去る9月27・28日に開催された『ULTRA JAPAN 2014』の空前の盛り上がりは読者諸氏にとっても記憶に鮮明なことだろう。
多くの名シーン、パフォーマンスが生まれたが、2日目のヘッドライナーを務めたアクスウェル&イングロッソもまた期待以上のパフォーマンスを披露し、オーディエンスを熱狂に導いた。

ご存知、2人にスティーヴ・アンジェロを加えたユニット:スウェディッシュ・ハウス・マフィア(以下SHM)では、“Save Your World”“Don’t You Worry Child”といったワールドワイドヒットを生み出し、EDMのシンボリックな存在としてムーヴメントを牽引、拡大に大きな役割を果たしてきた。
EDMムーヴメントが爆発的に拡大し、狂騒の様相となっていく過程で、SHMの人気も飛躍的に上昇していく。が、そんな絶頂的の2012年に、彼らは突如ホームページにて解散を発表。その後1年間に及ぶワールドツアーを敢行し、2013年3月にマイアミでの本家『Ultra Music Festival』のギグを最後にSHMとしての活動にピリオドを打った(この1年間の模様はドキュメンタリー「Leave The World Behind」に詳しい)。
その直後から、アクスウェル&イングロッソを結成し、相変わらずダンスミュージックシーンのトップとして活動をつづける彼ら。「ULTRA JAPAN」の翌日に、過去の活動について、現行シーンについて、そして2人の未来について話を聞いた。

MNP_4763
 
「期待以上にみんなが盛り上がってくれて本当に最高だったよ!」

 と「ULTRA JAPAN」の感想を聞くと開口一番に答えてくれたイングロッソ。リップサービスではなく、素直な答えだったと思う。現場で凄まじい熱狂を体感した者ならこの発言に納得ができるだろうし、事実アクスウェルも「だってスタート時間は午前の11時からだったんだよ? それで僕らの登場までオーディエンスのエネルギーはずっと維持されていたんだ。しかも、2日間もね!」という驚きで、先の発言にさらに肉付けしてくれた。数十万人規模の世界中のフェスでパフォーマンスしてきた彼らが“日本のオーディエンスは最高だった”と太鼓判を押してくれたのは、非常に喜ばしい。さらにイングロッソは続ける。
 
Axw Λ Ingr_3
 
「決してヨーロッパを真似する必要なんてないよ。日本は、日本独自の良さを保っていってほしいね。日本は本当に刺激的だ、この風景を観るだけでもね(インタビュー場所であるホテルの部屋からの眺望を指して)」

 SHM解散以降、アクスウェル&イングロッソの2人は、“DEPARTURES=出発”と銘打ち、企業とのコラボレート、フェスの出演、プロデュースワークを精力的な活動を行ってきた。語弊があるかもしれないが、“SHMの栄光”を忘却するかのように。わずか数年の間で、バブルのように膨らみ巨大になったEDMのマーケットだが、彼らの言葉を借りると「偶然の産物」であり、そこで他のアーティストと差別化するには確固たる信念が必要だと言う。
 
Axw Λ Ingr_1
 
「いまのシーンでは、わりと同じような曲が聴こえてくることが多い。そうは思わないか? 僕たちは改めて自分たちの音楽性にしっかりとフォーカスして、心から面白いと思うもの、いままでにない新鮮なものを制作していきたいと思っている」(イングロッソ)

 アクスウェル&イングロッソとして活動を始めてからもう1年以上経過しているが、オフィシャルのリリースはまだない(“We Come, We Rave, We Love”といったフリーダウンロード曲やフェスではリリース前の楽曲を多くプレイはしている)。そこで飛び込んできたのが、2人がDef Jam、Virgin/EMIと契約したこと。そして、年内にシングル、来年にはアルバムをリリースするというビッグニュースだ。
 
Axw Λ Ingr_4
 
「SHMのときは比べると、僕たちの音楽は変わったけど、変わってないというのかな。もちろん自分たちの根底にある音楽性は変わっていないんだけど……言葉では説明しにくいけど、ソング・オリエンテッドになっているかもしれない」(イングロッソ)

「以前より音楽に対してシリアスに向き合っているね。特にアルバムは、“意味”があるものを制作したいと思っている。その意味は僕たちが考えるものだから、リスナーがどう受け取ってくれるかわからないけどね(笑)」(アクスウェル)

「いままさに制作中なんだけど、アルバムの収録曲の中には、東京にインスピレーションを受けたものも入る予定だよ。特に今回は一週間も滞在する予定だからね。本当に様々なものから刺激を受けているんだ。日本のファンは完成を楽しみにしてほしいね」(イングロッソ)

 まだアルバムのコンセプトや詳細は不明ながらも、少しだけヒントを与えてくれた2人。では、「この滞在中に1曲制作するのですか?」と尋ねると、「1曲以上だね」と答えが返ってきた。EDMムーヴメント以前から、ハウスシーンのトップDJとして君臨してきた2人。彼らの音楽性にシーンが追いついたのか、“偶然”のように起こった隆盛期を経て、次に彼らはどのような音楽性を示すのか? シーンの動向を左右する2人から今後とも目が離せなさそうだ。