SPRAYBOXへのインタビューもいよいよラスト!

彼らの成り立ちに始まり、UKガラージの魅力、そして今の音楽性を伺ってきたが、そのバラエティ、懐深さはダンスミュージック随一。世界で拡大するのも納得のポテンシャル! 今後の動向がかなり楽しみだけど、一方で国内では……。

世界屈指のガラパゴス・日本でUKガラージはどうなっていくのか。

そして、そんな国内で気を吐くSPRAYBOXの未来は?

個人的には、劇的に流行するというより、もっと多くの人に気軽に楽しんでほしいUKガラージ。彼らも言う通り、音楽的にはもうすでにある程度浸透しているので、それはそれでヌルッとより浸透しつつ、今後はプロデューサー&DJがもっともっと増えるといいな〜と。そのためには彼らの活躍は必要不可欠! 頑張れSPRAYBOX!!!!!!!!

▶︎▶︎▶︎東京のカオスに酔いしれUKガラージで竜吟虎嘯…世界に挑むレーベル誕生の軌跡!SPRAYBOXインタビュー#1

https://floormag.net/spraybox001

▶︎▶︎▶︎日本の令和UKGの草分けSPRAYBOXインタビュー#2 世界を踊らせるUKガラージの魅力とは? 今が旬のDJは?

https://floormag.net/spraybox002

◆◆◆UKガラージの課題、サウンドは浸透するも…

――UKガラージは流行しますかね?

kyo:日本にも少なからず基盤はあると思っています。というのも、2000年代に一度2ステップのムーブメントがあって、平井堅さんやm-floさんが2ステップを取り入れてましたからね。

――2ステップというとCraig Davidとか流行りましたね。

kyo:そうですね。今はその次のタームだと思っていて、去年はSPRAYBOXとして「ULTRA JAPAN」に出演させていただいたり、個人的にはすでに(日本でも)盛り上がっていると思います。この波がどこまでいくかは未知数ですが、僕らとしてはそこに貢献していきたいですし、より一層盛り上がると信じています。

kyo

Nizikawa:ガラージがガラージとして認識された上で流行するかは微妙なところですが、音楽的な形式として浸透し、みんなが知らないうちにガラージを聴いている……「あのヒット曲は実はガラージだった!」みたいなことはあると思います。すでにTWICEの曲でもガラージの曲がありますし。ただ、それをみんなUKガラージとは思わないだけで。

Nizikawa

――そこが難しいですよね。ガラージがガラージだと認識されない問題。そもそも“ガラージ”って、ある年代以上はニューヨークやハウスのイメージが強かったりもしますよね。

Genick:(UKガラージ自体)そこから来ていますからね。ただ、僕の中で最近はディスコハウスが熱かったり、UKガラージのトップライナーであるsaluteも現代的なディスコハウスをリヴァイバルしていたり、(UKガラージは)ハウスと近い距離にあるのは確かですね。

Genick

Oblongar:僕らのミッションとしては、海外向けと国内向けの動き、2つの軸があって、前者は国内の素晴らしいプロデューサー・DJをパッケージして世界に届けていく。一方で後者は裾野の拡大。我々はやっぱり現場ありきでパーティをやりつつ、そこに遊びに来てくれる人を増やし、シーンを拡大させていきたいので、そのためには色々なフックを作らないといけないと思っています。

Oblongar

kyo:個々人で活動しつつも「RIP」をやったり、SPRAYBOXとして毎年年末にclubasiaで主催イベント「SPRAYFEST」をやったり、レーベル全体でこの2軸にアプローチしていますね。

Nizikawa:個人の活動とSPRAYBOXの活動が近いメンバーと遠いメンバーがいて、僕とThat Fancy Iは後者にあたるんですけど、個人活動のファンをSPRAYBOXに繋げたりもしているので、それぞれ自由に活動していければ結果は自ずとついてくるのかなと思います。

――Nizikawaさんは普段、秋葉原MOGRAで働かれていますが、UKガラージに対するお客さんの反応はどうですか?許容している人は多い?

