今年1月、MEDUZA³やSWEDISH HOUSE MAFIAなど世界屈指のタレントが多数出演していたGMO SONICで一際異彩を放ち、相変わらず男前な姿を見て、「これはすぐにでもインタビューを!」と思いつつ、気づいたら約半年……ようやく実現したLicaxxxインタビュー。
インタビューにあたって改めて彼女の来歴を振り返ってみると、大学生にして注目を集め、以降10数年に渡り我が道を邁進。現場での活躍もさることながらラジオや文筆もイケる多芸多才ぶり。しかも、シーンは年々華美になる中、歩むは生粋のアンダーグラウンド。実際インタビューをしてみるとその思いは強く真摯で、雄弁に語る姿からはもはや平成を飛び越え昭和の気勢、任侠感すら漂うが、傍目には一切そう思わせないのも彼女の魅力。
令和という時代になびくことなく、はたまた抗うでもなく、ただただ己の信念のままに突き進むLicaxxx。果たして彼女はいかにして今に至ったのか……#1ではそのルーツを辿る。
多感な時期にUKロックと出会い、大いにこじらせつつも賢才Gilles Petersonで目覚め、さらには櫻井翔の後押しもありつつ、果ては華やかかりしエレクトロを謳歌し決断の時。そこで彼女の運命を決めた人物とは……!?
◆出会いはGilles、ポストダブステップ
――小さい頃はどんな音楽を聴いてました?
Licaxxx:中高は普通にロックを聴いて、バンドをやってましたね。中学生の頃はUKロックが流行ってたんで。Arctic MonkeysやBloc Partyとか。
――もっと遡って小学生の頃は?
Licaxxx:あまり聴いてなかったかな……。ピアノ教室には通ってたけど、別に親が音楽をよく聴くわけでもなかったし、むしろテレビ。テレビの歌番組から流れてくる音楽、普通にアイドル、ジャニーズとかモー娘。とか聴いてた。
――そこからどうやってUKロックに?友達の影響とか?
Licaxxx:それもあるんだけど、通っていたピアノ教室で中学生になるとピアノ以外の楽器もやるようになったんですよ。そこでギターを習い始めたのが大きいですね。テレビで見て、ギターをやってみたくなって。
あと、ギターを習い始めたと同時にラジオを聴くようになって、洋楽を聴き始めるようになった。私の音楽遍歴的にはそれまでは(音楽に対して)完全に受け身だったけど、そこからちょっと変わった気がする。
――その後、UKロックからダンスミュージックへと興味の対象が変わっていくわけですが、きっかけはGilles Petersonだとか。
Licaxxx:当時、私の音楽の情報源は完全にラジオで、J-WAVEのお昼の番組にGillesのコーナーがあって、そこで“DJ”という存在を知ったんですよね。それまでは“ラジオDJ”しか知らなくて、DJ=喋る人だと思ってたけど、Gillesは聴いたことがないかっこいい音楽をガンガン流してて、「これがDJなのか!」って。当時のGillesはアシッドジャズと一緒にポストダブステップとかもかけてて、それがマジでかっこよかった。
同時に、夏フェスにも行くようになって、そうするとDJセットのアーティストも出てるじゃないですか。そこで生でDJを見て「こういう音楽のアプローチがあるのか!」って。
――最初にダンスミュージックに触れたのがポストダブステップ?
Licaxxx:そうですね。当時はフレンチエレクトロも流行ってたし、あとはKlaxonsとかダンスロックも流行ってたけど、UKロックが好きだったこともあってUKっぽい感じの電子音楽を自然と受け入れていた気がする。
あとはその頃、櫻井翔くんのラジオ(FM FUJI「SHO BEAT」)を毎週欠かさず聴いてたんですよ。翔くん大好きだったんで(笑)。
――ここでまさかの櫻井翔(笑)。
Licaxxx:翔くんはクラブミュージックが好きで、当時「エレグラ(Electraglide)」に行って「Underworldが……」ってラジオで話したり、(番組の中で)DMRやHMVのバイヤーが曲を紹介するコーナーがあってディープハウスがかかってたり。翔くんも「今、ディープハウスにハマってる」って言ってて、「マジか!?」みたいな(笑)。そこで初めてディープハウスを知った(笑)。
その他だとGillesの影響でアシッドジャズを聴いたり、ラテンとかボサノヴァを聴いたり、その流れで沖野修也さんとかも聴いてましたね。
◆初DJはエレクトロ〜RADIO SLAVE
――当時、何が一番好きだったんですか?
