ここ数年、よく耳にし見かける“UKガラージ(UKG)”。その音楽性は感覚的になんとなくわかってはいたものの定義を聞かれると……。非常に言語化するのが難しく、それこそ2ステップとかあったな〜なんて遠い昔。もはや平成、それも前半、もう遺産。現在進行形のUKガラージはスゴいことに!

日進月歩のダンスミュージックシーンにおいてUKガラージも御多分に洩れず着実に進化と深化を繰り返し、全世界に浸透中。近しいところのベースミュージックはもちろんハウスやEDMなどのDJもかけまくり。最近だとマイアミUMFのSebastian Ingrosso × Steve Angelloもガンガンプレイしていたし、UKガラージのDJも世界中で大人気!

そして、その勢いは日本でも……、まずはこちらをご覧あれ。

この動画を見て彼らに話を聞きたくなりました。日本のUKガラージを牽引するSPRAYBOX。

令和のUKガラージとは? 世界&日本における現状は?

とUKガラージの核心に迫る前に、まず今回はSPRAYBOXのコアメンバー6人のひととなり、そして結成までの経緯をインタビュー。これがまたみんな個性的というか千姿万態、幅広ルーツ。そして、結成までの経緯もまた興味深し。日本のUKガラージの命運を握るSPRAYBOXとは?

◆◆◆音ゲー、同人音楽、アニソン…それぞれのルーツ

――まずは、みなさんのルーツを教えてもらえますか。

kyo:僕は音ゲーがきっかけでダンスミュージックを知って、それからクラブに。最初は秋葉原MOGRAや渋谷にあったLOUNGE NEOとかに行くようになって、メインストリームのトラップやUKのベースミュージックを経由して今に至る感じです。

kyo

――最初にハマったダンスミュージックは?

kyoUKハードコアですね。音ゲーで遊んでいた頃にめちゃくちゃ人気だったのもあって。当時はkors kさんというアーティストが好きで、そこからSkrillex、Porter Robinson、TREKKIE TRAXですね。TREKKIEのパーティに遊びに行くようになって、andrewさんやSeimeiさんがプレイしていたUKガラージに……っていう流れです。

That Fancy I:僕は(SPRAYBOXに)入ったのが一番遅くて、なおかつ世代も一番下なんですけど、20歳の頃からクラブに行き始めて、最初に行ったのはMOGRAでした。僕は音ゲーは通ってなくて、アニソンやアイドルソングが好きで、MOGRAでそれがダンスミュージックと交錯しました。あとは、もともと曲作りに興味があってアニソンのブートレグを作っていた時にSPRAYBOXと出会ってUKガラージを知って。面白いジャンルだなと思ってガラージを作り始めました。

That Fancy I

――影響を受けたアーティストは?

That Fancy I:kzさん、TAKU INOUEさん、あとはヒゲドライバーさんやPandaBoYさんとか。みなさん作曲家でありながらDJもやっていて、アニソンとクラブサウンドがいい具合に混ざっている。それが僕の原体験で影響は大きいですね。それから、同人音楽経由で知ったlapixさん、aranさん、kamome sanoさんなどの楽曲からも感化されてます。

――Nizikawaさんはいかがですか。

Nizikawa:ダンスミュージックにハマったのは、音ゲー、国内の同人音楽、M3やコミックマーケット(コミケ)で売られているような音楽、そしてインターネットレーベルの影響が大きいですね。幼少期からゲームが好きだったので、その地続きにある音楽を聴いているうちにそのあたりに行き着き、ダンスミュージックが好きになっていった感じです。その結果、今はMOGRAでイベントの企画制作をやっています。

Nizikawa

――ダンスミュージックが好きになり始めた頃によく聴いていたのは?

