1996年の結成以来、国内外で活躍するA Hundred Birds。
彼らの代名詞と言えるのが、ダンスミュージックを中心にあらゆる音楽を奏でる至極のオーケストラA Hundred Birds Orchestra(AHBO)。海外でも高い評価を獲得しているAHBOが、このたびアルバム「LIVE IN OSAKA」をリリース。

そこにはディーヴァ:ナターシャ・ワッツを迎え、今年3月11日にビルボード大阪で開催されたライヴをパッケージ。ハウス、ダンスミュージックの魅力を新たな形で表現している。

そんな本作に関して、AHBOの指揮を執るDJ YOKUにインタビュー。現在のシーンの状況なども含め、たっぷりと話を伺った。

——まずは、A Hundred Birdsとして20年以上活動するなかではどんな変化がありましたか?

「結成時は3人(Chikashi Yoshida, Robin Lee and Yoku)で、そこから考えるとものすごく人数が増えました(笑)。
ここ10年間であれば、道頓堀のグリコサインの点灯式での演奏があったり、もんたよしのりさんや上田正樹さんをはじめ数多くのアーティストのバッキングオーケストラとしてのオファーがあったり、まだ実現はしていませんが海外公演のオファーも来るようになりました。

そして、制作面ではメンバー全員が集まって録音する、一発録りレコーディングをすることが多くなったり……結成当初には考えられないくらい、素晴らしい集団へと変化したと思います」

——結成から現在まで、シーンも大きく変化したと思います。YOKUさんは今のシーンにどんな印象をお持ちですか?

「僕自身、今は以前ほどシーンの中にいるとは思えませんが、大阪のシーンで頑張っている後輩がたくさんいますし、彼らをものすごく頼もしく感じます。これからが楽しみです」

——イビサなどでは今、ルイ・ヴェガを筆頭に往年の古き良きハウスが再び脚光を集めています。

「ルイ・ヴェガは僕にとってはずっとヒーローのままで、現在も素晴らしい活動、活躍をされ、世界中のハウスファンに刺激を与え続けています。僕も間違いなくその中の1人で、彼とその相方ケニー・ドープからなるマスターズ・アット・ワークなくしてはA Hundred Birds Orchestra(以下AHBO)はなかったと言っても過言ではありません。

古き良きハウスの魅力は明確にはわかりませんが、それらをいかに今風に作り直して活かすなど、そういったことの繰り返しが、また新たなジャンルや音楽を作っていくのだと思います。

ハウスという音楽は、ありとあらゆるジャンルからネタを選んではそれをハウスに置き換える。その作業は今となっては他ジャンルからだけでなく、昔のハウスからもサンプリングされ、弾き直しされ、そうすることでオリジナルも再評価されるように思います。ハウス創世期から今に至る全てが繋がっている感じがハウスミュージックの好きなところです」

——A Hundred Birdsは常にどんなことを意識して活動してきたのでしょう?

「A Hundred Birdsというか、AHBOとして次にどんな面白いライヴができるか、ということは意識しています」

——DJとしての活動とAHBOの共通点、DJからフィードバックされることはありますか?

「毎年クリスマスにライヴをしていますが、AHBOとしてはDJが曲をミックスする感じの表現にこだわり、さらにはノンストップで演奏しています。そういったところはDJとリンクしているように思いますし、逆にDJではできないようなミックスがAHBOではできたりもします。

そのクリスマスライヴですが、今年はSalsoul Recordsの音源のみで演奏する『Play Salsoul』を開催します。そんなわけで、自分のDJもクリスマスまではSalsoulの曲の多発、もしくはSalsoulセットなんかもやるつもりです。10月14日(月・祝)には『Salsoul Boat Party』もやります」

——今作「LIVE IN OSAKA」は、2019年3月11日のビルボード大阪公演がそのままパッケージされ、ライヴの熱気、一体感も伝わってきますが、実際そのときの空気はどのような感じだったのでしょう?

