきてますよね。
――始めるのが容易になったからだと思いますが、DJの副業化も進んでいますよね。本業が別にあり、週末だけDJをする人が増えています。
TJO:それは一概に悪いことではないと思うんですが、簡単に始められる一方でやめるのも簡単になっている。それはちょっと残念ですね。
――どうすればいいんでしょう?
TJO:こればかりは地道にやっていくしかないんじゃないですかね。その中でブレイクスルーになるアーティストが生まれ、そこに引っ張られてみんなが上がっていくみたいな。ボカロなどはまさにそうした経緯がありますし。ただ、日本独自のカルチャーもしっかり存在しているので、それも大切にしていかないといけないと思いますね。
――今だと¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uさんが世界で活躍していますが、なかなかその姿を日本で見ることができないのが残念です。
TJO:それは仕方ないですよね。日本よりも海外の方が需要がありますし、単純にギャランティが高いというのもあると思います。
――海外では一晩で数百万みたいな話もありますが、逆にいえばDJはそれだけ夢があるということでもありますよね。MCバトルの優勝賞金が一晩で稼げるみたいな。
TJO:そうなんですよね。DJは決して夢のない仕事ではないんです。世界で活躍している日本人もいますし、そこは知ってほしいところですね。
#3に続く

TJO
幼少時から蓄えてきた膨大な音楽知識、今なお劣ることない音楽への情熱を糧にあらゆるジャンルを縦横無尽に行き交う日本屈指のオープンフォーマットDJ。令和における日本ダンスミュージック界の生き字引にしてトップキュレーター。全国各地のクラブで熱狂を生み出し、海外の大型イベント・フェスでも活躍。また、ラジオ・パーソナリティー、音楽プロデューサーとしても辣腕を振るうマルチタレント。
