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反目を繰り返しながらも
yahyelが見据える目の前の“世界”

あまりにも特殊な原体験。池貝はそこで自分を肯定できたことで道が開けたわけだが、もしもそのときポルソンではなく、NYやロスのような街に行っていたら……おそらく今の彼はなかったはずだ。だが、そんな体験を経た池貝はその後、篠田と杉本に出会い、yahyelは結成。それが2015年のこと。
当時3人ともそれぞれ活動を行い、各自の音楽的ルーツを持ちながらもポストダブステップ以降のベースミュージックを中心に最新のサウンドとタイムレスに交わっていた。それだけに彼らの眼前には常に“世界”があったのだ。

——3人は世界標準の音楽をやろうと集まったんだよね?

池貝 僕らは常に感覚ベースではなく会話ベース。こういう音楽がやりたい、こういうビジョンがあるんだけどどうかなって感じで情報を共有していて。それは当初から変わらず、理解したうえで集まったから、やりたいことは最初から明確でしたね。

杉本亘(以下、杉本) 感覚的にこの人たちとだったら……というより、単純に話が通じたんですよ。

——最初からいろいろと共有できていたとはいえ、ときには衝突することもあるよね?

池貝 それがないと意味がない。

篠田ミル(以下、篠田) ひとりでやるのと変わらないですし。

池貝 結成時の感覚としては、このメンバーで一夜にして曲ができたこと、それが意味深かったというか。しかも、その曲が納得できるものだったんですよ。そこで、これは……って感覚が芽生えて。

——話は飛ぶけど、3人はそもそもいつから音楽を始めたの?

池貝 小さいころから歌は好きでしたね。親父の車ではいつもラジオからクイーンとかが流れてて。

篠田 僕は祖父が戦後成り上がった、いわゆる小金持ちで。だから、何でも買ってきちゃう。それこそCDショップに行ったら、チャートの1位から10位まで全部買ってくるような。だから、僕はエミネムから安室奈美恵まで幅広く聴いていて。今考えるとエミネムの下品なミュージックビデオが原体験かも(笑)

——それっていつごろの話?

篠田 小学校2年か3年のころですね。

杉本 俺は幼稚園のときにピアノを習わさせられて、クラシックが最初にちゃんと聴いた音楽。でも、小学校2年生で渡米して、当時はグラミー楽曲とか聴いてたかな。

——たとえば制作に行き詰まったときはどうしてる?

篠田 みんなそれぞれだと思うけど、僕はむしろ音楽がやりたいって思うかな。

杉本 そうだね、ずっと音楽をやってたい。

篠田 僕らは時間を見つけては音楽に触れていたいんですよ。

池貝 ただ、それでも行き詰まることはあるけどね。

杉本 そういうときは3人でアイスを食べる(笑)

篠田 あとはサウナに行くとか(笑)

池貝 そこはそれぞれですね。僕の場合は本を読んだり。あとはクラブに行くこともあるかな。でも、結局フロアでもこの音のココがヤバいとか言ってるんだけど。

——ちなみに、3人は大友克洋さんの『AKIRA』にも共鳴していると聞いたけど。

池貝 個人的な見解になってしまうんですけど、なんかしっくりきたんですよ。僕は今生きているこの世界に対して常に様々な問いを繰り返していて、すごく居心地が悪いと思っていて。それは海外に行ったときもそう。外側から見ても、内側から見てもおかしいことだらけなんだけど、みんな幸せそうなんですよ。そこでなぜ僕は一緒にバカになれないんだろうって思っていて。その“感覚”というか“構造”が似ていたのが『AKIRA』だったんです。
自分が生きている世界に酷似していたというか、一方でその世界を疑い出したら止まらない感覚がしたというか。そして、その背後で無下にされていた思考停止状態。それもどこか似ているなと思って。

篠田 ディストピアやサイバーパンクからの引用は、それがビジュアライズされたときもかっこよくて好きなんですけど、僕らが言いたいのはそこじゃない。その構造が僕らの今いる世界と一緒じゃんってこと、

池貝 でも、だからこそ違和感があるんだよね。ユートピアを提唱する音楽が溢れていることに。裏を返せば、そこから逃げているだけだと思うし。僕らはそうじゃない。今生きているディストピアを歌ってるから。

<次ページ> 果たして今の世の中は正しいのか……最新作に刻まれた彼らの視座

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yahyel
『Flesh and Blood』

Beat Records

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