この7月、アーバンミュージック界の総本山、NYが世界に誇るラジオステーションHOT 97による一大エンターテインメント『HOT 97 SUMMER JAM』が日本に上陸した。1994年のスタート以来、23年間という長きに渡り開催されてきた本祭が、“今”になってここ日本で行われたことは決して偶然ではないだろう。
目下、世界のダンスミュージック・シーンを席巻しているのはEDMだが、すでにその先を見据えるアーティストの中にはアーバンミュージック……ヒップホップやR&Bを注視しているものは少なくない。そもそもEDMもアーバンとの親和性はその発祥から深いものがあり、なおかつ今最盛期を迎えるトラップやトワークはヒップホップと密な繋がりもある。ディプロやスクリレックスを見れば、その蓋然性は明らかだ。そして、たとえば現行シーン屈指のスーパースター:アフロジャックは本誌のインタビューで今後軸となるサウンドはヒップホップだと名言している。そう、つまりはEDMの次なるムーブメントの最右翼として多くのアーティストたちがアーバンを見据えている部分がある。
もちろん、それ以前に世界中の音楽界に大きな影響を及ぼすビルボードやグラミーといった指標では相変わらずアーバンの人気は高く、その支持層で言えば世界でも圧倒的なメジャーコンテンツと言えるだろう。EDMにひけをとらない。しかも、そんな本来高いポテンシャルを持つアーバン・シーンにおいて、現在は新時代を牽引するアーティスト……今年のグラミーで最多の11ノミネートを果たし話題となったケンドリック・ラマーを筆頭に続々とスターが登場し、新時代の息吹を多分に感じるところでもある。
一方で、社会的に見てもヒップホップはファッションやアートなど、ライフスタイルや文化面における影響、訴求力は高く、そこからは多くのアイコンやトレンドを生み出している。それこそスニーカーやヘッドホンなどは、まさにヒップホップが流行を牽引している。また、シーンのキーマンたるジェイ・Zやカニエ・ウエスト、そしてドクター・ドレたちはビジネスシーンでも活躍。様々な事業を手掛け、確固たる地位を築いているのも特徴と言えるだろう。
さらに、昨今ではアーバンをテーマにした映画も数多く生まれ、昨年には伝説のクルーN.W.A.をフィーチャーした映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」が全米興行収入3週連続NO.1となるほどの大ヒット。今年もファレル・ウィリアムスが手掛けるヒップホップ映画「DOPE」が注目を集めるなど、映画界にいたっても話にことかかない、これまでにない事態になっている。
しかも、それはアメリカだけでなく日本でも。それこそファッション面ではまだまだ本場USからのトレンドがキッズに根強く支持されているが、それ以外にも現在テレビ朝日系で放送されているフリースタイル・タップバトル番組「フリースタイルダンジョン」が大きな話題となり、はたまた伝説のヒップホップイベント『さんぴんCAMP』が20年ぶりに復活するなど、確実にその波はきている。
そんな状況のなか上陸した『HOT 97 SUMMER JAM』。ここ日本では『HOT 97 SUMMER JAM TOKYO』と銘打ち7月29日にZEPP東京で開催されたわけだが、このイベントの魅力と言えばなんと言っても豪華なラインナップ。本国ではこれまでその時々の旬なアーティストはもちろん、グラミー受賞者からビルボードの常連、さらには今後期待のブレイクスルーまで、まさにアーバンミュージックの粋を極めるものとなっている。
実際、今回の『HOT 97 SUMMER JAM TOKYO』でも現在のUSヒップホップシーンを代表するアーティストの1人であるフレンチ・モンタナをはじめ、プシャT、ファボラス、オマリオンとこれまで本邦では例を見ない豪華なアーティストが出演。それだけに当然のごとくチケットは即ソールドアウト。アーバン・ファンの誰もが大きな期待を寄せる一大行事となったが、当日もまたその期待を裏切らないパフォーマンス、そして盛り上がり。ここ数年で日本でも数多くのフェスが開催され、時まさに“フェス戦国時代”たる様相を見せているが、その多くがロック、そしてEDMをはじめとするダンスミュージックが多かっただけに、この『HOT 97 SUMMER JAM TOKYO』は現状に一石を投じる大きな契機になった。
実はこの『HOT 97 SUMMER JAM TOKYO』は、『HOT 97 SUMMER JAM』にとって初の海外進出。それだけに、今回のイベントも慎重かつ緻密に練られ、プロジェクト自体のスタートは実に約3年前。3年もの間熟成し、タイミングを図り開催されたのだ。そして、それは見事に大成功。その結果、すでに来年の開催も計画されているというだけに、ここからここ日本でも新しいアーバンの時代の到来さえ予感させる。
しかも、この海外進出を機に『HOT 97 SUMMER JAM TOKYO』はアジアへの進出も視野に入れているというと進出するという。ワールドワイドな展開をにらむHOT 97、そしてアーバンミュージックは、間違いなく今後の音楽シーンの中心となり、さらにはカルチャーまで網羅する新たな潮流になり得る可能性を大いに秘めている。そして、その発端となるのが日本だったことはとても素晴らしいことだ。
EVENT INFORMATION
HOT 97 SUMMER JAM
2016.7.29.FRI
OPEN 22:00
ZEPP TOKYO
FRENCH MONTANA / PUSHA T / FABOLOUS / OMARION / AKLO / AK-69 / BANGKOK INVADERS & DABOYWAY
EBRO DARDEN / PETER ROSENBERG / LAURA STYLEZ / NESSA / MEGAN RYTE / TT TORREZ
DJ ENUFF / DJ KAST ONE / DJ BOBBY TRENDS / DJ CAMILO / DJ LEAD