Nizikawa:Skrillexがグラミー賞を獲ったアルバム「Scary Monsters and Nice Sprites」の衝撃は大きかったですね。あとは同人音楽シーンのHARDCORE TANO*Cという作家集団。それと“ナードコア”という変なものをサンプリングして曲を作っちゃう文化があって、そこで活躍していたBUBBLE-BさんやDJ SHARPNELさんとかに影響を受けましたね。

――Oblongarさんはどうですか。

Oblongar:僕はちょっと特殊で、みんなと通っているところは同じなんですが、(ダンスミュージックに目覚めた)きっかけは(2005年に開催された)「愛知万博(愛・地球博)」なんですよ。そこで民族音楽にハマって、いろいろ聴いていくうちに中学生の時に生音系サイケデリックトランスに触れたのがダンスミュージックとのファーストタッチです。

Oblongar

――“生音系”というと人力で演奏するサイケ!?

Oblongar:ディジュリドゥとか民族楽器を多用していた、例えばHilight Tribeとかですね。その後、海外のダンスミュージック、音楽ゲーム、ネットレーベル、さらにはアニメとかいろいろ横断していた時期があって、その後にそれら全てのカルチャーを体験として交差させられたのがUstreamで見ていたMOGRAの配信でした。

――サイケに始まり、サブカルを経由し、行き着いた先がUKガラージ?

Oblongar:DJを始めた頃はドラムンベース、UKハードコアだったんですけど、そこから徐々にBPMが落ちてUKガラージにという感じです。

――Jacotanuさんは?

Jacotanu:僕も最初は音ゲーで、同人音楽を追っていく中でハードコアやスピードコアなどに影響を受けて。当時よく聴いたのはt+pazoliteさんですね。高校生の時にめっちゃ聴いていました。そして、大学生になったタイミングでDJを始めて、当時在籍していたサークル仲間がベースミュージックを聴いていて、さらには大学一年生の頃にTREKKIE TRAXと知り合って、そこで一気にベースミュージックにのめり込んだ感じです。ただ、今やっている音楽でいうと、一番影響を受けたのはSpookyっていうグライムのアーティストです。

Jacotanu

――最後にGenickさんお願いします。

Genick:僕は音ゲーや同人は全く通ってなくて、高校生の時にYouTubeで(アメリカ・マイアミの)「Ultra Music Festival」を見たのがきっかけですね。その後、2014年に「ULTRA JAPAN」が開催されて、当時僕は未成年だったんですけど(会場からの)音漏れを経験して、それがダンスミュージックの原体験です。その後、LOUNGE NEOに出入りするようになってMaltine RecordsやTREKKIE TRAXといったネットレーベルに触れ、中高生の頃はナードカルチャーで育っていたのでアニソンや同人系、音ゲーなどサブカル系の人たちとも仲良くなって。あとは、clubasia系列のお店のスタッフもやっていたので、イベントを主催しやすい環境にいました。

Genick

――大枠でいうと、みなさんの共通項としてはアニメ〜同人などサブカルがひとつあるようですね。

Oblongar:みんな少しずつ芯はズレていますが、各々色々な音楽に触れて、様々なキャリアを歩んできた中で10年前ぐらい前に東京の“ごった煮クラブカルチャー”に詰め込まれ、LOUNGE NEOやMOGRAといったいろんなジャンルの人間が大集合しているパーティで交差して、その中で特にフィーリングが近く、仲良くしていたメンバーですね。

◆◆◆SPRAYBOX結成前夜「やるならガチろうぜ!」

――SPRAYBOXは2021年に結成されましたが、誰が最初に立ち上げを?

Oblongar:僕とNizikawaが「ダンスミュージックのコレクティブをやろう!」と言い始めたのが最初ですね。

Nizikawa:当時は間口も広く、「UKレイヴカルチャーサウンドで!」みたいな感じだったと思います。

――“UK”というのは当初からあったんですね。

Nizikawa:そうですね。当初はそこまで“ガラージ”にフォーカスしていたわけではなく、Oblongarと国内の音楽とUKレイヴカルチャーを気軽にリリースできる場所を作ろうって話をしていたんですよ。そこにGenickとJacotanuが加わって、彼らは長らく「RIP」というガラージのパーティをやっていたので、そこからガラージの色が濃くなってきた感じです。