Nizikawa:多いですし、MOGRAだけで見てもUKガラージは流行っていると思います。(フロアで)聴く機会も増えましたし。音楽的にも浸透してきていて、ここ数年はお客さんから「最近ガラージ好きなんですよ」っていう声もよく聞きます。MOGRAは他のクラブに比べるとガラージをガラージと認識して好きになってくれる人が多いかもしれませんね。MOGRAはジャンルを行き来して楽しむパーティが多いので、UKガラージはあっているのかもしれないです。

Jacotanu:僕は個人の活動とSPRAYBOXの活動が近い部類にいて、レーベルを強くしていく、イベントの価値を高めていくという意味でも個々人の吸引力をもっと意識していかないといけないと思っています。その手段としては、僕らはみんな曲を作っているので、リリースを継続して自分たちの価値を高めていくことが大事かなと。

Jacotanu

――やはりリリースは重要なんですね。

Jacotanu:あくまで手段だとは思うんですけど、色々考えた中で僕らが成長するために今できる最善策がそれで、今まで以上に結果を求めていきたいですね。ここ数年、DJだけで海外ツアーをする日本人DJが増えてきて、そこに対するリスペクトもある中、僕らが同じやり方ができるかというと今は難しいと思うんです。だから自分たちの強み、レーベルとして実績、積み上げてきた事実をストロングポイントとしてSPRAYBOX、さらには個人としても強くなっていく。今はそこを意識していますね。

――やっぱりDJだけで世界と戦うのは難しい?

Jacotanu:以前ほど難しい時代ではなくなってきていると思います。圧倒的なスキルや熱量などで魅せることができれば海外の大型フェスのヘッドライナーにまで上り詰められることを¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uさんが証明していますし。僕らもそれができればベストだと思いますが、楽曲でも勝負したいんですよ。僕らがリスペクトしている海外のアーティストもプロデューサーとして勝負していますし。ここはSPRAYBOXの共通認識だと思います。

That Fancy I:僕はSPRAYBOX にしてもUKガラージにしてもまだまだ歴史が浅いこともあって、みなさんのような大きな志はないんですけど、自分が好きになったこのサウンドを大勢の人に知ってもらえたら嬉しいとは思っています。そうした中で、他の名義でバリバリのEDMやポップスとかを作っている僕がSPRAYBOXのミッションに貢献できるとしたら、国内のユーザーに周知することだと思うんです。ガラージって幅広い音楽で、極端な話、ボーカルを乗せればアニソンとしても成立するくらいの謎の懐深さがあって、僕はそこが魅力だと思うし、好きなところでもあるんですよ。個人的にはガラージを突き詰めるよりもっと実験的なことがしたいんですよね。ガラージの中でもっとできることがある、まだまだやったことがない組み合わせがあると思うので。UKガラージを拡張するというような崇高な思いはないですけど、もっともっと色々できたら面白いかなと思ってます。

That Fancy I

――それこそUKガラージの曲がアニメの主題歌になったりしたら、一気に拡大する可能性がありますよね。

That Fancy I:可能性はゼロではないですね。m-floさんとかの例もありますし、ベースラインや4×4のファンキーな感じとかは大衆に受け入れられやすいと思いますし。面白いことが起きる余地は残されていると思います。それに、すでに普及もしているんですよ。サンプルサイトではガラージのサンプルパックがめちゃくちゃ出ていますし。ただ、それをみんなガラージだと理解していないだけで。

――またまたUKガラージ認識されない問題が……。

That Fancy I:極論、僕はUKガラージという名前を知らなくてもサウンドが受け入れられればいいと思いますけどね。

JacotanuUKガラージに入るところはどこでもいいんですよ。入ってきてくれた時に僕らのサウンドをより好きになってもらえるように努力したいし、同時に(UKガラージに入る)タッチポイントを今はとにかくたくさん作りたいですね。

――UKガラージに興味を持っている人、UKガラージのDJ・プロデューサーになりたい人は増えているんですか?

