今回、初めて彼女にインタビューをしてまず思ったのは、本当にまっすぐでピュアで、言葉の節々に感じられるはクラブ&ダンスミュージックへの“愛”。誰かさんの時とは打って変わって話題は基本的にクラブ&DJのみ(その他若干趣味の話)、ほぼほぼ無駄口なしの約2時間。途中書けないところもあったけど、できることなら全て包み隠さず明かしたい、明かすべきと思うほど濃密で情熱迸るインタビューでした。
そんなインタビューもいよいよ最終章。今回はまず、近年彼女が注力している“育成”について。
おこがましくも“シーンのため”、しかしそれは同時に自分のため
そして、自分の遊び場を守る、しいては“日本”のため……
さらにはDJ、クラブ、いろいろと語る中で行き着いたひとつの結論。全ては“愛”。
「好きだから頑張れるし、意味があろうがなかろうがきっと私はこれをやり続ける」
誰が言ったか、“戦線から遠退くと楽観主義が現実に取ってかわる……”はまさにその通りで、“だから、遅過ぎたと言ってるんだ!”と言われないよう、我々もクラブに愛を。
【インタビュー#1】
ロックな少女がGillesと邂逅相遇、人生一変…Licaxxxインタビュー#1彼女をDJへと導いた数多の出会い
【インタビュー#2】
DJにとって最も大切なのは…?さらには至高の瞬間、そして困った時の“Ben降ろし”とは? Licaxxxインタビュー#2
◆育成に注力することで自らも成長
――Licaxxxさんは主宰するTokyo Community Radioで育成プログラム「sessions」を開催されていますよね。そもそもどうして育成に注力を?
Licaxxx:おこがましいかもしれないけど、“シーンのために”っていうのもあるし、単純に自分が日本で楽しく遊びたいから。海外には楽しいところがいっぱいあって、日本もそうなったらいいなってずっと思ってて。
しかも、海外に負けない良いDJ、良いトラックメイカーは日本にもいっぱいいるし。なのに海外のようになれないのはなんでだろうってずっと考えてて、6〜7年前に横の繋がりが希薄なんじゃないかって思ったんですよ。私より上の世代はジャンルとかパーティで競い合って、見えない何かがあったと思うんですけど、今はもうそんな時代じゃないし、むしろみんなで助け合うべきじゃないかって。
私もDJをやってるからには当然DJ力を見せたい気持ちはあって、海外でもDJしたいし、呼んでもらえるようになりたいけど、現実問題として良いエージェントがいないと(海外の)ブッキングは決まらない。でも、そんなこと誰も教えてくれないわけで……。
――確かにエージェントの存在を知らない人は多そうですね。
Licaxxx:だからコミュニティを作ってDJに必要な情報を共有できたらいいなと思って。DJにしろDTMにしろ成長するためには情報がいる。しかも、それはネットで検索できる範囲のものだけじゃムリなんですよ。
そう思うようになったのが2018〜2019年ぐらいで、まずはコミュニティラジオを始めたんだけど、当時自分も悩みがいっぱいあって、それをみんなに聞いてみたかったんですよね。例えば(sessionsを一緒にやっている)Stones Taroは曲を作って、自分のレーベルで流通して、DJもやってる。どうすればそんなことができるのかってみんな知りたいだろし、私も聞いてみたい。つまり、ちゃんとした情報が得られる場所を作ることで、それはかえって自分のためにもなるかなと思って。
――どんな人を育てたいですか?
Licaxxx:(DJとして)ちゃんと現場に立てる人。だから(参加メンバーを)公募するにしても自分で作った曲とDJミックスを送ってもらってる。やっぱり私は現場が好きだし、同じ悩みを共有するなら同じ境遇にいないとわからない。現場以外の悩みを相談されても解決法が示せないんで(苦笑)。
――育成において、今の日本で一番の問題はなんだと思いますか?
