フェスであると同時にレーベルとしても機能し、その音楽的な審美眼には定評のある『Dekmantel』。オランダはアムステルダムで開催される本祭は、世界中の多くのフェスがコマーシャル化するなか、あくまでストイックにアンダーグラウンドを邁進し、今年でまだ5回目の開催ながらその様はもはや極みの領域に。

しかも、アムステルダムでも有数の森林公園Amsterdamse Bosにおいて、新緑が眩しい8月に開催されることもあり、極上のロケーションと音楽が融合。その唯一無二のヴァイブスは、早くも世界中のコアなダンスミュージック・ファンを虜にしている。

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そんな『Dekmantel』の今年のラインナップが年明け早々に発表され、そのニュースが世界中を駆け巡ったのは記憶に新しいところだが、その中でここ日本で沸いたのがDJ NOBUの出演だ。
今年で3回目の出演となる彼は、今回なんと錚々たるアーティストが名を連ねるなか、2日目のUFO STAGEステージのクロージング、いわばトリに抜擢されたのである。

昨年はドイツの超名門クラブBerghainのアニヴァーサリーパーティでプレイし、ヨーロッパツアーも大成功。さらには、世界屈指のダンスミュージックメディアRAの「ベストDJ 100」に日本人として初めてランクイン。そして、2017年もイギリス・ロンドンの人気クラブOval Spaceでのレジデントに就任するなど、ここ数年数多くの名誉に輝いてきた彼だが、このたびさらなる快挙を成し遂げたのである。『Dekmantel』でトリをつとめる、それはもはやヨーロッパにおけるポジションを確立したと言っても過言ではないだろう。

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今回本誌ではこの福音を聞き、早速DJ NOBUに取材をオファー。世界中を駆け巡る多忙ななか『Dekmantel』、そして先日出演してきたばかりのサンパウロ版、さらには彼だからこそ知ることのできる海外から見た日本のシーンについてなど、彼はいろいろと話してくれた。
『Dekmantel』とDJ NOBU、ダンスミュージックのファンダメンタルな魅力を味わうにはまさに最適の組み合わせ。果たして、彼はそこに何を見出しているのか……。

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――まずは『Dekmantel』に出演することになった経緯について教えていただけますか。

他のパーティやフェスと同じように僕のヨーロッパでのブッキングの窓口であるOctopus Agentを通じてオファーがありました。

――『Dekmantel』の関係者がどこかでNOBUさんのプレイを見て連絡したんですかね?

さあ……わかりません。きっとどこかで僕のDJを聴いて気に入ってもらえたんだと思います。

――当時、NOBUさんは『Dekmantel』の存在はご存知でしたか? どういった印象をお持ちでしたか?

口コミで友人達から楽しいフェスだよという噂は聞いていました。コンセプチュアルで僕にとっても好みのアーティストが多く出演しているフェスなので興奮しました。

――先日はブラジルで開催された『Dekmantel Sao Paulo』でもプレイされましたが、どういった印象を持たれましたか?

お客さんがヨーロッパはもちろん、アジアや北米の人たちとも違う音楽の楽しみ方をしているように感じました。音楽だけでなくブラジルという国そのものや人々の生きる姿からも大いに刺激を受けました。

――フェス全体の雰囲気はいかがでした?

競馬場が会場になっていて面白いロケーションでした。南米特有のノリはとても熱くDJの手応えも満足いくものになりました。エルメート・パスコアールやアジムスといった地元ならではのラインナップを楽しめたのは良い経験でした。音響的にはまだ改善の余地があると感じました。

――そこに出演するアーティストたちの意気込みはどうでした? 他のフェスと何か違いを感じましたか?

他のフェスやギグに出演する時と同じように、みんなそれぞれ自分のやるべきことに集中してベストをつくそうとしていたと思います。

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――たとえば、日本の『Labyrinth』に出演するアーティストの中には半年前からセットを組む方もいたり、出演者のモチベーションの高さも話題になりますが、『Dekmantel』はどうなんでしょう?

『Labyrinth』と比べるのはおかしいと思います。『Dekmantel』は『Dekmantel』、『Labyrinth』は『Labyrinth』です。『Dekmantel』だからどうというよりも前に、まずどんな現場でもモチベーションを高く持ち、自分のプレイを真摯に追求し、挑んでいる人ばかりです。それはそうあるべきと常々思うことです。僕はこの日の為に新曲を用意していきました。

――そうですよね……失礼しました。NOBUさん自身は新曲を用意した他に、『Dekmantel Sao Paulo』に向けて準備したことやイメージしたことはありましたか?