Oblongar:増えていると思いますね。僕らは自分たちがリスペクトしている音楽やカルチャーを若い世代に繋げていくことも総意としてあって、前回と前々回の「SPRAYFEST」は身体が震えるくらいのサウンドシステムを入れて音楽を体験してもらったんですよ。僕自身、大学生の時にめちゃくちゃすごいサウンドシステムでベースミュージックを浴びて、それがすごく楽しかったし、今の楽曲制作においても貴重な経験になっているので。そうした体験を若い人にも味わってほしい。

――Genickさんは長年「RIP」をやられていますが、お客さんの変化を感じますか?

Genick:2017年に始めた頃と比べると相当変わりましたね。最初は音楽好き男性客が多い印象でしたが、最近は女性客増えましたし、フェスに遊びに行く層も増えた。今は(UKガラージが)EDMの受け皿になっているところもあると思うんですよね。Sammy VirjiやHamdiといった人気アーティストのバリューがどんどん大きくなってきていますし、今後より大きくなる可能性は全然あると思います。

kyo:個人的には、今の日本のUKガラージシーンは順調過ぎてちょっと怖いところがあります。もともと小箱でUKガラージと出会って、2020年頃にConductaのKiwi Rekordsが一部で流行って……みたいな感じだったのが、ここにきてSammy VirjiでZEROTOKYOが超満員。これは想像できませんでしたね。あくまでローカルで流行り続けるものだと思っていたので当然驚きもありますし、一方でSPRAYBOXとしての手応えも感じています。世界的な流れにコミットできているからこそうまくやれている部分もあるのかなというのが正直なところです。

◆◆◆UKガラージ隆盛の中、SPRAYBOXのこれから

――最後に今後の展望を教えてもらえますか。

Oblongar:これまでステップ・バイ・ステップでやってきて、今がそのピークというか、今後はトレンドがまた変化するタイミングだと思うんですけど、そうした中でSPRAYBOXとして何か爪痕を残さないといけないという焦りはあります。そのための動き、アプローチは各自しているので、何かひっかかると嬉しいですね。今のトレンドがあるうちにレーベルとして結果を残したいです。

Genick: UKガラージがバブルのような状況になってる気がしていて、もしかしたら弾けてしまうんじゃないかという状況で我々はどう戦っていくべきなのか。海外とのコネクションも増えた今、まさにリーチみたいな状況で、Oblongarが言う通り、あとひとつ何かあればブレイクするような状態だと確信しているので、早くラストピースを見つけ出したいですね。

Jacotanu:レーベルとしても個人としても求心力をさらに高めていきたいです。ただ、個人的には今年はイベント制作に注力する年になりそうで、すでに6月、10月、11月、12月と先々まで動いているんですよ。あとは、SPRAYBOX“グライム”にあまりリーチできていないんですよ。僕は元々グライムのDJで、グライムの楽曲も作っていますし、グライムのラッパーも日本に結構いる。最近だと「ラップスタア」にも出ていたKee Roozとか。先日たまたま一緒にやる機会があったんですけど、彼はすごいグライムの踏み方をしていて面白い。今、グライムのモチベーションが上がっているので、それもSPRAYBOXでもっとやっていきたいと思ってます。

kyo:海外に向けて日本のアーティストを打ち出していくと同時に、僕ら自身も海外公演がもっとできたらと思いますし、一方で国内はSPRAYBOXとしてのサウンドをより普及させていく。この2つを大事にしていきたいと思っています。その上で、みんなが言う通り、もうひと押し必要なのは間違いなく、自分は何ができるのか考えながら活動しています。そして、それと同じくらい個人としてはイベント・パーティのあり方を大事にしたいんですよね。最近はその日のメインアーティストを見て満足してしまう方が多いような気がしていて、それももちろんひとつの楽しみだと思いますが、本来はオープン〜クローズまでの流れやここでこの曲を選ぶ意味を考えたり、パーティを全体で見る面白さもある。それを「SPRAYFEST」や「RIP」、さらには僕が出演するイベントで伝えていければなと思ってます。