Licaxxx:日本に限らず世界的なことだと思うけど、やっぱりヒップホップ文化が強いというか、そもそも歌が乗っていないと売れない。あとはDJもアッパーな方が好まれる、ジャンルとしはアンダーグラウンドだったとしても。時代や流れにもよるけど、それ“以外”となると相変わらず難しいなって思います。なかなか爆発的なことを生み出すのは難しい。
あとは日本人が海外に出るのも大変で、それは基本的に距離があるから。付加価値がないと日本のアーティストを呼んでもらえないので、そこをなんとかしたい。私の理想は、みんなで海外に行ってDJして、みんなで遊んで、日本に戻ってきてまた遊ぶみたいな(笑)。世界で通用するアーティストを作るっていうよりは、気軽に行き来できる環境を作りたい。
――日本の遊び場を守りつつ海外展開。
Licaxxx:ヨーロッパのDJのように国内外フレキシブルに動けて、どこでもDJできたら楽しいだろうなって思うんですよ。力量的には日本人のDJも負けてないと思うので。
◆DJは夢がない!? Licaxxxの苦悩
――日本のクラブに関して、先ほど“コミュニティの場”(#2参照)と言ってましたが、確かに最近は好きな人だけが集まるパーティ、小規模なフェスが多いですね。
Licaxxx:それも楽しくていいと思うんですけど、DJからしてみると出先がないというか広がりがない。もっといろいろあるべきだと思うけど、そこはやっぱり景気・経済的な問題があるのかなって思う。
――そういう意味では、個人的にこの界隈にもファンドがあったらいいのかなって思います。カルチャーへの投資。
Licaxxx:それはいいかも!ただ、お金を集めることはできるかもしれないけど、私はビジネスが……。
――それはプロに任せるとして、もし何かできるとしたらどうします?
Licaxxx:今、フェスはたくさんあるけどダンスミュージックオンリーのデカめのフェスがEDMとかじゃない形でもっとたくさんできたら……。でも、それ以上にデカめのメジャーな音楽フェスにおけるDJの枠が年々少なくなってきてると思うんですよ。自分が出られないとしても、出してほしいDJ、紹介したいDJはいっぱいいるのに……。
――例えば?
Licaxxx:今ならFELINE。彼女はフロアを作るのがうまくて、今年「RDC」に満を辞して登場したんですけど、マジでめちゃくちゃよかったし、もっともっとできると思う。
――若くて良いDJもたくさん出てきている?
Licaxxx:いるはいる。アンダーグラウンドちゃんと支えてる。お客さんは圧倒的にマイク持つ側の人のほうが多いかな。
――ラッパーは大きなムーブメントが生まれ、それ以降シーンが大きくなりましたからね。
Licaxxx:そういうのを見てると「DJって夢がないのかな〜」って思っちゃうんですよね。そんなことないと思うし、そう思われるのもイヤ。そこは昔から意識してるところで、個人的にはDJももっともっと表舞台に出るべき。だから私は20代の頃は積極的にメディアに出るようにしてた。DJってみんなオタクだし、喋れる人も多いし、(文章を)書ける人も多い。才能ある人が多いのにもったいないなって思う。実際にそういう形で音楽業界を底からきちんと支えてくれてるDJの先輩たちたくさんいます。まあ、あんま顔出さないほうがやりやすかったり、かっこいいっていうのも非常にわかるんですけどね。そうだとしても、現場にいっぱいいるかっこいいDJたちにアクセスしてもらう方法がもっともっとあるべきだし、増やしたい。冒頭に戻りますけど、自分が毛色が異なるフェスでも出演するのは、どこだってしっかり自分の仕事ができる自信があるし、誰かが自分の音楽ごと好きになってくれればな、と言う気持ちでありがたくやってます。
私はDJがもっとちゃんとした職業として認められたくて、そのために何ができるのか常に考えていて、曲を作ったり、メディアに出たりするのもひとつの手段なんだけど、いまだにイメージが悪いというか、どこまでいってもイロモノ扱いというか……。公務員で括ってもいろんなジャンルがいるように、DJもかなり色々いますしね。
――特殊な職業というイメージは根深いですよね。でも、かつては憧れの職業としてファッション誌とかで取り上げられてましたけどね。
Licaxxx:確かに! となると今のDJがダサいのかな(笑)。
――そういうわけではなく、個人的には一般的になったのかなと思います。昔は一部の人しかなれなかったけど、今は誰でもできるようになった。
Licaxxx:そうですね。それは良いことでもあり、悪いことでもあると思うけど、できるならDJという存在をもっともっと憧れられる存在になるように尽力したい。
◆押井チルドレンも結局は“愛”
――音楽以外の趣味はありますか?
Licaxxx:映画ですね。というか映像作品全般大好き。ドラマもアニメも。特にSFが好き。
――どんな作品が好きなんですか?
Licaxxx:めちゃくちゃあるけど、人生の3本を挙げろって言われたら、寺山修司の「田園に死す」、「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」。あとは「機動警察パトレイバー 2 the Movie」。
――寺山修司の「田園に死す」、押井守の「機動警察パトレイバー 2 the Movie」は渋いですね。
Licaxxx:完全に押井チルドレンなんで(笑)。それに、「機動警察パトレイバー 2 the Movie」に出てくる後藤(喜一)さんはマジでいい男。
――「機動警察パトレイバー 2 the Movie」の公開が1993年なんで、リアルタイムじゃないですよね?
