世界のハウスミュージック史上、最も尊いパーティのひとつであり、“世界ハウス遺産”的なものがあったら確実にその名が刻まれるであろう冠前絶後のパーティ「Body&SOUL」。
Joaquin”Joe”Claussell、Danny Krivit、そしてFrançois K.、3人の達人による最高の音楽、至高の空間……それは何ものにも代え難い至極の喜び。そんなBody&SOULがまさか日本で開催されることになるなんて……と当時多くのハウスファンが泣いた2002年。

なぜ世界屈指のハウスパーティが日本にやってきたのか……
そして、20年以上日本で開催される理由とは……
この物語を後世に残すべく、今回は2002年の初開催からディレクターとして参加、現在は主催者の1人としてBody&SOULに日本で最も深く携わっているPRIMITIVE INC.代表取締役の大山陽一氏にインタビュー!
記念すべき第一回がvelfarreで行われた理由
まさか開催前日に……Body&SOUL日本上陸の舞台裏
そして、Joaquin”Joe”Claussell、Danny Krivit、François K.の想い……
気になることを全て訊いてみた!
今年も6月7日(日)、キラナガーデン豊洲で開催が決定しているBody&SOUL。これを読めばきっとさらに楽しめる!
◆François K.の希望で会場がvelfarreに!?
――「Body&SOUL」は2002年に日本初開催。大山さんは当時、(Body&SOUL Live in Japanを主催していた)brand new made inc.で立ち上げに関わっていたんですよね。
大山:そうですね。Body&SOULを日本で開催するための企画書を作っていました(笑)。
――Body&SOULといえば、ハウスパーティの一大ブランド。どうやって日本での開催にこぎつけたんですか?
大山: brand new made inc.の社長だった石原さんが日本での開催に向けて2〜3年前くらいからニューヨークに通い調整を重ねていました。私はディレクターとしてまとめる立場になり、前例のない挑戦だったこともあって、寝る間もなく制作していた記憶があります。
――第一回は六本木にあったvelfarreで開催したんですよね。
大山:ゴールデンウィークに2日間開催したんですが、反響はとても大きかったです。
――会場がvelfarreというのが意外でした。
大山:それはみんなによく言われるのですが、日本開催に向けて最初におこなったのが会場の下見でした。François K.に色々な会場を見てもらったんです。恵比寿のThe Garden Hallや当時新宿にあったLIQUIDROOMなど、色々と回った結果、velfarreがベストだということになりました。
――当時、velfarreはCyber TRANCEのイメージが……。
大山: François K.にはそういった先入観がないですしね。velfarreが選ばれた理由は、フロアが少しすり鉢状になっていて、エネルギーが中央のダンスフロアに集まりやすい構造だったことがあります。あとは、照明設備も整っていた。そういった幾つかの要素が決め手でした。ただ、今振り返ると本当にvelfarreで良かったと思っています。
――確かに設備面は充実してましたからね。
大山:アンダーグラウンドなクラブとはスタイルが違いましたからね。とくに照明についてはライティングアーティストのArielの判断もBody&SOULには欠かせない存在だったので重要でした。

――初開催にあたって意識したことは?
大山:本家ニューヨークのBody&SOULをいかに薄めずに日本で再現するか。そのためにサウンドシステムの回線図を全部見せたり、デコレーションについても何度も絵コンテのやり取りをしたり、初回はとにかく密にやり取りをしていましたね。
――Body&SOULを通して得たものは?
大山:(Joaquin “Joe” Claussell、Danny Krivit、François K.の)3人からは「ダンスフロアは神聖なものである」ということを教わりました。初開催の時、スポンサーの意向でダンスフロアに向けて某企業の掲示物をフロアの四隅にある柱に貼っていたのですが、開催前夜の最終チェックでFrançois K.から「これはダメです」と言われまして(笑)。企業に問題があるわけではなく、ダンスフロアに向けるべきではないと。専門業者が貼っていった大きな掲示物だったのですが、残されたスタッフで貼り直すしかないと夜中に必死に作業したのを覚えています。
その想いは今になるとよく分かります。当時は私も20歳そこそこの若者だったので「パーティは楽しければいい」ぐらいにしか思っていませんでしたが、彼らにはパーティに対する哲学があり、良いものを作るためには必要なことだったんですよね。
これはパーティに限らずですが、ものづくりをする上で信念や思想、哲学みたいなものはとても大切で、それがないと続けていくことはできない。そのことをBody&SOULから学びました。
◆情熱たっぷり、こだわりの男たち…中でも一番は!?
――DJの3人(Joaquin”Joe”Claussell、Danny Krivit、François K.)はめちゃくちゃこだわりがありそうですが……。
大山:それはめっーーーちゃくちゃあります(笑)。みんなそれぞれ違ったベクトルですが、それは自分がやりたいことをやるため、そして良いものを作るためには必要で、いわばそのためには労を惜しまないということなんです。
特にFrançois K.のこだわりは非常に強く、去年の年末に我々がプロデュースしている「flows」という音楽祭に出演してもらったのですが、STEM機能を駆使して楽曲を分解し、さらにダブワイズさせていくという最先端のテクノロジーを使ったライヴを披露してくれました。70歳を超えても自身の新しい表現を追求する姿勢は本当に素晴らしいですね。来年でDJを始めて50年になるそうで、今は「50周年記念のパーティを一緒にやろう!」という話もしています。
――そんな3人と付き合っていくのは大変じゃないですか?
大山:そりゃあ大変ですよ(笑)。毎年のように「今年はもうやれないかな……」って思いますし、実際にそういう話になったこともあります。色々な理由がありましたが(苦笑)。
――うまく付き合っていくための秘訣とかありますか?
大山:シンプルに話をしっかりと聞くことじゃないでしょうか。やっぱりパーティをローカライズさせないといけないですからね。ニューヨークで生まれたBody&SOULをいかに日本のシーン、日本のファンにフィットさせるか。私たちはそのための変換プラグのような存在だと思っています。

