“全米のEDMキング”の異名を持つPasquale Rotella。
彼こそが世界に名だたる『EDC』を取り仕切る唯一無二の存在だ。本祭を知り尽くした男が語る『EDC』の全て。本誌独占インタビュー!
Interview:Tadayuki Sugiyama
Photo by INSOMNIAC.LTD
――まずは『EDC』を開催することになったきっかけを教えてください。
僕が手掛ける会社Insomniacを立ち上げて間もないころ、手始めに『Nocturnal Wonderland』というフェスティバルをロサンゼルスでスタートしたんだ。それはとてもユニークなヴァイブスがあり、クールなものだったよ。
そして、そのイベントが徐々に大きくなるに連れ、多くの人が楽しめる非日常的な環境を作りあげることにすごく興味が沸いてきたと同時に、その行為が僕自身すごく楽しくてね。それで1997年に同じくロサンゼルスで『EDC』をローンチしたんだ。
――初開催時は『EDC』がこうも大きなフェスになることを予想していましたか?
もちろん大きくするつもりで始めた。ただ、当時はどのぐらい大きなものになるのかは全く見当がつかなかったね。だから、こうも大きくなった『EDC』の現状については僕自身本当に驚いている。
あらゆるプロデューサーが自分のイベントを成功させたいと思っているはずだが、僕は『EDC』が世界的なムーヴメントを巻き起こし、地球上の数多くの人たちに愛されているフェスカルチャーの一端を担えていることに誇りを感じているよ。
――『EDC』、すなわち“Electric Daisy Carnival”ですが、なぜ〝Daisy(菊)〞なんでしょうか?
このイベントのテーマは、自然とテクノロジーのエレメントを融合させることなんだ。だから、イベント内におけるステージの名称も“kineticFIELD”、“circuitGROUNDS”、“neonGARDEN”というようなハイブリッドなものにしている。
それに、花が嫌いな人間なんてこの世にいないと思ったからね。
――ちなみに、Insomniacの由来は“Insomnia(眠れない人)”というところから来ていると聞きましたが、それは本当ですか?
その通りだ。Insomniacを始めたばかりのころは、寝られない日が続くこともあってね。そして、僕らがアメリカで行うイベントも、もともとはオールナイトで開催していたんだ。あとは、1990年代に“Insomniak”という曲があって、僕はその曲が大好きなんだよ。
――『EDC』が他のフェスに比べ、最も秀でている部分はどこにあると思いますか?
“完璧な体験”を提供していることかな。最高の音楽とカーニバル・ライド(乗り物)、さらにはプロフェッショナルなパフォーマーに加えインタラクティヴなアートワーク、そして一番は僕らが“ヘッドライナー”と呼んでいる『EDC』に遊びに来てくれるファンのみんなの存在だ。
そういった全ての要素のお互いを補完しながら繋がりあって初めて完璧な体験をしてもらえるんだと思う。
――出演者の人選に関してはどういった基準があるんでしょうか?
アーティストのブッキングは僕とInsomniacの才能あるチームの共同作業なんだ。どんなイベントであっても僕らはパーフェクトなアーティストの組み合わせを実現させることに情熱を注いでいる。
ダンスミュージックにおける様々なサブジャンル、そしてカルチャーをしっかりと網羅し、さらにはビッグネームだけではなくまだまだキャリアの浅いアーティストまで厳選するんだ。とにかく多様性のあるラインナップにすることを常に意識している。
――『EDC』というネームバリューはいまや世界でも有数のブランドとなっています。それを構築できた一番のポイントはどこにあると思いますか?
Insomniacのスタッフはとても情熱的で、なおかつこのカルチャーが大好きなファンの人たちの愛があったことで大きな成長ができたと思っている。
あとは、ソーシャルメディアの力も大きいね。それにより、僕らのことを絶対に知らないと思っていた地域の人たちとも繋がれるようになった。僕らのフェスが世界中で一番最高のファンに支えられていると思っているよ。
そして、そんなみんなから毎日のようにもっと大きくて楽しいことをしようと思わせるインスピレーションをたくさんもらっている。それだけに、僕らは遊びに来てくれた人たちにマジカルな体験を届けられるよう、ファンの声を大切にしているんだ。そういった様々なことがあって、僕らのメッセージが世界中のフェスティバル・コミュニティに伝わるようになったと思ってる。
――『EDC Japan』はアジアで初の開催となりますが、日本を選んだ理由は?
日本には最高のパートナーがいるからさ。あとは最高のロケーションを見つけることができたから。世界中で『EDC』を成功させるためには、その2つの要素が重要なんだ。
さらに言えば、日本のみんながこれまでのフェスとは違うもの、新しくて今まで見たことがないようなものを求めている、そう思ったからだよ。
――『EDC Japan』は昨年開催される話もありましたが、それが繰り越されたのはなぜでしょう?
全てがパーフェクトな状態なのか、僕らは確認する必要があったんだ。それは、ときに予想以上の時間がかかることもある。『EDC』ほどの大きなイベントを作り上げるためには膨大な準備と作業、そして若干のマジックが必要だ。
日本での初開催は絶対にスペシャルなものにしたいという思い入れが強かったからこそ、今年の開催になったんだ。
――それだけに今回がさらに楽しみなんですが、『EDC』は毎回ステージの豪華さ、スケール感に圧倒されます。『EDC Japan』ではどんなステージ、演出を考えているのでしょうか。本家ラスベガスのステージをそのまま移築することも?
