前回インタビューしたのはかれこれ7年半前(https://floormag.net/okadada-interview/)。久しぶりのインタビュー、さてどんな話が……と思っていたらとんでもないことに。
新宿で話すこと約3時間。起こした文字数約8万字。しかも、そのうち音楽の話は2割程度……。多くは“死生観”、そして“宗教”に“信仰”、“輪廻”などなど。なんのインタビューなんだって話だけど個人的には超おもしろ。ただ、残念ながらそれらはほぼほぼカット、興味がある人は個人的に連絡ください(笑)。
とはいえ、わずかながらの音楽パートは濃密&趣深い話ばかりで、さすがはokadada、一筋縄ではいかない男。いつの間にか話をすり替えられたり、思わぬ方向に脱線したりしたものの、結果として声を大にして言えるのは、これぞ“the okadada”スペシャルワンのokadada哲学。
#1は、まず序章。okadadaを構成する基本思想に加え、音楽論にDJ論、クラブ論……。
okadadaの選曲の秘密とは…
okadadaにとってのクラブの醍醐味とは…
okadadaがお客さんに求めることとは…
okadadaが考えるDJがやるべき唯一のこととは…
何者にも媚びず我が道をいく、それも唯我独尊ではなく冬夏青青のokadadaイズムここに極まれり!
◆◆結果はあくまで…プロセス至上主義者
――最近、いろいろなDJにインタビューしていて改めて思ったんですけど、みなさん本当に音楽好きですよね。
okadada:やっぱり僕ら(音楽が)好きだからやってるみたいなとこありますよね。ただ、昔、食品まつり(a.k.a FOODMAN)さんが「音楽に興味がないヤツが(音楽を)作った方が逆に面白いんじゃね?」みたいなこと言ってて、極端なアウトサイダー主義ですけどそれも確かにあるかなって思います。
――制作にも2パターンありますからね。論理的に作るか、直感的に作るか。
okadada:批評とかが好きなんですけど、あれも結局感じたことを主観的に言語化するっていうかは、感じたことそのもののプロセスを言葉にしていくしかできないですからね。何らかの結論よりも感性への筋道をつけてるその間が面白いっていうか、そこまでの“プロセス”が大事だと思ってて、僕は正直プロセスしか面白いと思ってないんですよ。
――結果はどうでもいい?
okadada:下手したら全てがプロセスだと思ってるぐらいなんで。結果はあくまで“現象”。この地球も(最終的には)なくなるじゃないですか。ということは、それまでは全部プロセスなわけですよ。
――僕は“結果”が知りたいですけどね。あとは、なぜそうなったのか“理由”も。
okadada:それもわかります。僕も“知らないことを知りたい”っていう思いは同じなんで。でも、例えばDJの話でいうと「知ってる曲が知らない曲に聴こえる」みたいなことあるじゃないですか。あと曲を聴いて途中で「あ、この曲だったんだ!」みたいな。この時に僕は「じゃあ“知ってる”ってなに?」と思うわけですよ。それを言うと結果とプロセスって何って話にもなっちゃうんですけど。
僕はこれが重要だと思っていて、今も人間が行けないところはいっぱいあるけど、昔はもっとあったはずで、行けないところがなくなってきたからみんな内面に向かってる。SFとかもそうですよね。でも、自分が見ている“目”を変えたら全部知らないものになる。僕は(DJで)それがやりたいのかもしれない。ものの見方は変えるっていうのは言い換えればみんなを混乱させたいのかもしれないですね。
――見えているものを変えるのではなく、その人の目、その人自身を変えたいと。
okadada:そうすれば全ては未知のものになる、極端なことをいえば因果律すら変えられる。だから、最終的に地球がなくなってしまっても見方を変えたらなくなってないかもしれない(笑)。
――そうなったら、もはやなんでもありですね(笑)。
okadada:そうなんですけど、僕はそれが楽しいんですよ。「それを言ったら終わり」みたいなことが(笑)。だから「なんのためにDJやってるの?」って聞かれても特にない。DJをやること自体が目的なので。
ただ、目的地みたいなものはありますけどね。僕は旅行が好きで、この前もトルコに行ってきたんですけど、向こうで“歩く”ことがしたかったんですよ。でも、歩くためには目的地が必要で、そこに向かって歩いていくわけですけど、そうするとプロセスが生まれる。
――プロセスのために結果(目的地)を考える? ということは、地球が最後の日を迎えても最初から終わっても終わらなくてもどっちでもいいみたいな?
okadada:そこは難しいんですよね(苦笑)。結果を無視すると必然的に(目的地に)向かう力が弱くなってしまうので。だから、結果は結果で重要視しないといけない。
――僕も歩くことは好きですけど、よくよく考えると歩くのが好きなんじゃなくて移動が好きなのかなと思うんですよね。
okadada:その気持ちはわかります。移動はいいですよね。僕はトルコで1日平均18km、一番歩いた日で24km歩いたんですけど、東京だったらそんなに歩きたくないわけですよ。でも、トルコだと歩いていること自体が娯楽で、側道の形とか見てるだけで楽しい。
――それは国内ではダメなんですか?
okadada:ダメですね。国が違うことが大事。(海外は)看板を見てるだけで面白いし。多分、日本に来ている外国人もそんな感じじゃないんですかね。
音楽に関してもそういう感覚に持っていく方法を探しているんですよ。音楽が常に新鮮に聴ける方法を。一般的には(音楽は)聴き込めば聴き込むほど新しい発見があると思うんですけど、僕はそこまでいかんと飽きちゃいがちなんで。そもそも“飽きに対する恐怖”がめっちゃあって……。
◆◆“a DJ”と“the DJ”、okadadaは?
