ボストン出身のハウスデュオ:ソウル・クラップ。

新世代ハウスの頭目として世界中で活躍していることはさることながら、ルイ・ヴェガやDJ ハーヴィーのリミックスワークやPファンクの創始者ジョージ・クリントンとのコラボ。さらに、米デトロイトの人気フェス『MOVEMENT』で披露した自身初のライヴセットでは、デトロイト音楽史のキーマンアンプ・ フィドラーを客演に招くなど、シーンのレジェンドたちの期待を一身に担う存在としても耳目を集めている。

そんな順風満帆のキャリアを積んできた彼らに新たな動きがあった。それは、メンバーのCharles Levineがソロプロジェクト“Lonely C”としてアルバム「Charles & Tribulations」を発表。

本作はハウスを中心に、ファンクやブレイクビーツにジャングルまで多種多様のジャンルを包括した、まさに意欲作。自身の内面から湧き上がる感情にフォーカスした言う楽曲群はどのように生まれてきたのか……。Charles LevineことLonely Cがソロプロジェクト始動の経緯やキャリア初期の貴重な話も語ってくれた。

−−Lonely C.って面白い名前ですね。

この名前はCrew Loveのメンバー内でのジョークとして生まれたんだ。Eliと随分と長い間ソウル・クラップとして活動してきたから“お互いがソロで活動したらCharlieが悲しんじゃうよ!”って笑われていてさ。
でも、この名義で活動していくうちに、今ではよりコンセプチュアルなプロジェクトになったんだ。楽曲では、自分の中にある個人的な感情や僕の客観的な視点での世の中の捉え方などを表現してる。実際の僕の人生は一人ぼっちとは程遠いからね(笑)。彼女や家族、友達、そしていろいろなコラボレーターから愛を貰っているからさ!

−−幼少時代はどんな少年だったんですか?

僕はボストンからほど近い郊外のマサチューセッツ州ブルックリンで生まれ育った。当時はまだ両親が一緒で愛が溢れていた。両親は僕が幼い頃から自由かつクリエィティブな考えを持つことを勧めてくれたんだ。すごくラッキーだったよね。

−−エレクトロニック・ミュージックに目覚めたきっかけは?

子供の頃から音楽が大好きで、レコードはもちろんテープやCDも集めていた。90年代前半はギターにハマっていて、そこからレゲエ、ロック、ファンク、そしてヒップホップにのめり込んでいったね。

高校生になったころにDJ、そしてレイヴを知って“これだ!”って思ったのさ。レゲエとヒップホップの要素をジャングルとドラムンベースから垣間見て、さらにはハウスのルーツにディスコやファンクがあることを知った。だから僕にはすごく分かりやすかったし、親しみやすかったんだ。そこから先はエレクトロニック・ミュージックにどっぷりさ、

−−DJや音楽制作を始めたのはいつ頃から?

1996年に初めてターンテーブルとミキサーをゲットして、高校生だった頃の後半から大学生まではホームパーティや少しアングラぽいイベントでプレイしてた。ソウル・クラップを結成したのは2001年だけど、実際キャリアとして始めたのは僕が大学を卒業してボストンに戻った2003年からだった。その頃からEliと友人のSam SokolとDJを本格的に仕事として始めたんだ。

−−当初はどんな活動を?

SamとEliがDJの派遣会社「NGP (Next Generation Productions)」を経営していて、そこの仕事でたくさんの場所でDJをしたね。学校内のダンスイベントに始まり、ウェディング、bar mitzvahs (ユダヤ教の成人式) 。それからバーやクラブでもDJをやるようになった。それから自分たちでサウンドシステムを借りてパーティをオーガナイズするまでになった。

−−DJとして世界に羽ばたくきっかけって何だったんですか?

僕にとってDJすることが全てだったんだけど、2007年にEliとちゃんと話し合ったんだ。“自分たちで行動を起こさないとボストンから出れない!”ってね。その時にこの会社のシェアを全て売り、全ての時間をスタジオで過ごすようにした。もちろんリスクが大きかったけど、このコミットメントがなければ今のソウル・クラップはなかったね。
そこから僕たちはAirdrop Recordsと仕事をするようになって、さらにそこでWolf + Lambが見つけてくれた。そこからが僕らの歴史の始まりさ。

−−なるほど。いまソウル・クラップとして成功を収めていますが、なぜソロプロジェクトをスタートさせたんですか?