日本ではkineticFIELD、circuitGROUNDS、neonGARDENの3つのステージが登場する予定だ。全て本家ラスベガスと同じ規模、というわけにはいかないが、それぞれがスペシャルなものにするために必要なものは全て詰め込むつもりだよ。
それからローカルのカルチャーの要素を取り入れたパフォーマンスを行うことも重要だと思っている。そして、もちろんファンのみんなが大好きな『EDC』のシグネチャー、象徴的なデザインもふんだんにアピールするよ。
――Insomniacは『EDC』以外にも多くのフェスやイベントを開催し成功を収めています。その秘訣はどこにあると思いますか?
自分のビジョンを持ち、情熱的で信頼の置けるチームを作り上げることだね。そして、ユニークかつ安全な環境を来場者に提供すること。さらには、どんな時もイベントに来てくれたお客さんの声に耳を傾けること。なぜならファンのみんなが何よりも一番大切だからさ。
――どのフェスも音楽だけでなく旅や健康などについても深く考え、多角的な目的意識を感じますが、いまやフェスはただ音楽で魅了するだけではいけない時代になってきている、より複合的なものであるべきだと考えているのでしょうか?
ダンスミュージック・コミュニティのようなカルチャーには、すごくポジティブな働きがあると思う。そこには愛もあるし、第一に踊ることは体にも心にもすごくいいんだ。
さらには、その場をみんなで一緒に楽しむことでお互いを受け入れ、たくさんの人が繋がることができる。最高のフェスというのは、同じ体験をシェアし合うことでその場のみんなの間にハーモニーを生み出すものなんだ。
僕らのイベントに来てくれたたくさんのお客さんが新たな出会いを体験し、みんな一生の友達になっている。始まりは音楽からだけど、そこから様々な関係性が生まれる、それは無限大なんだ。
――ちなみに、今Insomniacが開催している数多くのイベントの中であなたの一番のオススメは?
それは一番好きな子供を選ぶようなものだ。全て僕にとってはスペシャルなイベントだし、それぞれが違う。一番好きなイベントを選ぶのは無理だね。
――では、あなた自身はどんな音楽が好きなんですか?
その時によって変わるけど、常に僕がクラシックなロックとオールドスクール・ヒップホップが好きだということはあまり知られていないかもしれないね。ティーンエイジャーのときはロサンゼルスでブレイクダンスをやっていたんだ。だからヒップホップをたくさん聴いていたよ。
近々、Spotifyのプレイリストを始めるつもりなんだ。そこでは最新の楽曲とお気に入りの古き良きナンバーを織り交ぜたミックスを公開する予定さ。ダンスミュージックだけじゃなくていろんなジャンルのね。
――『EDC』をはじめ、いまや世界中で数多くのフェス、イベントを開催されていますが、今後抱いている新たな野望などがあれば教えてください。
僕はいつも夢を見ていたいと思っているし、新しいアイディアを欠かしたくはない。それはフェスに関することだけではなくてね。最近では僕らのファッションラインからストリートウェアを出すというビッグなプランもあるし、今後はInsomniacのオンラインストアをリローンチするつもりさ。
もっと他にも多くのサプライズがあるんだけど、残念ながらそれはまだ言えない。でも、ぜひ楽しみにしていてほしい。
パスクアーレ・ロテラ
『Electric Daisy Carnival』をはじめ、『Beyond Wonderland』や『Electric Forest』などこれまで250 以上のイベントを手がけてきたロサンゼルスのイベント運営会社Insomniac の創業者にしてCEO。ダンス・ミュージックメディア『inthemix』が発表した「EDM シーンで最も影響力のある人物」の1 位に選ばれるなど、ビジネスという観点で現行EDM 業界とは切っても切り離せない人物である。
EVENT INFORMATION
EDC Japan
2017.4.29(土・祝)〜30日(日)
OPEN 22:00
ZOZOマリンスタジアム&幕張海浜公園EDC特設会場
1日券(15,000円税込/ブロック指定)2日通し券(28,500円税込/ブロック指定) VIP1日券(35,000円税込/ブロック指定)
【29日】A.MOCHI / BAGGI / BANVOX / BONNIE X CLYDE / DAIKI / DJ L / DUBFIRE / DUKE DUMONT / FATBOY SLIM / GALANTIS / GRYFFIN / KASKADE / LICAXXX / LOUIS THE CHILD / MARTIN GARRIX / MARSHMELLO / MIDORI AOYAMA / YASUTAKA NAKATA / SANDER VAN DOORN / SUNNERY JAMES &RYAN MARCIANO / TAKU-HERO / TJO
【30日】AFROJACK / ARMIN VAN BUUREN / AXWELL^INGROSSO / BAUMER / CARNAGE / CHACE / CUT SNAKE / DJ AK / DJ RUPPY / JAUZ / JOYRYDE / KNIFE PARTY / MANSUN / MOE / NICOLE MOUDABER / SEKITOVA / SEVEN LIONS / SHINTARO / TRESVIBES SOUNDSYSTEM / WATARU / YAMATO / YELLOW CLAW / ZEDD