世紀末を駆け抜け、今なお一線をひた走る偉大なるバンド:アンダーワールド。
その歴史の原点とも言える処女作「Dubnobasswithmyheadman」が未発表曲とともに、
このたび新たに生まれかわる。カール・ハイド、リック・スミスに加え、
ダレン・エマーソンが在籍し、ダンスミュージック界を席巻した彼らの第一歩。
そこから20年、アンダーワールドは今何を思うのか。
フロントマンのカール・ハイドに話を聞いた。


「ファースト・アルバム『Dubnobasswithmyheadman』は、
 僕が一番好きなアンダーワールドの作品だよ」(カール・ハイド)

アンダーワールド、それはダンスミュージックに傾倒するものなら、知らないものはいない……それほどまでにシーンに大きな足跡を残す偉大なるバンドだ。特に、現メンバーであるカール・ハイド、リック・スミスに加え、ダレン・エマーソンをメンバーに迎えた1992年、第二期以降の活躍は、ダンスミュージック・シーンの縮図を大きく塗り替えた。そんな彼らの栄光の軌跡の第一歩、それは1994年に発表されたファースト・アルバム「Dubnobasswithmyheadman」。
このたびその記念すべき作品が20年の時を経て新たにリマスターされ、さらには未発表音源&オルタネイトミックスを交えて再発される(しかも日本盤はSHM-CD!)。EDMという新たな潮流が世界を圧倒するなか、20年前の音源が今再び注目を集めるのはなぜか。それは世界が彼らを求めているからに他ならない。アンダーワールドが永遠に不滅の存在であることを今作で改めて提示しているのだ。

――あなたと相方のニック、アンダーワールドのキャリアは、前身の活動を含めると30年以上になります。これはもう素晴らしいとしか言えません。

「僕もそう思うよ(笑)。どんなに大変なことがあっても、目に見えない何かが僕らを常にマイクに向かわせるんだ」

――ここまで活動できた理由はどこにあると思いますか?

「それは僕らもいつも考えているよ。でも、見つけられないというか、“これだ!”という理由が見つかることもあるんだけど、それと同時にそうじゃない理由も出てきてしまうんだ。きっと、僕らをつなぎとめている何かがあるんだろうね」

――長いキャリアの中で、アンダーワールドとして変化したことは?

「たくさんあるよ。アイデンティティにクリエイティブ、そしてイマジネーション。アルバムの制作もそうだね。あとはもちろんトラックに、ライヴも全然違う。すべてのマテリアルは進化しているんだ。僕らは過去にすがり続けることはできないからね」

――進化し続けなければやっていけないということ?

「そうさ。だから僕らは常にいろいろなことをやるようにしているし、進化しているからこそ僕がこうありたいと願う自分でいられるんだ。そして、多くの人たちが今なお僕らに期待してくれている。
長らくキャリアを続けてきて、もちろんプレッシャーも感じるし、みんなが求めるアンダーワールドとしてのあり方がある。そういった姿勢を今回の作品で再度提示できるといいな」

――「Dubnobasswithmyheadman」は、記念すべきファースト・アルバムのリマスターです。過去の音源を今改めて聴きなおしてみていかがでした?

「僕個人としては、正直よくわからないんだ(笑)。ただ、過去はやり直すことはできないよね。それに、状況や境遇も今とは全然違っていて、当時は今当たり前にあるものもないし、今知っていることも知らなかった。そして、何よりメンバーが(ダレンを含めて)3人だったからね。つまり全然違うものなんだ。
今回は過去の作品を新たに再構成するという試みだったけど、制作には膨大な要素が必要だった。ただ、ライヴを含め、今現在僕らにはやらなきゃいけないことがたくさんあったんだ。だから、僕の人生でこれはもう一度やろう、繰り返したいとは思わないね(笑)」

――では、あなたにとって「Dubnobasswithmyheadman」とはどんな意味を持った作品ですか?

「間違いなく僕が一番好きなアンダーワールドの作品だよ」

――今回の記念盤には、数多くの未発表音源が収録されています。こういった曲はまだまだあるんですか?

「あるよ。マテリアルだけのものもあれば、レコード化されていないものもある。1979年に作ったものとかね。今回、僕らがためていたアーカイブからたくさんのリリースができたことはすごく興味深いよ」

――まだまだ隠れた楽曲があるというのはすごく楽しみです。

「全部が全部そんなにすごくいい曲なわけじゃないけどね(笑)」

Live Press Pic 4

――アンダーワールドとして活動してきて、あなたにとってダンスミュージックとは?

「ダンスミュージックは、あくまでダンスミュージックさ。人々を踊らせる音楽だよ(笑)。そして、それはどんなジャンルの音楽でもいいんだ。人間が踊りたくなるもの、それはすべてダンスミュージックであり、自分をダンス(動き)で表現したくなるものだと思う。そうでなければ、ただのエレクトロニックミュージックだよ」

――でも、その中でアンダーワールドはオリジナリティ溢れるサウンドを作り上げ、これまでに多くのフォロワーを生んできたと思います。

「僕らにとってダンスミュージックは表現方法の1つでもある。それはとてもエキサイティングなもので、ポピュラーな音楽のコアになるものだと思う。そして、僕らは僕らの音楽しか作れない。だから、アイデンティティを持って、よりよいトラックを作るだけさ」

――現状、オリジナルアルバムの制作は進んでいるのでしょうか?

「次の作品では、アルバムを通して何かを伝えたいと思っているよ。あとはオールドファッションなものに今は興味があるね」

――今作のリリースにあたって、ロンドンでは記念ライヴも企画されていると聞いていますが。(※)

「まだリハーサルの段階なんだけど、そこでは僕らが今までにやったことのないことをやるつもりさ。当然、できる限りのベストを尽くすよ。言えることと言えば、アルバムと同じような表現、同じようなライヴにしたいと思ってるってこと。それは、僕らにとってもすごくいい経験になると思う」

――それを日本でも行われることを楽しみにしています。

「それは間違いなく楽しくなるね。僕も楽しみだ」

※ ライヴはすでに開催済。このインタビューはライヴ前に行いました。