――音楽はあまり聴き込まないんですか?
okadada:しないですね。いっぱいあるから。どんどん新しい曲が出てくるし、聴いてない昔の曲もたくさんあるし「全部聴きたい!」ってなっちゃう。ただ、DJをやってると聴かざるをえないわけで、それはある意味無理矢理(自分に)聴かせているのかもしれない。
DJする時の選曲もカッチリ決めていくわけじゃなく、なんとなくぼんやりやってくんですけど、たまに買った時はそうでもなかったのに、気がついたらめっちゃかけてる曲があるんですよ。「(この曲の良さが)わかってきた!」みたいな感じで、(セットの中で)勝手にその曲が浮かび上がってくるみたいな。
――okadadaさんの選曲論は興味ありますね。どんな曲が次に来るのか本当にわからない。どうやって決めてるんですか?
okadada:それはいろいろですよね。
――お客さんの様子を見て決めるとか。
okadada:いろいろです(笑)。お客さんはめっちゃ見ますけど、特定の人を見てるわけじゃないし、次に何をかけるかは一言では言えないですね。
――「この前、これかけたらいい感じだったから」みたいな経験則は意識したりします?
okadada:それは避けがちで、もし無意識にやってたら反省します。なぜなら同じ解釈を繰り返したくないから。僕はDJ中、どこかで予想外のことを求めているというか、究極的にはその曲を作った人も思ってなかったような状況になったらいいなと思ってる。
DJに限らず人前に立つ人は“a DJ”じゃなくて“the DJ”でありたいと思ってると思うんですけど、僕はIndeepの“Last Night a D.J. Saved My Life”がめっちゃ好きで、あれってある人が落ち込んでる夜、たまたまつけたラジオのDJがかけてくれた曲に救われる、でもそのDJは誰かしらない……みたいな曲なんですけど、これは“a DJ”、つまり誰でもないんですよ。
つまり、(僕は)埋没したい気持ちと自分を出したい気持ちが両方あって、DJって「俺を見ろや!!!!!!」っていうだけではダメだと思うんです。それだとショーになってしまうし、それなら「ライブでいいやん」ってなってしまう。
そういう意味では、自分の思い出を伝えるだけじゃなく、僕がその曲を再生することでお客さんに勝手に思い出を作ってほしい。DJはある曲があって、その曲がある時間や状況で再生されるとそこで誰かがそれを聴く、っていうのが簡略化した関係だと思うんですけど、その場合にできるだけその状況から生まれる可能性を最大化したい、みたいな考え方で。そのための導線をいかに引くかが大事で、僕はその行為が好きなんですよ。
◆◆クラブの魅力は“いられる”こと
――お客さんに踊ってほしい、感動してほしいとか、そういった思いはない?
okadada:極論(フロアに)いてくれればいいですね。その場にいることをお互いシェアできてれば。それを視認する上で“踊ったり”、“声をあげる”とかはわかりやすいことで、別に黙っててもいい。そこに他人に対する最低限の敬意があれば僕はフロアで何しててもいいと思ってます。
そもそもクラブの一番いいところは“いられること”だと思うんです。別に踊らなくてもいいし、友達と喋っててもいいし、立ってるだけでもいい。(クラブは)“いられる”ことを売ってる。それって結構スゴいことやと思うんですよね。
(クラブで)友達がいないと寂しいっていう人もいて、その気持ちもわかるけど、僕はひとりでもいいし、たまにひとりでボーッとしてます。でも街角でボーっとしてても別に面白くなくて、クラブにいた方が全然いいわけですよ。
あとは音楽が鳴ってるっていうのもいやすくしてるんでしょうね。“(音楽を)聴いてる”という必要が生まれるから。
――クラブはいろいろと許容してくれるんですね。
okadada:その一方で、DJはそれを阻害するものでもあるんですよ。「俺を見てくれや!」っていうDJもいるわけで。でも、DJならそう思うのも当然で、いろいろ考えた結果、僕はDJってそこの空気を促進させる方法ひとつやなって思うんです。
音楽的実験の場としてのクラブも好きなんですけど、もしそうでありたいならそこにもっと特化するべきだし、小箱は小箱で楽しいのもめちゃくちゃわかる。でも、僕がクラブで嗜好しているのは、その“場”にDJがどう機能するか。その過程に音自体よりも音楽がどう作用するかの実験があるんですよ。
音楽の新しさとか(DJの)精密な操作・テクニックとかもスゴいと思うし、めちゃめちゃ大事なんですけど、それは最悪なくてもいいんですよ。僕はそれ自体は自己目的化してない。
結局、新しい音楽は必要だけど、一方で新しさなんてどうでもいいっていう気持ちもある。ただ、これはあくまで目的地の話で、だからどうでもいいわけでもないみたいな(苦笑)。
――二律背反、もはや禅問答ですね。
okadada:そうですね。でもそういうものだと思う。
◆◆フロアが向かう先を決めるのはDJじゃなく…
――じゃあ、okadadaさんの最終的な目的地はどこなんですか?