「普段のライヴとそんなに大差はないのですが、当日はもちろん前日、前々日とリハーサルで一緒にセッションを繰り返すたびにグルーヴ感が増していくところが楽しくもあり、感動的でもありました。そうした一連の流れがナターシャ、AHBO、その場にいたスタッフも感じ取ることができて、積み重ねていく演奏が自信となり、確信へと変わっていったように思います。

その結果、当日はビルボードの1stステージ、2ndステージともに大阪ならではのノリのいいお客様も味方しリハーサル以上によいバイブスが炸裂して、本当に素晴らしいライヴになったと思います」

——ライヴ終了後、メンバーとはどんな話をしましたか?

「終了直後は、終電に間に合うように片付けなどでドタバタしていましたね(笑)。
ただ、1stセット終了後、その日ちょうど還暦の誕生日を迎えたピアノの大前チズルのバースデーサプライズをやったんですが、ライヴ直後の高揚感もあってみんなで盛り上がったのが印象的でした。

翌日からはライヴアルバムの制作をスムーズに進めるためにレコーディングしたものをAHBOメンバー、レコーディングエンジニアを含めて共有し、意見を出し合いながら完成へと向かいました」

——そもそも音源化することは決まっていたんですよね? となると、特別な思いもあっただろうし、選曲やアレンジなどにもこだわったのではないでしょうか?

「音源化は決まっていました。選曲に関しては、“All of that”以外は全てナターシャ自身の曲と彼女が用意したカバー曲です。
アレンジも基本ナターシャのオリジナルを活かし、それにホーンズ、ストリングスなどを付け加えたものと、大前チズルやバンドリーダーのキーボード:タケウチカズタケのリミックス的なアレンジによるオリジナルとは全く違うバージョンに仕上げて演奏したものがあります。

後半、4曲連続で演奏しているところがあるんですが、そこはソウルハウスな曲をノンストップで演奏することで4曲が1曲に繋がり、ミックスされているような感じにしています。
全体の構成でいうと、全員で演奏している曲と少人数で演奏している曲とで、セット全体を通して聴いたときにコントラストが出れば、と考えていました」

——ゲストのナターシャ・ワッツのパフォーマンスはいかがでしたか? それを間近で観ていたと思いますが。

「彼女の素晴らしい歌声ありきで今回のオファーを受けたので、その点に関しては疑う余地もなくリハーサルのときから最高でした。リハーサル時には、お互いよくなるよう話し合いながら進めていくことができたと思います」

——AHBOにとってライヴとは?

「ライヴが最も重要な位置付けであることは間違いないです。
ただ、我々の場合はカバー曲を演奏することがそもそもの出発点ということもあり、オリジナルに対してリスペクトする気持ちを常に大事にしています。

そして、目の前にあるライヴに集中し、楽しむこと。自分たちが楽しむその先に楽しんでくださるお客様がいる。楽しんでいるお客様がいるから楽しんで演奏をする我々がいる。このループを生み出したいという思いはいつも強く持っています」

——AHBOの魅力、醍醐味とは?

「AHBOは大勢で演奏することに醍醐味があると思います。とはいえ、音楽は2人であれ、3人であれ、息があった演奏は素晴らしいものです。人数が多くなるとその共有は難しくなるのですが、20数年続いていることからAHBOでは自然と共有できるようになっていて、大人数であることは別にしても意識が統一された演奏ができていることがAHBO最大の魅力だと思います」

——最後に今後の展望を教えてください。

「ライヴが最重要と言いましたが、その回数を増やし、いかにオーケストラとして存在していくかということも同じくらい重要に感じています。例えば、クラシックのオーケストラはメンバーが変わっても存在し続けています。N響(NHK交響楽団)は演奏者が変わってもN響です。

それと同じとはいかなくても、ダンスミュージックはもちろん、それ以外の音楽も演奏するオーケストラ“百鳥楽団”として自分たちがいなくなったとしても未来永劫に続く楽団であってほしいと思っています。
あとは、いつか『鳥人間コンテスト』に出てみたいです(笑)」


A Hundred Birds feat. Natasha Watts
「LIVE IN OSAKA」

UNIVERSAL MUSIC LLC
全世界配信中
Apple MusicSpotify

A Hundred Birds Orchestra恒例、クリスマスライヴは今年も開催!
「A Hundred Birds Orchestra “Play Salsoul”」

12月24日(火)@なんばハッチ(大阪)
http://ahbproduction.com