――もうだいぶ言い尽くされてしまったかもしれませんが、Nizikawaさん、That Fancy Iさんお願いします。

NizikawaSPRAYBOXとしてはみんなと同じ意見で、個人的にはUKガラージの枠組みを広げて、UKのクラブミュージック、レイヴサウンドをマクロな視点で届けていきたい。Jacotanuも言うようにグライムだったり、ジャングルも積極的にやっていきたいですね。なぜなら、自分が好きなジャンルの周辺にある音楽や文化を知ることで元々好きなものがさらに好きになったり、新たな発見や楽しみ方ができるようになるので。ガラージオンリーのレーベルとなると良くも悪くもガラージの隆盛に影響を受けますし、元々自分たちがやりたかったこともそれだけじゃないので。UKガラージに固執せず、どんどん幅を広げてUKの文化をSPRAYBOXがリードしていけるようになればと思っています。

That Fancy I:今回みなさんの話を聞いて、せっかくこんなに求心的で熱のあるレーベルにいてもったいないというか、もっともっと曲を作りたいと思いました。僕はこの名義で最初に出した曲“Poppin”を自分の中で超えられてないので、今年こそはそれを超えたいです。あとは、どんどんガラージを作る若い人が出てきていて、SPRAYBOXにもたくさんのデモが届いているんですけど、僕が(SPRAYBOXの)みなさんにフックアップしてもらったように、自分から国内外の若い人たちに声をかけてコラボしたり、一緒に曲を出していきたいですね。レーベルにデモを送るって結構敷居が高いと思うので、自分からもっと手招いて、埋もれている才能あるプロデューサーをフックアップできたらなと思います。

★おまけ

最後に今のSPRAYBOXを表現するモノを聞いてみました!

ミックスから楽曲、さらにはデザインまで、6人が選ぶSPRAYBOXをご堪能あれ!

◆Jacotanu
DJ Set | RIP with Soul Mass Transit System (at CIRCUS TOKYO)


◆Genick
Spotify Playlist | SPRAYBOX Monthly Picks
https://open.spotify.com/playlist/26s5xWOVS4vPc76J6GNugw?si=ad246c3867df4e33

◆Nizikawa
Track | NUU$HI, valknee – Till Dawn
https://soundcloud.com/spraybox/spb025-4

◆Oblongar
Design | SPRAYFEST Flyers
https://www.instagram.com/p/DSUnyhLAbP7/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
https://www.instagram.com/p/DCg2mRESqSZ/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
https://www.instagram.com/p/C01rSUMyIqa/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==

◆kyo
EP | SPRAYDEPOT Vol.3
https://cygnusmusic.link/x3kmq7e

◆That Fancy I
DJ Set | Dayshift – Apr ’25 (at Sydney)

SPRAYBOX

UKのダンスミュージックシーンに影響を受けた国内クリエイターの楽曲を海外に発信するダンスミュージックレーベル。2021年11月にGenick、Jacotanu、Nizikawa、Oblongarによって創設され、現在はkyo、That Fancy Iを加えた6名をメインに活動。これまでコンピレーション「SPRAYDEPOT」シリーズ、英国のUKGレーベル「Steppers Club」とのコラボ、コンピレーション「THE RAVING SIMULATOR」など多数リリース。また、毎年年末には主催パーティ「SPRAYFEST」を開催。2024年にはイギリス、2025年にはオーストラリアでの公演も成功させている。

https://x.com/spraybox_jpn

https://www.instagram.com/spraybox_jpn/