okadada:それはわかんないっすね。いつも変わるから。選曲と同じで場がどこに向かっているか次第……としか言えないんですよ。しかも、その場も(フロアにいる)人で変わるし、(どこに向かうかは)そこにたまたまいた人たちの無意識の合意次第じゃないんですかね。
――それはつまり(フロアは)DJが導いているわけじゃないと。
okadada:じゃないですね。“合意”です。だから僕はDJをショーとは思ってないんですよ。ショーとして選曲を厳選してくるDJもいるし、それはそれで好きなんですけど僕は違う。その場の合意がどう取れるかが好きで、そこでイニシアチブを取れるのがDJやと思うんですよ。
音楽って、その空間のイニシアチブが取るのに一番うってつけのものだし、実はDJってそれぐらいしかやることがないかもしれない。そうじゃなければ家で曲を作っているほうがいいと思う。
――それはフロアを“支配”するのとはまた違う?
okadada:違いますね。ショーであれば支配する必要があるかもしれないけど。そもそも僕は“フロアをコントロールする”っていうのもよくわからなくて、自分がコントロールしてるのはあくまで音楽。その音楽を通じて(お客さんと)どうコミュニケーションできるかなんですよ。音楽で人の動きを変えることはできるけど、それは支配とは違うし、(その空間を作っているのは)あくまで合意ですね。
◆◆崇められるのではなく合意形成するひとりで…
――DJは合意に導く人、マエストロみたいなもの?
okadada:あんま考えたことないけど、僕は指揮者とは思わないですね。指揮者だと支配力が強すぎる。
ーーとなると、お笑いでいうところの“裏回し”みたいな?
okadada:その方がまだ近いかな。DJって目的地が(お客さんとの合意形成の上で)その都度生成されるんですよ。その中で何が目的なのかを見つけていくのが面白い。一方で曲作りは絶対に目的があるわけですよ。
僕がジャンル(を限定した)イベントに馴染まなかったのは、それって精度がめちゃめちゃ高くなるじゃないですか。テクノならテクノの美学があって、それに向かっていくから素晴らしいわけで。
僕はそれだと飽きちゃうんですよ。(僕は)そういった美学自体が毎秒フワフワしてるから。ひとつのものに向かっていくより、みんなでヘラヘラしながら酒飲んで、(その都度目的地を)決めていくぐらいがいい。
それに、その(目的地にある)何かを掴みたいわけじゃないし、みんなを目的地に連れていくつもりもないし、それによってみんなから崇拝されたいわけでもない。むしろ、(合意形成をする)ひとりでいたいっすね。そうすれば、いつかどこかで誰かのためになってると思うし。
大阪のあるミュージシャン友達が「電子音響の世界は全ミュージシャンがコップの中に水滴を垂らしていて、ある時点でそれが溢れる。溢れさせた人がその世界を代表する存在になるけど、その実験は実はみんなでやっていて、その知見があるからこそ水が溢れる」みたいなこと言ってて、僕もその考えに近いんですよ。
つまり、何かを“変える人”はスゴいけど、その人が変える前にも(そこに貢献している)大勢の人がいて、僕はそのうちのひとりでいいじゃんっていう気持ち。
――あまり欲がない? 以前のインタビューでもそう言ってましたね。
okadada:大きいのはないですけど、小さい欲まみれっすよ。わかりやすい欲まみれ。特に“知りたい欲”は強いですね。自分が知らないことを知りたい。
――スターDJになりたい!みたいなことはない?
okadada:なれたらいいよね、ぐらいかな。
――スターDJになりたいんですか?それはそれでちょっと驚き。
okadada:(スターに)なったら今できないことができそうじゃないですか。でも、逆にいうと別にならなくてもいい。
――なったらなったで、できることが限定されそうですけどね。今までできていたことができなくなったり。
okadada:それはイヤですね。だから、そうじゃない形でスターになる。今までにない位置であればいいなって思いますけど、そんな位置なんてないですよね(笑)。
#2に続く……
(プロフィール)

okadada
1986年生まれ、滋賀県出身。大学生時代からDJ活動を開始し、現在は国内外多種多様千差万別ジャンルに関係なく様々なパーティに出演中。アーティストとしてもbandcampなどから楽曲をリリース。また、盟友shakkeとともに極私的なポッドキャスト「チャッターアイランド」をSpotifyにて配信中。