初めて行く場所でもありイメージするにも限界があるので、いつも通りタイムテーブルに沿った自分の役割を意識しつつ、自分の個性が伝わるプレイを心がけるようにしました。

――『Dekmantel』と言えば、そのラインナップからコアな音楽ファンが世界中から集まる印象がありますが、実際はどんなお客さんが来ているんでしょうか?

僕の感覚からすると普通に楽しみ方の上手なお客さんが多かったように思います。そこまでコアな音楽ファンばかりとは思いません。様々なキャラクターの音楽好きが集まる印象でした。

――本祭は毎回アムステルダムの森林公園で開催されていますが、そこはどんな場所なんでしょうか? 各フロアのこととあわせて教えていただけますか。

すごく快適で過ごしやすい公園です。“MAIN STAGE”は名前の通り人気があるラインナップでセレクターはドナトやセオなど、硬派かつ確かなラインナップが軸になっている。“UFO STAGE”はテクノや電子音楽を主軸においてあります。“GREEN HOUSE”はハウスやディスコ中心で、またリー・ペリーなどの幅広い音楽性の出演者がでています。“BOILER ROOM”はよりお客さんとの距離感が近く楽しいステージです。

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――今回は2日目の“UFO”のラストを任されましたが、率直にどんなお気持ちですか? そして、どのようなセットをイメージしていますか?

それは嬉しかったですよ。初参加から3回目でトリを任されるということは信頼関係が出来上がった証拠でもあるので期待に応えられるように自分が何をすべきか、悩みながらも答えを出せたと思います。

――ちなみに今回の出演者の中で気になるアーティストは?

個人的にはガス、ドナート・ドジー&ピーター・ヴァン・ホーセンのハイブリットセット、スティーヴ・ライヒ&シュラグヴェルク・デン ・ハーグが気になりますが、最後にはやはり全ての出演者が気になりますね。

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――ここ数年のNOBUさんの活躍は、本当に目を見張るものがあります。特に昨年はBerghainのアニヴァーサリーにも出演されましたが、振り返ってみていかがでした? 現場で体感したものからは、伝説的なギグになったと聞いていますが。

DJとして最も幸せな経験ができました。自分の仕事を全うできて大満足でした!

――海外をツアーでまわる中で、各地のDJやプロモーターと話す機会も多いと思いますが、彼らは今日本のシーンについてどう思っているのでしょうか? それを受けて、実際とのギャップを感じたりしますか?

基本的に日本のシーンは小さくなりつつあると思われてる印象です。今の日本のシーンの問題点を彼らも理解しているんではないでしょうか。

――では、世界から見た日本のアーティストやDJ、レーベルの印象はどうでしょう? よく挙がる名前があれば教えてください。

個性的で面白く捉えられてる印象です。よく聞く名前はChee Shimizu、Powder、DJ Masda、そしてWata Igarashi、Takaaki Itoh、IORIと、今のテクノの流れを作っているDJ/アーティストの名前はよく出ます。あとは灰野敬二さん、Merzbow、Ena、Goth-Trad、Ryo Murakamiもよく話題にのぼります。

――では、日本の若いアーティストがNOBUさんのように海外で活躍するためには、どうすればいいと思いますか? 足りないこと、やるべきこと、アドバイスをお願いします。

海外のマネをするのでなく、いかに独自性のある音楽をやるか、その一点が最も大事なことだと実感しています。また、今は世界中の人たちが日本から発信されることを注意深くチェックしています。今は日本人アーティストが海外で活躍するチャンスだと思います。

――ちなみに海外で日本のフェスティバルの話題が挙がることってありますか?

『The Labyrinth』と『RDC(RAINBOW DISCO CLUB)』は話題になりますね。それぞれ世界有数のクオリティのフェスティバルだと認識されています。

――最後に今後の活動について教えていただけますか。

リリースも続きますし、ツアーも12月まで頻繁に国内外を回っていく予定です。SNSなどでチェックしてもらえると嬉しいです!

DJ NOBU
DJノブ
FUTURE TERROR、Bitta主宰。一貫してアンダーグラウンドを邁進しつつも、出演するイベントのカラーによって自在にアプローチを変えるその手腕は世界中で絶賛。ここ数年はドイツのBerghainを中心に定期的にヨーロッパツアーを開催し、いずれも高い評価を獲得。今日本人として最も注目を集めているDJ・アーティスト。