――彼らは日本での開催をどう思っているんですか?
大山:ちゃんと訊いたことはないですが、楽しんでやってくれていると信じています。パートナーが日本人女性だったりもするので、日本とも縁が深いですし。今、Body&SOULはニューヨークで年に2回ほど開催していて、あとはヨーロッパなどでも開催していますが、定期的に開催しているのはニューヨーク以外だと日本だけなんですよね。
――2002年の初開催終了後には何か言ってました?覚えてます?
大山:多分、感動してくれていたんじゃないかな。個人的には怒涛の日々だったので記憶が曖昧なんですが、握手する時に強く握られて手が痛かったのを覚えてます(笑)。あの時に満足してくれたからこそ、今も続いているのだと思います。
――これまで日本では様々な会場で開催されてきました。それこそ両国国技館とか。
大山:あれは本当に予算が大変なことになりました(笑)。本音を言えば、一生velfarreでやりたかったですね。
――晴海客船ターミナル、お台場を経て、現在は豊洲(キラナガーデン豊洲)で定着しつつありますが、それもあの3人の希望なんですか?
大山:最近はもうできるところでやるみたいな感じですね。そもそもBody&SOULは都市型というか、大自然の中でやるイメージがあまりできなくて。いわゆるフェスじゃなく、あくまで“パーティ”なので会場も自然と都市部に限定されます。さらには今のBody&SOULだと、ある程度のキャパシティが必要。そうなると、もうほとんど選択肢はないんですよね。会場に関しては昔からの課題なので、どこかいいところがあったら教えてほしいです(笑)。
◆日曜日の午後に開催することの意味
――Body&SOULは老若男女が楽しめる場。それこそ年齢を重ねてクラブを卒業した人や家族、子供が生まれて深夜に遊びに行けなくなった人たちにとって、日曜の午後に好きな音楽を楽しめる貴重な場になっていると思いますが、そのあたりどうでしょう?
大山:今ではあたり前の景色でもありますが、昼間に開催することの意義はとても大きかったのではないかと思います。
Body&SOULの話ではないんですが、私自身その重要性に気づいた出来事があって……約10年前に(自身が代表をつとめる会社)PRIMITIVE INC.の10周年パーティをMasters At Workを呼んで新木場にあったageHaで開催したのですが、その時に昼間にやるか、深夜にやるかすごく悩んだんです。
コンセプトとして昼間での開催が認識されていたBody&SOULはありましたが、その当時のクラブパーティは基本的に夜だけのものでした。Masters At Workの来日も当初はもちろん夜での開催を想定して動いていたのですが、日本でのBody&SOULを作ってきた経験から、昼間でも楽しめる絵が見えてきたんです。同世代で遊んでいた仲間に子どもが生まれたり、みんなライフステージが変わっていく中で、クラブカルチャーも若者だけじゃなく、世代を超えて遊べるようなものに変わっていかないといけないのかなと。それで昼間での開催を決断し、さらには親子で楽しめるキッズエリアなども作りました。
お陰様で専門媒体では年間ベストパーティーと評価され、以降、ageHaが閉店するまで1年に1度、Masters At Workのパーティーを続けることができたのですが、そこからパーティに対する感覚というか概念が変わりましたね。昼間でもいい、子供と来てもいい、翌日を無駄にしない(笑)。
その後Body&SOULでもキッズエリアを設けることになるのですが、誰しもライフステージが変わる中でパーティが変わってもいい。クラブは卒業するものみたいな風潮が今でもありますが、そもそも音楽に卒業なんてないじゃないですか。色々な遊び方がある中で“場”だけがなかったので、それが必要なのではないかと思ったんです。
――当時は完全にパーティ=夜でしたからね。
大山:そのMasters At Workのパーティも「なんで夜やらないの?」という意見が多くありました。「夜を捨てたんですか?」みたいな声も。とにかく反対意見が多かったけど曲げないで良かったです(笑)。
――そういう意味ではBody&SOULは特殊ですよね。最初から昼でしたし。でも、そうした特徴がありつつ、客層が幅広いのも他のパーティとの大きな違いなのかなと。若い方も結構いますよね。
大山:そうですね。とくに若いハウスダンサーたちの遊び場になっています。ダンサーって昔はクラブカルチャーのど真ん中にいましたが、今は良くも悪くも部活化していて、主流は大会やバトル。みんなそのためにスタジオで本番に向けて練習していて以前ほどクラブと接続していません。Body&SOULは唯一それがまだ機能しているのかなって思います。
――若い子達がガンガン踊ってますからね。
大山:自分と同世代のダンスチームSODEEPたちがBody&SOULでよく遊んでくれていたから、その系譜がいまだに残っていて若い子がきてくれたりします。演出というと大袈裟ですが“フロアダンサー”という形で毎年10人ぐらいのイケてるダンサーたちに参加してもらったりもしているので、そういった取り組みが活きてきたところもあるかなと思います。
――フロアはまさに老若男女……みたいなところがありますよね。
大山:自分も含めて西麻布のYELLOW(Space Lab YELLOW)で遊んでいた人たちがいて、先輩で言えば50代以上の人たちも全然います。一方で20代のDJやダンサーたちも多くて、本当に幅広いですよね。そんな中でも子どもを連れて一緒に楽しんでいる姿を見るのは嬉しいし、「いよいよ日本でも親子でパーティに行くようになったか……」って感慨深いですね。
今、クラブに行けるのは基本的に20歳からですが、10代の若者にも早いうちに良質な音楽を届けていきたいという想いもあります。そこで、Body&SOULは一般的な前売券の半値以下で入場できる若者向けの料金も設定しています。それが未来のクラブカルチャーを作っていく、そのための場としてBody&SOULが機能できたら嬉しいです。