Licaxxx:全然後追い。押井さんの作品だって知ってから観た感じです。
――押井さんの作品は、例えば「攻殻機動隊」をはじめ先見性があるというか、独自の哲学があっていろいろ考えさせられることが多いですよね。
Licaxxx:マジえぐいっすね。今じゃ絶対に作れない作品ばかりで。それはAIが進化して、(時代が進む)速度が(現代と当時では)全然違うからで、今はもう(速すぎて)10年後すら見通せない世の中だけど、個人的にはそんな中でも未来を想像したいんですよ。私はどっちかっていうと今を生きてないというか、今は今で大事だけど、先を見て生きてきたタイプなんで。
――先ばかり見るのは不安じゃないですか?
Licaxxx:全然。むしろ未来についてだけ考えてたいし、いい未来にするために何かしたい。
――超ポジティブ。
Licaxxx:かといって何もできてないんですけどね(苦笑)。
――未来のために今を頑張るタイプ?
Licaxxx:そうですね。ただ、あくまで今が楽しいのも前提で、でも今だけが良ければいいわけじゃないみたいな。例えば一過性の流行を作るのが目的ならいろいろやり方があったと思うんです。でも、それをやるのは私じゃないし、できたかもしれないけどやりたくない。
それって先のことを考えてのことで、未来のために今自分がやるべきことを精一杯やる、常に一番良いプレイをする、それだけ。つまり必死でやってるだけなんですよ。みんながいるクラブが大好きなんで。
――“愛”ですね。
Licaxxx:そうかも。究極的にはそこ。好きだから頑張れるし、意味があろうがなかろうがきっと私はこれをやり続けるんだと思う。
◆ずっと現場に…Licaxxxの夢
――DJと制作はどっちが好きですか?
Licaxxx:作る行為は苦しみも伴うんで、どちらかというと苦手かも。それに(私は)思考がデザインに近いというか、ゼロから作る感じじゃないんですよ。自分が作りたいものを作るっていうよりは、周りの環境とか色々な条件のもと、そこにあるものを形にしていくみたいな。もしかしたらゼロから何かを生み出す能力があまりないのかも(苦笑)。
それに、音楽を作ってる時って他の音楽聴けないじゃないですか。それもイヤ。
――それは影響を受けてしまうから?
Licaxxx:影響は受けないけど物理的に。曲を作ってる時は作ってる曲を何度も聴くわけで、そうすると単純に他の音楽を聴く時間が減る。それがなにげに辛い。
――好きなことができないと。
Licaxxx:良い音楽がたくさんあることを知ってるし、死ぬまでにできる限りいろんな音楽を聴きたいんで。
――音楽が好きゆえの悩みですね。最後に将来の展望を教えてもらえますか。
Licaxxx:いつまでもみんなとクラブで遊んでいたい。そのためにはシーンを強くしないといけないし、クラブも儲からないとなくなっちゃうので、そこは私も一緒に頑張りたい。どんな形であれ、みんなでずっとダンスミュージックが楽しめていたら最高ですね。
――そこで自分がDJも?
Licaxxx:そこはあんまりこだわってなくて、自分よりいいDJがいたらその人がやればいい。だって、その方が楽しいし。
――DJをやめるっていう選択肢もある?
Licaxxx:自分が衰えたら……っていうのはありますね。そこは自分に対してシビアでいたい。
――生涯DJなのかと思ってました。
Licaxxx:老害になるのが一番イヤ(笑)。だから全然隠居もありです。
――もしもDJを退いた場合、やりたいこととかあるんですか?クラブのオーナーとか?
Licaxxx:オーナーいいですね。自分の店で自分が好きなDJだけ出てるのは理想かも。自分でDJが選べるなら、それもDJみたいなもんだし(笑)。
――レーベルをやったりとかは?
Licaxxx:それもアリだけど、私はコミュニケーションを大事にしてるんで、(みんなで楽しめる)場所があった方がいい。それに、レーベルって真面目でマメな人しかできないじゃないですか。それこそStones Taroみたいな。私みたいに雑な人間にはムリ(笑)。やっぱ私はずっと現場にいたいですね。

Licaxxx(リカックス)
東京を拠点にDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティなどマルチに活躍。2010年にDJをスタートし、マシーンテクノ・ハウスを主軸にあらゆるサウンドを駆使してフロアを魅了する。2016年、Boiler Room Tokyoに出演。その後、Fuji Rockをはじめとする様々なフェスや大型クラブイベント、パーティでプレイ。2022年には6カ国を巡るアジア&ヨーロッパツアー完遂。グローバルな活躍を見せる一方でビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」を主宰し、情報発信、次世代の育成にも注力している。