前の質問で答えたようにLonely Cは僕のよりパーソナルな表現のプロジェクトで、ソウル・クラップとは異なったムードなんだ。今まで何年ものあいだ溜めてきたアイディアを形にしている。なんならアルバム収録曲もトラックによっては2010年に作り始めた曲だったりするんだ。
要はずっとやりたかったんだけども、いつやるかが問題だった。そんな中、Eliと彼のお嫁さんのAndreaの間に第一子のAlmaちゃんが産まれた。Eliはいまお父さんとしての時間を大切にしていて、僕はいまこそLonely Cとして活動するべきなんだと気づいたのさ。

−−デビューアルバムのタイトルを「Charles & Tribulations」にした理由は?

このタイトルは言葉遊びなんだよね。気づいた人もいるかな? これは“Charles Levine aka the Charles and Tribulationによる飽くなき挑戦であり、苦難である”ということ。今ではいいバンド名だとも思っているよ!

−−本作では、キャリア初となるボーカルが多用されてます。さらに、バンド編成でのパフォーマンスには驚きました。

僕はプロデューサーとして、いつもいろんな挑戦をしたいんだ。自分の声を入れたり、ただプログラミングするだけではなく、もっと人間らしい感性を表現したかった。このプロジェクトでは、共同プロデューサーとしてMorgan Wileyを招いた。彼はたくさんのバンドと仕事をしていて、Midnight Magic、Adeline (from Escort)、Underground System、Hercules and Love Affair、そしてLCD サウンドシステムなど、数え切れないほどのアーティストをプロデュースしている。彼も今までたくさんのライヴを経験しているから、僕も今作をステージ仕様の作品に持っていくのが自然だと思ったのさ。

−−収録曲は4つ打ちに囚われず、様々なジャンルの音楽が包括されています。アルバム全体でどのような作品にしたかったんですか?

このアルバムでは僕のいろいろな音楽的要素を見せたかったんだ。僕の世代では、アーティストはアルバムの中でいろいろなジャンルを表現するのが基本だと思っているから、自然な流れだよ。

−−全ての楽曲のビートが特徴的で斬新さを感じました。特に“True (Cake N’ Eat It Too)”の後半のスネアのタイミングは絶妙でした。

ありがとう!それこそがまさにアートや音楽の素晴らしいところで、これと言ったルールはないんだ。強いて言うなら普通とは違った技法を用いている。アーティストや音楽家にとって大事なことは、自分のイメージする音を鳴らすのにどの技術を使っているかだと思うんだ。恐らくそのスネアの音は、ウィップにスナップを重ねたNord Drumの音だと思うよ。素晴らしい音がたくさん詰まったシンセサイザーだよ。

−−今回のアルバムで他に挑戦したことは何ですか?

僕が思う今回の最大の挑戦は、Lonely Cがまだ無名だってことさ。ソウル・クラップを織り成す重要な要素が半分あるのは間違いないけども、まだLonely Cとしてはあまり知られていない。
でも、こうやって一から始められるのは素晴らしい挑戦だと思うし、なによりソウル・クラップとして培ったこと全てに本当に感謝しているよ。

−−Lonely C.としての今後の挑戦は?

今回の“Charles & Tribulations”のアートディレクションとして、2015年から撮りためていたポラロイド写真を出すことにしたんだ。それらは僕の旅の中で撮った写真で、主にコラボレーションしたアーティストや友達、家族、Crew Loveメンバーなどのポートレート、そして世界中のエレクトロニック・ミュージック・シーンで見たいろいろな光景なんだ。2019年にSoho Houseと共同でこれらの写真を展示するエキシビジョンとアートイベントを開催する予定だよ。今のところはマイアミ、ロンドン、バルセロナ、ベルリン、そしてアムステルダムで開催が予定されている。この情報に関してはぜひウェブサイトをチェックしてみてね。

−−ソウル・クラップでの活動も含む音楽面ではいかがでしょうか?

“Charles & Tribulations”のバイナルがリリースされるのと、リミックスEPを製作しているよ。ソウル・クラップとしては、Eliといま楽曲製作に時間を費やしていて、近日中にいろいろ発表できるはずだから楽しみにしていてね!

−−最後に、あなたが思う「人生を幸せに生きる方法」を教えてください。
HAHA! そうだね!今僕が思うのは、人生の本当の幸せは犬を飼うことだね!
もう一回言うようだけど、今回の機会にすごく感謝しているよ!そしてもっとLonely Cについて知りたいあなた。ぜひ僕のウェブサイトをチェックしてみてね!

www.lonelyc.com


Lonely C
「Charles & Tribulations」

TEXT:NAOKI SERIZAWA