いよいよ明日に迫った『ULTRA JAPAN2015』。
そんな今、FLOORが開催前最後にお届けするのは、『ULTRA JAPAN』のクリエイティブ・ディレクターである小橋賢児とFLOOR編集長:芹澤直樹の緊急対談。
賛否両論のラインナップの真意……、新たにスタートするRESISTANCEの魅力……、そして今回の見どころ……、『ULTRA』を深く知る2人が語り合う。

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賛否両論!! 『ULTRA JAPAN2015』ラインナップ、その真意とは?

芹澤「フルラインナップ発表後、良くも悪くも話題騒然ですね(笑)」

小橋「賛否両論、意見がわかれていると思いますが、純粋にどう思いますか?」

芹澤「まず第一弾ラインナップで発表された4人に度肝を抜かれました。ダンスミュージック・シーンの歴史的人物ばかり。
例えば、アーミン・ヴァン・ブーレンは『DJ Mag』で過去に5回も頂点に立った世界最多王者で、デヴィッド・ゲッタがいなかったら今のEDMムーブメントは絶対になかっただろうし。ブロウステップというジャンルを生み出したスクリレックスは音楽シーンの異端児。ニッキー・ロメオは、現代のEDMドリームを掴んでスピード出世した象徴的アーティスト。
なんというか、歴史の生き証人たちが集まった感じ。
それ以外では、『RESISTANCE』が日本で開催されることが驚きでしたね。あとは、全体的にEDM色が薄くなりましたよね?」

小橋「フェスだけじゃなく、すべてのエンターテインメントは、常に新しい何か提案をしていかないといけないので。
去年は『ULTRA』の世界観を日本にローンチすることがテーマだったけど、そこで『ULTRA』ってこういうものだろう、って認識をもってしまった人にも新しいものを見魅せていかなければいけない。これは、マイアミはもちろん世界の『ULTRA』の共通認識なんです」

芹澤「ジャンルの幅が広がったイメージがあります。その中でも注目のステージ『RESISTANCE』があると思うのですが、この意図は?」

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小橋「これは『ULTRA』の創始者の考え方なんですが、元々はアンダーグラウンドにあったダンスミュージックが、いまはオーバーグラウンドになり急速に変化している。その中で、ジャンルっていうのは実はたくさんあるけど、よくも悪くもイメージが固定化され始めている。
“世界のダンスミュージック・フェス=EDM”だと思っている人がいる中で、そうじゃないんだ、と伝えたい。
いつの時代だって何かが流行れば、その対局にあるものが台頭してきたり、カウンターカルチャーじゃないけど、そういうことを常に繰り返して音楽は進化していることをメディアを通して伝えなければならない。
だからこそ、わざわざ『ULTRA』のロゴを壊してまで自分たちで発信することに意味があったんです」

芹澤「なるほど、シンボルであるロゴを破壊して、アンダーグラウンド・シーンのアーティストにフォーカスをあてた理由は、そこにあるんですね」

小橋「『RESISTANCE』のサウンドは今までの『ULTRA』にもありました。でも、そのまましれっとラインナップに入っていても、そこには好きな人しか行かない。
『ULTRA』がわざわざロゴを壊すことで、その概念が伝わりやすくなり“気付くきっかけ”が作れる。そうすることでオーディエンスの選択肢になるし、純粋なダンスミュージックをずっとやり続けている人たちに目を向けさせることもできる。
ワールドワイドに向かっていくときにはそういったことが大事なんじゃないかって」

芹澤「1つの指針になれば、ということですね。
確かに『ULTRA』が日本に上陸したことで、日本の音楽シーンは大きく変わりました。SNSの後押しもあり、これまでダンスミュージックを聴かなかった人がたくさんEDMを聴くようになった。
その人たちがEDMを知った後に、こんなにかっこいいハウスミュージックがあるんだ、こんなクールなテクノがあるんだっていう風になってくれたら……もっと日本の音楽シーンやパーティ・シーンは面白くなる。
カルチャーを作るという意味でも重要な動きですね」

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現在のEDMシーンのスタンダードは、プロデューサーショーであり、音楽と映像やステージエフェクトが一体化した総合芸術

芹澤「ちなみに、今年のラインナップで小橋さんが注目しているアーティストは?」

小橋「スクリレックスとデヴィッド・ゲッタですね。
彼らは、自分が海外をまわって見てきた中で本当に素晴らしいアーティストだった。
ゲッタは、デッドマウスに“ボタンプッシャー”だってディスられたり、いろんな噂があるけど本物のエンターテイナーだと思う」

