デヴ・ハインズ様……。
ここ日本では猛暑も終わろうとしている今、いかがお過ごしでしょうか。

振り返ってみれば、私が貴方と出会ったのは2011年。同年に発表されたブラッド・オレンジとしての処女作『Coastal Grooves』に収録された“Champagne Coast”で貴方の存在を知り、続くセカンドアルバム『Cupid Deluxe』で、私は完全にブラッド・オレンジの虜となりました。

貴方の作品は、多くの批評家が多様な価値観が混在したNYの自由な空気感を切り取った作品だと論じておりますが、私はジャングルが生い茂る亜熱帯独特のエキゾチックなムードと、大都会に漂うアーバンな香りが絶妙なバランスで融合されている……そんな印象を受けました。

そして、そのハイブリッドで幻想的な音楽性に私の心は鷲掴みにされ、世界中を旅する私の永遠のマスターピースとなっています。
とりわけスペインのイビサ島、メキシコのトゥルムやバリ島といった楽園においては、その空間とともに私の思い出をカラフルに彩ってくれました。

今回は、そんな貴方がこのたび約3年ぶりに新作『Freetown Sound』を発表すると伺い、思わず筆をとった次第です。
“Freetown”とはイギリスの解放奴隷を中心とした黒人たちによって建設された都市の名前であり、ひいては貴方のお父様の故郷だと聞き及びました。
それを夢想するだけでも私はその中身に興味をそそられ、実際に拝聴させていただいたときもそのパーソナルでポリティカルな内容に心打たれました。

ファンクやアーバンソウルを現代的な解釈で再構築し、かつオルタナティブなR&Bの側面をも備える今作。そこには人種や宗教、そして性、現代に残る様々な差別を貴方なりの言葉で紡いだメッセージ性の強い仕上がりとなっていますが、17曲に及ぶ珠玉の作品の数々は私の胸にポジティブに染み渡っています。
それはまさに、貴方が今なお希望に溢れ、明るい未来を信じているように……。
そして、黒人として生まれ、その背景にある悲しみ、そして力強さや美しさが作品からは溢れ出していました。

さて、最後になりましたが今作を携え11月に行われる待望の来日公演、その日を心待ちにしつつ、今後の貴方の活躍を心より願っております。

芹澤直樹

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Blood Orange
『Freetown Sound』

DOMINO / HOSTESS

EVENT INFORMATION

Blood Orange

2016/11/22(TUE)

OPEN/START 18:00/19:00

恵比寿ガーデンホール

6,000円(ドリンク別)