◆ハウスのオリジネーター3人が魅せるDJとしての矜持
――Body&SOULはハウスの歴史を紡ぐパーティだと思いますが、その音楽性に変化は感じますか?
大山: 3人ともやっぱりDJなので新しい曲は常に取り入れています。その一方でファンが求めているものも明確にあって、それは往年のアンセムだったりするんですが、その期待にも絶対に応えてくれます。そこの信頼感は間違いないです。
もちろんハウスミュージックが軸ではありますが、そもそもハウスはフラットでニュートラルな音楽。だから、自由なんですよね。時間帯によってはレゲエがかかったり、ヒップホップがかかったり、ダブステップやドラムンベースも聴くことができる。彼らの審美眼を通したグッドミュージックをハウスマナーでプレイする、それがBody&SOULなんです。
――特にFrançois K.はいろいろかける印象があります。
大山:そうですね。François K.は(セットの中で)変化をもたらす役回りでもあって唐突にJimi Hendrixをプレイしたりと驚かせてくれます。ただ、François K.に限らずそれぞれの個性があり、そのせめぎあいがBody&SOULを面白いものにしているんだと思います。
――そんな中でも一番盛り上がるのはやっぱり往年のサウンド。クラシックと呼ばれる曲がかかったときの多幸感はスゴいですよね。あれはもういまやBody&SOULでしか体感できない。
大山:もうThe Beatlesみたいなものですよね。エヴァーグリーンというか。ただ、だからといって新しい音楽を否定しているわけでもないし、ちゃんとフレッシュなものも取り入れているから続いているんでしょうね。
――では、Body&SOULの一番の魅力は?
大山:それはやっぱりJoaquin”Joe”Claussell、Danny Krivit、François K.が魅せるDJイズムじゃないでしょうか。
――イメージとしては、Joaquin”Joe”Claussellはトライバル、Danny Krivitはメロディアスでスウィート、François K.はエッジーな感じ……。
大山:三者三様あって、その化学反応ですよね。今の時代、B2Bも当たり前になりましたが、それでも彼らにしかできない表現があって、あの3人だからこそ生まれる魅力があります。匠の技というか。
3人の中にもそれぞれ独自の思想や哲学があって、それはすごく尊いものだと思います。それを感じてもらえたら嬉しいけど、まずは3人が奏でる音楽を純粋に楽しんでほしいです。
何よりBody&SOULはピースで、会場を彩るカラフルな風船は様々な人種を現していて音楽のもとでは全員が平等という意味が込められています。最近は世界情勢も悲しくなるようなことが多いし、そんな時こそBody&SOULのようなパーティだったり、素晴らしい音楽が人々の心に届くといいなと思います。

――最後に、6月7日(日)はどんなふうに楽しんでもらいたいですか。
大山:パーティは来場者と一緒に作っていくもので、ダンスフロアの主人公はあなたです。全身で音楽を浴びて、その感動をその場にいる全員と共にして世界を広げてくれたら嬉しいです。
クラブカルチャーの礎とも言えるDavid MancusoのTHE LOFTやParadise Garageの魂はBody&SOULに受け継がれています。ハウスミュージックが好きな人だけでなく、あらゆる人たちが楽しめるパーティなので、ぜひ、遊びに来てください。

PRIMITIVE INC. 代表取締役社長 大山陽一
2006年に音楽を中心としたカルチャープロダクションのPRIMITIVE INC.を設立。日本でも20年以上続く「Body&SOUL」をはじめ、年末の音楽祭「flows」などを主催している。