芹澤「彼のステージはオーディオ・ビジュアルで、ステージと音楽が一体化したショーケースですよね。しかも、ストーリーテリングがとても上手で、まるで映画を見てるみたい」

小橋「そう。ハードウェルなどがインタビューで答えてたけど“昔のクラブDJっていう概念ではなくなり、今のDJは壮大なストーリーを描く演出家であり、脚本家である”って。
デヴィッド・ゲッタを見てもらうとその意味がすごくわかると思う」

芹澤「スクリレックスも“矢面に立っているのはオレだけど、映像、照明、音響、クルー全員でスクリレックスだ”ってインタビューで言ってました」

小橋「そうそう」

芹澤「まったくの別物ですよね。シチュエーションやロケーションを見て、そのときに最適な音楽を選曲する従来のクラブDJのスタイルと、昨今のエンターテインメントとしてのEDMのDJショーケースは。
後者は、ダンスミュージックというフォーマットを使った参加型の総合芸術というか」

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FLOORが注目する『ULTRA JAPAN 2015』は?

小橋「FLOORさん的には、どこに注目していますか?」

芹澤「DJスネイクですね。Mad Decentテイストのトワークやトラップが、『ULTRA』のお客さんにどう刺さるのかに注目してます。
彼に限らず、Mad Decentはディプロを中心にEDMの中でもポピュリズムに走っていない。それでもチャートを総なめにする。アンダーグラウンドのスタンスをとりながら、メジャーフィールドをも揺らすカッコよさ。日本でどんなショーを魅せてくれるのか楽しみです。
そこにEDMシーンで求められているデヴィッド・ゲッタやアーミン・ヴァン・ブーレンがいて、さらに『RESISTANCE』があって、ゴーゴン・シティなどもいるところが、しっかり時代性を見ているように感じました」

小橋「トータルのバランスをすごく意識しました。
今回のラインナップを発表していく中で気付いたのが、昔から音楽シーンを見ていて世界的な動きを追いかけている人と最近のフェスティバル・ムーブメントがきっかけでEDMを好きになった人で意見が別れてること。
本国の『ULTRA』は、必ず無名の若手をいきなりスゴイとこに持っていく。
例えば、アヴィーチーがまだ無名だったころ、1年目は小さいステージでプレイしていたのに、2年目はいきなりマドンナと一緒にメインステージに出演して、一気に世界的な知名度を獲得したり。
それは、お客さんからすると“なんでコイツがこの位置なの?まだ早えーよ”って思うかもしれないけど、そうでないと意味がない。お客さんより一歩先にいってないと。
これが変化を作ることだと思うし、プレゼンテーションでもある」

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日本のハウスシーンの至宝DJ EMMAがメインステージに登場

芹澤「話題になっているラインナップといえば、初日のメインステージに登場するDJ EMMAさん。
『ULTRA』でどんなプレイをするのか、業界内でもかなり注目が集まってますね」

小橋「これはどこまで話していいのか……。EMMAくんって周りから、EDM嫌いで自分の音を守るために『ULTRA』みたいなイベントには出ないって聞いてたんだけど、でも僕はこの人こそどんな環境でもお客さんを踊らせることができるDJだと思っていて。
流行っているからその音楽ジャンルに背をむけるのではなくて、たとえEDMに向いているお客さんでも、目の前にいたら自分の音楽で踊らせてこそDJじゃない?」

芹澤「はい。異論なしです」

小橋「で、それをわかっていて体現しているのがEMMAくんだと思って。
だからこそ『ULTRA』を通じて初めてダンスミュージック・カルチャーを知った人にも、日本のシーンを支えてきた人の本物のダンスミュージックを聴いて欲しい」

芹澤「期待せずにはいられませんね。
しかも、僕が手に入れた情報によると、映像作家にVJ NAKAICHIさん、照明にAIBAさんが参加するとのこと。この3人は、WOMBで約10年続いた『TROUBLE HOUSE』というEMMAさんのレジデント・パーティのチームで、相性も抜群。個々でも、照明や映像作家として『TIME WARP』や『ZOUK OUT』に出演したりと世界中で活躍している実力者たち。
その3人が再びチームを組み『ULTRA』という大舞台に出陣する。つまりEDMシーンの新しいスタンダードに、日本代表が挑戦するといっても過言ではないかと」