Genick:「RIP」は僕が2017年に立ち上げたパーティなんですけど、当時はUKガラージを銘打ったパーティがほとんどなかったんですよ。(恵比寿にある)BATICAでスタートして、SPRAYBOXのメンバーはみんな出演してもらっていたので、音楽性の連携は当時から取れていたと思います。

Oblongar:この4人がファウンダーとなってSPRAYBOXを立ち上げて、活動するにあたって欠かせない2人、kyoとThat Fancy Iが加入したという流れです。

――当時はどんなことを意識されていたんですか?

Oblongar:例えばNizikawaはハードなダンスミュージック、ハードコア、同人音楽といったキャラクターがついていて、僕もMOGRAに根付くようなダンスミュージック×オタクカルチャーの活動がメインだったので、SPRAYBOXではそうしたところをリブランディングしたいという思いがありました。ストイックにダンスミュージックをやれる場所を作りたいと思っていたので。

Jacotanu:僕とGenickはOblongarとNizikawaが作ってくれた素地に乗る感じだったんですけど、合流した時に「やるならガチろうぜ!」って話をしましたね。隙間でコレクティブをやるというよりは、当時日本でUKガラージのレーベルはなく、今ガチれば面白くなる感覚があったので。せっかくGenickが「RIP」とかをやってプレイヤーも増えてきていたし、世界的にもUKガラージのレーベルが勃興している中で世界に発信していく” というミッションで、それぞれがキャラクター性を持ってやればやっていけるんじゃないかと思ったんですよ。2021年の夏に4人でそういった話をして、11月にスタートしました。

――その後、kyoさんとThat Fancy Iさんが加入したと。

kyo:僕は4人と元々知り合いで、新しくレーベルを始めるという話は知っていたんですよ。それで「楽しそうだな〜」と思っていたらいつのまにか始動していて(苦笑)。当時、僕もオリジナルを作り始めていたので、その流れで自然と合流した感じです。「友達が面白いことやるなら俺も!」みたいな(笑)。

Oblongar:(kyoは)ファウンダーによる最初のリリースには間に合わなかったんですけど、その直後にたくさんリリースしてもらっていて。ほぼほぼオリジナルメンバーですね。

Genick:That Fancy Iも初期から関わってくれて、最初は通訳をしてくれたり。

That Fancy I:僕は英語ができたので。当時はTom-i名義でアニソンのリミックスやオリジナルのポップスを作ったりしていたら、ある日MOGRAでOblongarさんから「SPRAYBOXから曲を出そうよ!」って話をいただいて。それでUKガラージにフォーカスした新しい名義That Fancy Iを始めたんですけど、個人的にはその頃SPRAYBOXが海外展開するようになってきて、英語のコミュニケーション要因として引き入れられたのかなと(苦笑)。

Kyo:みんなTom-i名義の曲は知っていて、当時その界隈では「クオリティが頭ひとつ抜けたヤバいヤツがいる!」って話題になっていたんですよ。それでウチらは「彼にUKガラージを作らせたらどうなるんだ!?」と思って、「絶対にThat Fancy Iを入れよう!」みたいな空気だったと思います。

That Fancy I:そうだったんですね。それは嬉しいです(笑)。

#2に続く

SPRAYBOX

UKのダンスミュージックシーンに影響を受けた国内クリエイターの楽曲を海外に発信するダンスミュージックレーベル。2021年11月にGenick、Jacotanu、Nizikawa、Oblongarによって創設。現在はkyo、That Fancy Iを加えた6名を中心に活動。これまでコンピレーション「SPRAYDEPOT」シリーズ、英国のUKGレーベル「Steppers Club」とのコラボ、コンピレーション「THE RAVING SIMULATOR」など多数リリース。また、毎年年末には主催パーティ「SPRAYFEST」を開催。2024年にはイギリス、2025年にはオーストラリアでの公演も成功させている。

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