『ULTRA JAPAN』をはじめとする数多くのフェス、そしてクラブパーティでVJとして活躍。その他にも、様々なフィールドでクリエイティビティを発揮してきた映像クリエイター・VJ NAKAICHI(本名:中市よしあき)が2つの指定難病を煩い、長きにわたり闘病生活を続けてきたことは過去FLOORでも度々取り上げてきたが、今年9月に彼はアメリカで無事移植手術を終え帰国。現在は社会復帰に向け療養に励んでいる。

このたび、そんな彼の命を繋いだ一連の活動を記したドキュメンタリーフィルム『SAVE』by SAVE NAKAICHI DONATION PROJECTがYouTubeで公開された。

VJ NAKAICHIは22歳という若さで肝炎を煩いつつも、その後映像作家として頭角を現し、独創的かつダンスフィーリングな映像でクラブやフェスを中心に活躍。そこではオーディエンスはもとよりDJ EMMAをはじめ多くのアーティストたちから絶大な信頼を集め、順風満帆のアーティスト生活を送っていた。しかし、そんな彼に突如大きな病気が降りかかる……それは、“原発性硬化性胆管炎”と“自己免疫性肝炎”という国が指定する2つの難病。一時は余命2年の宣告を受け、助かるにはアメリカでの臓器移植のみ。とはいえ、そのためには7500万円という莫大な費用が必要に……。

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そこで動き出したのが、彼とともに活動してきた仲間たちだった。これまで一緒にパーティやイベントを作り上げてきた舞台演出家にミュージシャン、DJやVJ、そしてオーガナイザー。そしてクラブやライブハウス、メディアも賛同。「SAVE NAKAICHI DONATION PROJECT」の名の下に募金活動が繰り広げられた。

SNSやクラウドファウンティングでの活動をはじめ、街頭募金、クラブ、飲食店、レコード店などへの募金箱の設置。そして、チャリティグッズの販売やイベント開催まで、その活動は多岐に渡り、様々な手段で募金を募った結果、今年9月には目標金額の7500万円を達成。日本のいまの医学では治療が難しくアメリカに渡り手術も無事成功し、彼は一命を取り留める。

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クラブ&ダンスミュージックのシーンにおいて、こういった活動は実に稀。仲間の命を思い動いた素晴らしい機会だったと思う。
ひとりの人間の命を巡る活動、VJ NAKAICHIが送った激動の日々のなかDJ、クリエイターたちはそこで何を感じ、どう思っていたのか。生に対する渇望と、それを支える美しき精神が生々しく記されたこのフィルムは、日頃クラブ、そしてダンスミュージックで遊ぶ方々にもぜひ見てほしいところ。約40分の映像の中には、快楽から生まれる喜びとはまた異なる、大きな感動が得られるはずだ。

最後に、今回募金してくれた方々、また記事の拡散に協力してくれた方々には賛辞を送ると共に、願わくば、この活動が広く社会へと繋がることを祈るばかりだ。そして、この活動がその端緒となることで、ひとりでなく、より多くの命を救うことができるはず。クラブ・ダンスミュージック・シーンが命を繋いだ一つの成功例がここにあるのだから。