Licaxxx:高校生の時はBloc Partyで、オルタナっぽい“ザ・UK”的な音楽が好きでしたね。USで聴いていたのはThe Strokesぐらい。KASABIANとか、とにかくダークな音楽が好きで、Jロックだとアジカンとナンバガしか聴かない“こじらせ厨二病”。周りと違う音楽聴いてる自分かっこいいみたいな(笑)。
ただ、そんな中でジャニーズもめちゃくちゃ聴いてた(笑)。ジャニーズは音楽というより“エンタメ”として好きで、「山下達郎さんが作るKinKi Kidsは良い!」とか作者で見てた気がする(笑)。
――それってちょっとDJっぽいですね。
Licaxxx:「馬飼野(康二)さんが書くジャニーズ曲は神曲!」とか、何がすごいのかあまりわかってないんだけど、感覚的に何か感じてたんですよね。
その一方でKitsuneのコンピとかJusticeとか聴くようになって、特にHadouken!が大好きで。ちょうどサマソニに出たり、LIQUIDROOMでライヴをやってたので観に行って、夜もTRUMP ROOMでDJしてたから行きたかったけど、夜中は……みたいな。
当時、高校がマジメな学校でクラブに行くような人が全然いなくて。(大学)受験が終わってから軽音部の先輩と初めてクラブに行って、そこでTOMMY(奥冨直人)とかタワレコのクラブミュージック担当の伝説的なバイヤーさんに出会って……そこからかな、人の家でDJの練習をするようになったのは。
それで高校を卒業する時に渋谷のNoStyleを借りて卒業パーティをやって、そこでDJデビュー。初めて人前でDJした。
――何をかけたか覚えてます?
Licaxxx:ちょっと硬めのエレクトロとRADIO SLAVE、あとはダッチハウスとか……。
――わりと渋い。
Licaxxx:エレクトロは繋ぎにくかったんですよ。当時、DJを教わってた人がハウスのDJだったから、ヒップホップみたいにカットインとかは自分できなかったので。
――手堅く繋げられる曲をかけていたと。
Licaxxx:そう。当時はDJ KYOKOさんが好きで、KYOKOさんがかける曲を追っかけたり、あとはEd Banger。Justiceとかの流れで行き着いたのがやっぱりそこで、ポッドキャストで配信されてたDJ MEHDIやBusy PのDJミックスを聴きまくって、そこでかかってた曲の中からゲットできたものをかけてた。
――フロアの反応はどうでした?
Licaxxx:自分のことでいっぱいいっぱいで全然覚えてない(笑)。
◆就職かDJか…大きな転機の裏にあった出会い
――その後、大学生になるわけですが、その頃はDJになりたいと思っていた?
Licaxxx:全然。(DJは)あくまで趣味としてやってた感じ。ただ、大学でDAWやプログラミング系の授業とか音楽の授業もあったんですよ。ableton liveを使って音をデザインするみたいな。エレクトロニックなアプローチというより認知の授業みたいな感じだったけど、それが結構面白くて。それで最終的に大学ではサウンドインスタレーションをやって、並行して課外ではDJやるみたいな。
あとは普通に就活もしてました。当時、渋谷にあった「2.5D」っていう配信スタジオでインターンをやったりもしてたんだけど、徐々に(DJの)ブッキングが増えて、ラジオにも出させてもらうようになって、スケジュールを捌くのがキツくなってきて……。
――大学生ですもんね。
Licaxxx:しかも、周りはみんな就活でDJをやめちゃって、DJしてるのは私ひとり。その時に思ったんですよ。「自分も(DJを)やめるとかあるのかな」、「ここでDJをやめるのはもったいないんじゃないか?」って。
――それは同世代でDJをしてる人がいないから?
Licaxxx:それもあったし、自分しかできない役割を担ってるっていう自負もちょっとあったんですよね、当時は。私はエレクトロの華やかな時代と崩壊していく姿を見ていたから、「ここで私がDJをやめて誰もいなくなったら日本のダンスミュージックは大丈夫なのか?」って。当時、ちょっとシーンが衰退している感じもあって、「ここで自分がやめたら遊べる場所がなくなっちゃう」って本気で思ってて。
――それでDJを続けるべきか悩んだと。
Licaxxx:当時は女性DJってちょっともてはやされてる感じがあって、私はそれがすごくイヤだったんですよ。だからそういうブッキングは断って、男性と並列で戦えるイベントに出たり、自分なりに頑張って、DJも楽しかったからやめたくなくて。でも就職したら続けられないのもわかってて……。
それでどうするかめちゃくちゃ悩んでいた時に、今の事務所(アソビシステム)の社長(中川悠介氏)が「マネジメントさせてほしい」って言ってくれて。あれはかなりデカかったですね。
私以外にもDJはたくさんいるからもっともっと付加価値をつけないといけないし、逆に自分もDJ以外にやれることとやりたいことがたくさんあったから、社員としても、所属としても会社に入る交渉をして今の形になった。そこからは常にみんなの期待を超えるプレイをしなきゃいけないとか、「もう趣味ではやれない!」って強い責任感みたいなものが生まれましたね。
#2に続く……

Licaxxx(リカックス)
東京を拠点にDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティなどマルチに活躍。2010年にDJをスタートし、マシーンテクノ・ハウスを主軸にあらゆるサウンドを駆使してフロアを魅了。2016年、Boiler Room Tokyoに出演。その後、Fuji Rockをはじめとする様々なフェスや大型クラブイベント、パーティでプレイ。2022年には6カ国を巡るアジア&ヨーロッパツアー完遂。グローバルな活躍を見せる一方でビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」を主宰し、情報発信、次世代の育成にも注力している。
